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日本政府は行政コスト削減のために、首都圏以外を無住の地にしようとしている
映画『Workers被災地に起つ』神戸・元町映画館でのアフタートーク - 内田樹の研究室 2020-03-02
http://blog.tatsuru.com/2020/03/02_0912.html
21世紀の日本はこれから急激な人口減と高齢化局面を迎えます。予測では、21世紀末の日本の人口は上位推計で6450万人、中位推計で4950万人、最少では3800万人となります。今1億2700万人ですから、中位推計でも7000万人減る。
人口減は世界中で進行しています。日本が高齢化では世界一ですが、欧米もアジアもすぐ後に続いています。韓国も少子高齢化局面に入りましたし、中国は「一人っ子政策」のせいで、このあと劇的な人口減局面に入ります。15億人でピークアウトした後に世紀末には7億人に半減すると予測されています。これほどの人口減を人類は経験したことがありません。だから、何が起こるかわからない。
今の社会システムはすべて「右肩上がり」の経済成長を前提にしています。人口減局面を生き延びるためには選択肢は2つしかありません。
一つは都市一極集中。今の日本の政官財が考えているのはこれです。すべての資源と人口を首都圏の狭い範囲に集める。人口が減っただけ集住する地域を狭くする。そうすれば、仮に人口が半減しても、都市の風景は今と変わりません。その代わり首都圏の外には無住の地が広がることになる。無住の地には交通や通信や上下水道のようなインフラを整備する必要がありません。行政コストは限りなく抑制できる。「人を狭いところに集める」、今政府が考えている人口減対策はそれだけです。小泉進次郎環境大臣が先日語った「もう人口減少、嘆くのやめませんか」と言うのは、具体的にはこのことです。
シンガポールは人口560万人、面積720平方キロ。人口は日本の4%、国土は日本の0.2%しかありませんが、一人当たりGDPは世界8位で、26位の日本の1.6倍です。土地もない、自然資源もない、食糧も飲料水さえ自給できないシンガポールがこれだけ繁栄しているのは「経済成長」が国是だからです。それだけではありません。シンガポールは建国以来一党独裁で、治安維持法があって令状なしに反政府的な人物を逮捕拘禁できて、反政府メディアも労働運動も学生運動も存在しません。この国がおそらく今の政権にとっての「人口減局面でのモデル」だと思います。
行政コスト削減のために、首都圏以外を無住の地にするというのが基本構想ですから、東日本大震災の復興が進まないのも当然です。「ねまれや」の女性に行政が告げたように、「人口が減っていく地域に、そんな施設など作ってどうするのか?」ということです。
政府は東京オリンピックを「復興五輪」などと言っていますが、隠された目的は東京にすべての資源を集中させて、地方を枯渇させることです。政府は東北の復興に予算を使う気はないし、福島の原発の除染も本格的にやる気はありません。「どうせいずれ誰も住まなくなる土地なんだから、そんなところを『人が住めるようにする』のはまるで無駄だ」と思っているからです。
地方の無住化・日本のシンガポール化しか政府に策はありません。たしかに人口減局面でなお経済成長しようという無理なことを実現するならシンガポールモデル以外に選択肢はないのです。でも、政府や財界は彼らが「シンガポール化」をめざしていることを決して公言しません。東北復興や福島の除染をだらだら進めているうちに、東北の人口が減ってゆく。やがて「人が減ってゆく地域に予算を投じるのは金をドブに棄てるようなにものだ」という世論が形成されるのを待っているのです。でも、今それを言ったら地方の選挙区では自民党に入れる有権者はいなくなる。あっとうまに政権は倒壊する。だから、その方向に政策を着々と手を打ちながら、自分たちが何を目指しているのかについては口を噤んでいる。
でも、もうひとつのシナリオがあります。それは「経済成長をもう目指さない」ということです。そらなら東京への資源一極集中の必要はありません。むしろ、地方に離散する。
今、若い人たちが地方に移住して、第一次産業に就く動きが出てきました。こちらの方が生活の質を考えたら、明らかにアドバンテージがある。東京一極集中ということになると、生業の選択肢は資本を持たない若者には賃労働以外にはありません。定型的な賃労働と定型的な消費生活を強いられる。快適で文化な生活を維持しようと思うならむしろ地方にチャンスがある。そのことを直感しているからこそ若者たちの地方移住が続いているのだと思います。
今、僕たちは人類の文明史的転換点に来ています。僕の周りでも、若い人たちがどんどん地方移住を始めて、農業林業のような第一次産業に就いたり、本屋やカフェを営んだり、図書館を開いたり、出版社を立ち上げたり・・・いろいろな仕事を始めています。
日本には温帯モンスーンの豊かな風土があり、植物相も動物相も多様だし、温泉やスキー場などの観光資源も豊かだし、食文化も芸能も世界的レベルですし、教育も医療も高水準です。経済成長にこだわらずに、この豊かな資源を活用する仕方に知恵を使うべきだと僕は思います。
