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銀行の金庫には現金がほとんど無いが、大丈夫か?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8730
2017年1月23日 塚崎公義 (久留米大学商学部教授) WEDGE Infinity
銀行の顧客がいつ預金を引き出しにくるかわからないので、銀行が預かった預金をすべて金庫に入れておくとします。銀行は貸出が出来ないので、金利収入が得られず、倒産してしまいます。そうなっていないのは、銀行が預かった現金の一部だけを金庫に残して、あとは貸出に使って金利を稼いでいるからなのです。
大数の法則という統計の話があります。コインを1000回投げると、ほとんどの場合、表が出る回数は、100回でも900回でもなく、500回前後だというのです。詳しい理由は統計の本を御覧いただくとして、各回の表裏は全く偶然だけれど、何度も繰り返すと、おおむね確率どおりの結果になる、という事です。
銀行に1万人の顧客がいるとして、各人が銀行の預金を引き出す確率は100分の1、銀行に預けに来る確率も100分の1だとすると、概ね100人が引き出しに来て、100人が預けに来るので、現金の出入りは少ない、というのが統計学の教える所だそうです。
だからこそ、銀行は客が持参した現金の一部だけを金庫に残して、あとは貸出に用いることが出来るのです。
■例外は、取り付け騒ぎ
統計は、通常は当てになりますが、非常事態の時には当てになりません。「あの銀行が倒産しそうだ」という噂が広まって、預金者が一斉に預金を引き出しに殺到する「取り付け騒ぎ」の時です。多くの客が殺到すればするほど、本当に銀行の金庫がカラになって銀行が倒産してしまう可能性が高まるので、更に多くの預金者が預金を引き出しに来る、といった悪循環に陥ったら、そこから抜け出すのは大変です。
そこで、取り付け騒ぎを防ぐためには、様々な仕掛けがしてあります。そもそも銀行の建物は、世界中どこへ行っても立派です。あれは、預金者に安心感を与えるためだと言われています。ゆうちょ銀行は、立派な建物とは言えませんが、ゆうちょ銀行には特別の安心感を感じている人が多いでしょうから、チョット別扱いですね。
日銀には、「最後の貸し手」という機能があります。取り付け騒ぎに見舞われた銀行には、日銀が現金輸送車で駆け付けてくれることになっています。これによって預金を引き出しに集まった群衆を安心させて解散させよう、というわけです。
それ以前に、取り付け騒ぎが起きないような工夫もなされています。一つには、銀行に対する各種規制です。自己資本比率規制などにより、銀行の健全性は確保されており、それは金融庁検査などによっても確認されています。
今ひとつは、預金保険制度です。これは、政府(厳密には預金保険機構)が、原則として預金者一人当たり1000万円までの預金元本(及び利息)を保証してくれる制度です(詳細は預金保険機構のホームページなど御参照)。庶民の預金は、銀行が倒産しても原則として政府が銀行に代わって払い戻しに応じてくれるので、銀行が倒産するという噂を聞いても焦って預金を引き出す必要が無いのです。
これは、本来は取り付け騒ぎを防ぐための強力な装置なのですが、残念ながら制度の存在があまり知られていないため、実際に取り付け騒ぎが起きた時には、あまり役に立たないだろうと言われています。
保険も、大数の法則を利用したシステム
火災保険は、顧客の家の何%が1年間に焼失するか、という過去の統計に基いて支払う保険金の額を予想し、それに保険会社のコストと利益を上乗せして保険料が決まっています。他の保険も、考え方は同じです。それが可能なのは、「皆が一斉に火事になる」という事が考えにくいからです。
たとえば、顧客が一人しかいない保険会社は、成立しません。大数の法則が使えないため、その顧客が火災に遭った時に保険会社が倒産してしまうからです。営業エリアが狭い場合も、危険です。その地域で大火事が発生した場合に、顧客の多くが被災しかねないからです。その場合には、「他の地域を地盤とする保険会社と顧客を交換する(あるいは相互に支払う保険金の一部を負担しあう)」という手があります。実際にそうした取引が行われているケースは少ないかも知れませんが。
大災害の場合には、大数の法則が使えません。たとえば大型台風は、滅多に来ませんから、保険会社としては困るわけです。しかし、世界中を見渡せば、大型台風も結構来ていますから、大数の法則を用いる事は可能です。世界中の保険会社が、世界一の保険会社に「再保険」すれば良いのです。
「大型台風による損害だけを補償してくれる保険」ならば、それほど保険料は高くないので、世界中の保険会社がその保険に加入します。そうすれば、世界中の保険会社は大型台風が来ても倒産せずに済みますし、世界一の保険会社は多くの保険会社から保険料を集めて、大数の法則を活用して稼ぐ事ができるのです。
もっとも、世界一の保険会社でも大数の法則が使えないので、再保険を拒否しているものがあります。地震保険です。さすがに関東大震災や南海トラフ巨大地震の被害をカバーしてくれる保険会社はありません。そこで、仕方ないので日本政府が再保険に応じています。
地震保険は、保険料も高いですし、地震の際に支払われる保険金も少ないですが、それも「巨大地震が来ても日本政府が破産しないように」という事だと思えば、仕方ないのかも知れませんね。
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