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ついに日本企業を狙い始めたカラ売りファンドの「野望と言い分」 代表二人に、話を聞いた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50835
2017.02.01 大熊 将八 現代ビジネス
■ついに日本企業を狙い始めた
狙われたが最後、彼らはその目的を果たすまで、喰らいついて離さない――日本企業がいま、もっとも恐れている集団をご存じだろうか。それは「空売りファンド」である。
空売りファンドとは、事前に借り入れた株式を売却した上で企業の不正や過大評価されている点を追及し、株価が下がったところを買い戻して利益を得るという手法をとる投資ファンドのことだ。空売り自体は個人投資家を含めて広く行われているし、海外では空売りファンドの存在は広く認知されている。
彼らの最大の武器は「レポート」だ。狙いを付けた企業を徹底的に調べ上げ、財務体質の問題や不可解な会計処理などをレポートにまとめて公にし、他の投資家に「この株、売るべし」と働きかける点にユニークさがある。
彼らに狙われた企業はプレスリリースなどを通じて反論するが、空売りファンドの指摘が的を射ている場合は、格付け機関がその企業の評価を見直したり、機関投資家が保有株式を大量に手放したりするため、企業の株価がガクンと落ち、空売りファンドに多額のカネがもたらされることになる。
空売りファンドによる企業の不正追及は、米国では何十年も前から行われてきた手法だ。最も有名な例には、エンロンの巨額の粉飾決算を指摘し、同社が破綻する引き金を引いた「キニコス」というファンドが挙げられる。
しかし近年、米国では上場企業の情報公開が進み、極端な違反企業が出て来ることが少なくなった。それによって空売りファンドは標的を中国や香港の企業にまで広げてきたが、ついに日本市場にその矛先を向け始めたのだ。
■レポートひとつで株価が急落
<「ユーグレナ」は大きな夢を抱く会社であり、従前、株主にその夢を信じ込ませることに成功してきた結果、株価はおとぎ話のようにつり上がっている>
1月19日、米・投資助言会社の「ウェル・インベストメンツリサーチ」社が、刺激的な文言から始まるレポートを日本語と英語で同時に発表した。
狙われたのはミドリムシを活用したバイオ燃料事業で注目を集めるユーグレナ社。最も有名な日本のベンチャー企業のひとつ、といっても過言ではない。
ところが、同社の事業はバイオ燃料事業ではなく、ほぼ健康食品事業で成り立っており、その健康食品事業も競合の参入により収益性の低下が見込まれるため、現在の株価は過大評価されている……と指摘するレポートを、ウェル社が公表したのだ。このレポートが発表されるや、同社の株価は一時10%近くも下落してしまった。
ウェルは先月13日にも、時価総額約2兆円の大手空調制御メーカー「SMC」が、最低でも871億円の現金を架空に計上している、と指摘したレポートを発表したばかりだ。
また、その同じ日に米国の空売りファンド「マディー・ウォーターズ」が、日本を代表するモーターメーカー「日本電産」を、<既存事業は全く伸びておらず、たびたび目標が未達に終わっているのに、「過大評価」されている>と糾弾したレポートを発表した(いずれの企業も即座に否定)。
日本企業を標的にした空売りレポートは2015年には1件のみだったが、2016年はのべ6件に上り、「空売りファンド元年」とも呼ばれている。背景には、2015年4月、アベノミクスの成長戦略の柱として「コーポレート・ガバナンスコード」が制定され、海外の一流企業と同じレベルに、日本の上場企業の統治体制を改善し、企業価値を向上させるべきだ、という認識が強化されたことがある。
ところが、「コーポレート・ガバナンスコード」が制定された直後の7月に東芝の不正会計問題が露呈、2016年にも三菱自動車、スズキ自動車による不正発覚、DeNAの買収子会社が著作権侵害を犯していた疑惑が浮上するなど、日本企業の「お粗末な体質」が続々と明らかになってしまった。
見てくれはよいが、実は問題を抱えている脆弱な日本企業がまだまだあるのではないか……と空売りファンドは日本市場にビジネスチャンスを感じているのだ。
■「日本企業はザルすぎる」
2016年に発表された空売りレポートの6件のうち3件はウェルによるもので、それ以外は、昨夏に「伊藤忠に不正会計の疑いあり」と指摘した「グラウカス・リサーチグループ」などの海外勢が行っている(これも伊藤忠は即座に反論)。
これに対して、日本市場の警戒心は強い。
空売りファンドについて東証の清田瞭CEOは、定例会見で「倫理的に疑問を感じるところもある」と発言したり、証券取引等監視委員会の長谷川充弘委員長が朝日新聞のインタビューに「レポート内容に金商法上問題があるかどうか、われわれは監視すべき義務がある。法令違反があれば適切に対処する」と述べるなど、危機感を露にしている。
一方、当のファンドはどう考えているのか、筆者は二人の代表に話を聞いた。