この映画は、林業を営む限界集落の再生という話も取り扱っています。鱒淵という中山間地に、年間2世帯ずつ人が戻ってくれば、人口は定常化するという話が出てきます。この「定常化」ということがこれから先の地方再生の基本になると思います。もう右肩上がりで人口が増えたり、右肩上がりで経済成長することはあり得ないのです。それでも定常的な経済活動を維持することはできます。
定常経済というのは新規の需要が発生せず、買い替え需要しかない経済のことです。だから、投機的に株を買っても儲からない。それじゃ意味がないと思う人がいるかも知れませんけれども、それでも出資する人はいるはずです。その商品やサービスが安定的に供給されることそれ自体を「配当」として受け取る人たちが株を買う。自分が出資することで「必要なものが、必要な場所で、必要なときに手に入る」のならそれ以上は求めないという人たちが経済活動を動かしている限り、経済成長の必要はありません。
今日本の政官財は東京一極集中プランにはっきり舵を切りました。日本の農業や林業も切捨てるつもりです。しかし、多くの国民は、故郷が無住の地になり、地方が切り捨てられるというシナリオの現実性にまだ気が付いていません。この流れに抗して、もう一度地方を住みやすい場所、住み甲斐のある場所にしてゆくことが、これからのわれわれの仕事だと思います。
http://blog.tatsuru.com/2020/03/02_0912.html
▲△▽▼
2020年3月2日
【三橋貴明】店じまい国家の断末魔
https://38news.jp/economy/15441
店じまい国家の成れの果て
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12578317719.html
安倍政権の朝令暮改と臨終
https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12578536890.html
グローバリズムのトリニティ(緊縮財政、規制緩和、自由貿易)を究極まで推し進め、政府を限りなく「小さく」することを「国家の店じまい」と呼んでいます。
元々、「国家の店じまい」とは、佐藤健志先生が紹介された、達増拓也岩手県知事のツイートが元ネタです。
達増拓也 TASSO 幸福を守り育てる希望郷いわて
@tassotakuya 2016年3月24日
経済は市場にまかせ、民生は地方にまかせ、国家が店じまいするように、人口減少で地方が末端から消滅するのが必然とばかり、大震災を奇貨として地方消滅の加速を図ろうというのは良くない。
https://twitter.com/tassotakuya/status/712980527293140992
達増知事は地方交付税交付金などを減らし、地方の衰退を加速している安倍政権について「国家が店じまいするように」と表現されていますが、国家の店じまいは地方行政に限りません。
そもそも、グローバリズムという「小さな政府」を目指す政策は、国家の店じまいなのです。
国家の店じまいは、様々な分野に及んでいますが、今回のCOVID−19感染症の襲来で明らかになったのは、日本国民の公衆衛生、健康促進が役割の厚生労働省、医療サービスまでもが、国家の店じまいを進めていたという衝撃的な事実になります。
【日本国内の保健所数(合計)】
http://mtdata.jp/data_68.html#hokenjo
【日本の病院病床数の推移】
http://mtdata.jp/data_68.html#bed
日本政府は(第二次安倍政権発足前から)全国の保健所を次々に閉鎖していきました。
さらに、病院の病床数も削減。
安倍総理大臣は2019年10月28日、経済財政諮問会議において、
「持続可能な地域医療体制を構築するため」
とのお題目で、病院の統廃合(=削減)や「過剰な」ベッド数の削減などを進めるよう関係閣僚に指示しています。
ただでさえ減っている病床数を、さらに減らせ、と。
もっとも、何しろ日本政府の政策のコンセプトは「国家の店じまい」でございますので、非常事態に国民を救う可能性がある医療サービスなど「ムダ」という話でございますよ。
閉店作業中の店舗が、客からの要望を受けますか?
新たな仕入れや什器のために支出しますか。
するわけないでしょ。
というわけで、特に「非常事態への備え」を中心にカットし、国家の店じまいを続けてきた日本政府が、実際に非常事態が到来した途端に大混乱に陥っています。
安倍政権は、間もなく終幕です。
問題は、むしろ「安倍政権の後」になります。
何しろ、グローバリズムのトリニティ、国家の店じまいが続く限り、誰が政権を
担おうとも、我々国民の「豊かで安全な生活」は実現しないのです。
というわけで、日本国民は現在の非常事態が「なぜ、ここまで深刻化したのか?」について理由を正しく知らなければなりません。
そもそも、国家の店じまい、小さな政府化という日本政府のグローバリズム推進は、初めから非常事態に対応不可能なのです。
その上で、次の政権において、グローバリズム路線を「ピボット(転換)」させる。小手先の変更ではダメです。
政権の基本コンセプトからのピボットが必要なのです。
すなわち、令和の政策ピボットです。
令和の政策ピボットを実現するためには、現在の日本の絶望、店じまい国家の断末魔をしっかりと見届ける必要があります。
少なくとも日本において、希望は絶望の先にしかないのです。
https://38news.jp/economy/15441
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