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15年の初飛行(名古屋市上空=三菱航空機提供)
5度目の納入延期。「MRJ」の機体を改めて検証してみた
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170120-00010005-newswitch-ind
ニュースイッチ 1/20(金) 16:37配信
■「GTFエンジン」って何?
三菱重工業が開発中の国産初のジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の初号機の納入が、現在予定している2018年半ばから最大で2年程度延期されることになった。日米などでの就航に必要な「型式証明」の取得に向けた作業が遅れているため。延期は5度目。そこでMRJとはどんな航空機か、改めて検証してみたい。
MRJは開発当初から高い燃費性能を売りにしている。その切り札が、航空エンジン世界大手の米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)が供給する最新鋭エンジン「PW1200G」だ。
同じ軸で回るタービンとファンの間に遊星ギアを入れる「ギアド・ターボファン(GTF)」方式を採用。軸の回転を減速してファン側に伝え、タービンとファンのそれぞれが最も効率的なスピードで回るようにした。これにより騒音、燃費とも大幅に削減する。
MRJは旅客機としては世界で初めて08年にGTFの採用を決定。その後、カナダ・ボンバルディアや欧エアバスの航空機が採用したほか、MRJと競合するブラジル・エンブラエルも既存機のエンジンをGTFに置き換えることを決めた。
MRJの初飛行の遅れによって、新エンジンによる燃費性能の優位性は薄れた。それでもMRJの燃費の良さの半分はエンジン、もう半分は機体の形状によってもたらされている。
MRJの最大の特徴でもある「GTFエンジン」について改めて知っておく必要がある。
<なぜ飛行機は飛ぶの?>
エンジンの話をする前に、飛行機はなぜ空を飛ぶのか、という基本から押さえたい。図に示したように、飛行中の航空機には4つの力が作用している。機体を前に進めようとする「推力」、その反対である「抗力」、機体を浮かばせようとする「揚力」、沈ませようとする「重力」の4つだ。これらの力が釣り合って初めて、飛行機は安定して飛ぶことができる。推力が効力よりも大きければ加速するし、小さければ減速する。飛行機のエンジンは、機体を前に進める力、すなわち「推力」を生み出す装置なのだ。
現代の航空機の主流は「ジェットエンジン」で飛ぶ機体。MRJもジェットエンジンを積んでいる。
ここで一度、風船を思い浮かべてみてほしい。風船に空気を吹き込んで膨らませ、手を放すと、風船は勢いよく飛んでいく。風船の中にある圧縮空気が勢いよく吹き出すためだ。ジェットエンジンも風船と同じ原理を持っている。圧縮空気を機体後方に吐き出し、噴流(ジェット)をつくることで、推力を得ているのだ。
風船は内部の圧縮空気がなくなるとしぼんでしまうが、ジェットエンジンは、機体を飛ばし続けるために常に圧縮空気が必要となる。そこで、機体の前方から空気を吸い込み、圧縮機(コンプレッサー)によって圧縮。それを燃焼室に送って高温・高圧にし、それを排気口から勢いよく吹き出すという構造が採用されている。
「吸気、圧縮、燃焼、排気」。ジェットエンジンのメカニズムは、この4つに集約される。
部品の約7割を海外製に頼る
■民間機向け装備品市場は寡占化の傾向
以上が一般的なジェットエンジンの説明だが、MRJは、ジェットエンジンの中でも「GTF」(ギアドターボファン)と呼ばれる新開発のエンジンを採用しており、競合機と比べ、「燃費を「2割程度低減」(三菱航空機)しているのが大きな特徴だ。