ウェル・インベストメントリサーチの荒井祐樹代表(米国企業だが、代表は日本人)は、筆者のインタビューに対してこう答えた。
「批判がない社会は脆くて弱い。きちんとした批判はどんどんできるようにするのが大事ではないか? 今の日本には、異論をいうことに対するアレルギーがあり、これこそが病理だと思う」
荒井氏はもともと、弁護士として活躍していた。青色LEDの開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が、当時所属していた日亜化学工業を相手どった裁判で弁護人を務めて高額の和解金を勝ち取り、「情熱大陸」にも出たことがある。
その後ニューヨークに留学してファイナンスを学び、資産運用会社を設立。経営の傍ら「好き好んで権威に楯突きたいわけじゃないが、みんなが反感を抱きそうなことであっても、正当性があるならやる」というあまのじゃくな性格の持ち主の彼は、2015年に丸紅が資産の減損損失を過少に見積もっているのではないかと指摘する空売りレポートを独自に手がけた。
そのレポートを公表すると、株価は最大30%近く下落し、格付け機関が丸紅の評価を下げるなど、大きなインパクトを与えた。
その後、JIG-SAW、サイバーダイン、SMC、そして今回のユーグレナと、数々の企業について「過大評価」や「不正疑惑」を指摘するレポートを発表した。
自社でポジションを取らず、あくまでレポートを機関投資家に販売しているだけだが、手がけた企業の株価は海外ファンドが指摘した企業よりも大幅に下落している。影響力の高いレポートを作っているということだ。
「日本企業は英語での情報開示が限定的なので、海外ファンドが調べられることには限りがある。日本人が空売りのレポートを手がけることにアドバンテージがあるのでは」(荒井氏)
■「外圧」が日本を変える?
日本電産について指摘した、もう一方のファンド「マディ・ウォーターズ」のカーソン・ブロック代表は、筆者の取材に「言論の自由は民主主義の基本だ。ほんの数社の無責任な企業によって世界中の一般市民に悪影響を及ぼした(リーマンショックのような)金融危機を思い出せば、政治家と同じほど企業の経営者の影響力は大きい。経営者に対して批判できる自由はあるべきだ」と話す。
カーソン氏はかつて来日した経験があり、2011年のオリンパス事件の頃から日本市場に目をつけていたが、ウェルやグラウカスなど他社が本格的な空売りレポートを出してきたいま、この「波」に乗り遅れてはならないと考え、改めて日本企業を対象にした調査を開始した。
日本電産に狙いを定めたところ、「日本の市場関係者に話を聞くと『永守さんはとにかく天才だ』という人ばかりで驚いた」という。
「多くの人が盲目的に見ている企業にこそ、我々のビジネスチャンスがある」
調査を進めるにつれて、日本電産の継続事業が伸びていなかったり、経営陣の掲げる目標が何度も失敗している、という事実に行き当たったそうだ。レポート内では、中国の工場の元従業員から話を聞き、過酷な労働実態の内部証言を得るなど、調査報道さながらの手法をとっている。
ただ、日本電産の株価はその後上昇基調だ。
「正直、(レポートの)反響はあまり大きくなかったが、水面下で海外の証券会社はこの件について日本の証券会社に問い合わせして、改めて調査を始めていると聞いている。こういった動きが広がって、やがて株価の『空気』が抜けていくのではないかと中長期的に見ている」
ネガティブに受け止められがちな彼らの存在だが、これまで日本では目立った活動をしてこなかった「空売りファンド」は、日本の経済情報の歪みを是正する存在になりうる、と筆者は考えている。
日本の経済メディアは数多くあれど、広告主である企業に対して鋭く切り込めないという弱点を抱えており、「本当の情報を伝えていない」という側面も持っているからだ。
また、日本の証券会社も、アナリストが書く企業レポートの大半は「買い」か「中立」を推奨するなど、偏ったものになっている。これは、企業についてネガティブに書くと、そのアナリストが「出入り禁止」にされる恐れがあるといった理由もある、と聞く。
一方空売りファンドは、企業に対しておもねることなく、批判を発信できる貴重な存在、ともいえるのだ。
実際、アメリカにおける調査によれば、企業不正を発見する主体としてもっとも多いのは空売りファンドであり、監督機関や監査法人、アナリストやメディアよりもその割合は高い。
事実誤認のレポートを出せば「風説の流布」で逮捕されたり、対象企業に訴追され多額の賠償金を支払わなければいけないリスクもあるため、質の高い調査を行った上でレポートを発表するインセンティブがある。
その是非を巡る議論はあるが、良かれ悪かれ、彼らが与える「外圧」によって、日本企業はさらなる情報公開を進めることを余儀なくされるだろう。次に狙われるのはウチかもしれない――そう戦々恐々としている日本企業も多いに違いない。
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