ギアドターボファンは、航空エンジンの世界3大メーカーである米プラット・アンド・ホイットニーが開発中のエンジンだ。エンジン内部にギアを入れることで、「ファン」と呼ばれる吸気装置と「タービン」と呼ばれる動力源の回転を、最適に制御し、燃費や騒音を大幅に改善している。旅客機としては、2008年にMRJが世界で初めて採用を決定。その後はカナダのボンバルディアや欧州エアバスなどの飛行機にも採用が広がっている。
そもそも、ジェットエンジンとは、戦闘機に使われる「ターボジェットエンジン」と、主に旅客機で採用される「ターボファンエンジン」の2種類に分けられる。
ターボジェットは、燃焼室を通った圧縮空気だけを吐き出すエンジンだ。これに対して、ターボファンは燃費を向上させるため、燃焼室から出た圧縮空気のほかに、「ファン」という扇風機のようなものを回して吸い込んだ空気も、機体後方に送り出して推力を生み出す。この空気は燃焼室を通らないという意味で「バイパス」空気と呼ばれる。
旅客機用のエンジンは、常に「燃費向上」が最大のテーマ。当然ながら、燃費を良くするためには燃料の消費量を抑える必要がある。そこで、エンジンメーカーは、燃焼室で圧縮された空気でなく、なるべく「バイパス空気」の量を増やそうとする。バイパス空気を増やすには、ファンを大型化すればよい。
こうして旅客機用エンジンのファンはどんどん大型化していったが、ある時、限界が来た。ファンを大型化し過ぎると、外周部分の回転速度が上がり、ついには音速に達してしまうのだ。音速に達すると大きな空気抵抗が生まれてしまう。
そこで、ファンの回転数を制限する必要性が出てくる。しかし、ファンの回転軸とタービン(圧縮機を動かすための装置)の回転軸は同じなので、ファンの回転を抑えると、同時にタービンの回転数も落ち、圧縮機のパワーが下がる。すると、圧縮空気の量が少なくなり、推力が落ちてしまう。
ここで出てきたのが「GTF」だ。GTFとはGeared Turbofan(ギアドターボファン)の略。文字通り、ギアのあるターボファンエンジンだ。先ほど、「ファンの回転軸とタービンの回転軸は一緒」と書いた。GTFは、ファンとタービンの間に減速ギア(歯車)を入れることで、タービンを高速で回しつつ、ファンを低速で回転させることを可能にした。これによって、ファンは大型化できた。
GTFの研究自体は昔から進んでおり、かつてはプラット・アンド・ホイットニー以外に米ゼネラル・エレクトリック、英ロールス・ロイスも取り組んでいた。ただ、ギアを入れることによる重量増や信頼性の確立が難しく、これまで旅客機の世界で日の目を見ることはなかった。
<低燃費」という武器>
三菱航空機は、市場への新規参入ながら、あえて開発中のGTFエンジンを最初に選んだ。そうすることで、リスクと引き替えに、その大きな魅力である「低燃費」という武器を手に入れたと言えよう。しかし、開発中のエンジンだけに、ボンバルディア向けのGTFエンジンで14年に故障を起こすなど、トラブルも起きている。
GTFは現行のエンジンよりも空気を取り入れるファンの直径が大きい。このため主翼の下に広いスペースが必要だ。MRJは主翼とエンジン、ナセル(エンジンを覆うカバー)の最適な位置関係を探りつつエンジンを主翼の真下ではなく、機体前方寄りに配置した。ほかにも、機体前方下部の貨物室を機体後部に統合し、他の航空機より細く空気抵抗の少ない胴体を実現。シャープで美しい機体だ。
一方で、装備品は実績のある海外製を多く搭載している。「航空機の頭脳」とも言われる操縦用電子機器(アビオニクス)をはじめ、空調や油圧機器から内装品に至るまで、コストベースで部品の約7割が海外製だ。
こうした海外メーカーは米ボーイングや欧エアバスをはじめ世界の航空機メーカーにも同様の部品を供給、民間機向け装備品市場は寡占化の傾向すらある。日本にはこれらの装備品産業が十分に育っておらず、今後、日本の航空機産業が参入分野を増やしていく上での壁になっている。
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