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駆けつけ警護の任務を初めて与えられた陸上自衛隊派遣部隊の壮行会で訓示する稲田朋美防衛省(壇上)と隊員たち (c)朝日新聞社
ドローン操れぬ自衛隊の時代遅れ度 「駆けつけ警護」に死角あり 〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161207-00000193-sasahi-soci
週刊朝日 2016年12月16日号
日本ではあまり知られていないが、世界で今、起こっている戦争は、遠く離れた会議室のモニター上で行われているという。無人偵察機、無人爆撃機など「ドローン」が戦争の主役なのだ。一方、「駆けつけ警護」という新しい任務を付与された自衛隊は、ドローンも持たず、南スーダンへ出発した。自衛隊の問題点を軍事ジャーナリストの竹内修が明らかにする。
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南スーダンでのPKO(国連平和維持活動)に派遣された陸上自衛隊部隊へ付与された新任務「駆けつけ警護」が12月12日から始まる。「駆けつけ警護」とは昨年9月、国会で成立した安全保障関連法に基づくもので、国連、NGO関係者などがゲリラなどに襲われたとき、自衛隊が武器を持って助けに行く、という任務だ。相手と銃撃戦になるリスクも生じる。
しかし、この駆けつけ警護には“死角”があった。防衛省がまとめた「南スーダン国際平和協力業務実施計画」には、派遣部隊が持参する装備の種類と数が明記されているが、この文書の中では情報収集に使用するいわゆる「ドローン(無人航空機)」を持参するとは記されていない。
筆者の知る限りにおいて装備の中にドローンは含まれていない。
世界では近年、軍用ドローンの普及が急速に進んでいるというのに、わが国は一体、どうなっているのか?
偵察用はもちろん、「テロとの戦い」では、アメリカ、イギリスなどがミサイルや精密誘導爆弾などを搭載したドローンを使用し、いまや戦闘の主役となっている。
2009年にはパキスタン・タリバン運動の指導者であるバイトゥッラー・マフスードを殺害。11年のリビア内戦では逃走中のカダフィ大佐の乗る車両を攻撃して、逃走を阻止するといった成果を上げた。
ドローンは大規模災害時の情報収集活動などでも活用されており、アメリカ空軍が運用する高高度を長時間飛行可能なドローン「グローバルホーク」は、11年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故で、超低空を飛行して事故現場を撮影し、画像が日本政府に提供された。
長時間の監視飛行が可能なドローンがPKO活動でも有用であることは国連も認めており、13年には国連自らが偵察用ドローン「ファルコ」を導入して、コンゴ民主共和国におけるPKO活動に投入している。
軍事評論家の清谷信一氏は危惧する。
「危険度の高い地域での派遣部隊の安全確保には情報収集が重要です。陸上自衛隊が03〜09年に行ったイラク派遣では、ヤマハ発動機が開発した『RMAX』という“ドローン”を夜間の宿営地の警備に使用していました。もし、南スーダン派遣部隊が情報収集に役立つドローンを持参していないとすれば、隊員の安全確保の上で問題がある」
先進国でドローンが普及した裏には、ベトナム、イラク、アフガニスタンなどの戦争で大勢の戦死者を出したことに対する、世論の批判の影響もあった。
ベトナム戦争でアメリカが勝利できなかった理由の一つとして、戦死者の増加により国内に厭戦ムードが高まり、戦争の継続が困難だったことが挙げられるが、アメリカに限らず第2次世界大戦以降の民主主義国では、やむを得ず武力行使を行う場合でも、死傷者の数を極力抑えることが要求される。また先進国では程度の差はあるものの少子高齢化が進行しており、軍用機パイロットの確保も年々困難になっている。
ドローンは仮に撃墜されてもパイロットが戦死したり捕虜になることがなく、有人機に比べれば操縦が容易だ。このためアメリカでは10年の時点で、国防総省が保有している約1万8千機の航空機のうち40%を無人機が占めるに至っている。またアメリカ以外の国でも普及が進んでおり、アメリカのシンクタンク「ニュー・アメリカ・ファウンデーション」は、70カ国以上で無人機が運用されているとのレポートを発表している。
しかし自衛隊では射撃訓練に使用する標的機型のドローンを除けば、陸上自衛隊がヘリコプター型のFFOSとその改良型のFFRS、手投げ式のJUXS−S1という3種類のドローンを保有しているのみだ。調達数もFFOSが8機とFFRSが12機、JUXS−S1が30機程度。アメリカ軍や人民解放軍(中国軍)のような巨大な軍隊は無論、自衛隊よりも規模の小さいイギリス軍やドイツ軍などに比べても極めて少ない。
運用実績に関しても問題が多く、100キロ以上の飛行が可能で、搭載するカメラで撮影した画像のリアルタイム送信能力を持つFFRSは、11年の福島第一原発の事故や、14年9月に発生した御嶽山の噴火といった、その特性を最も生かせる局面で一度も使用されていない。
防衛省の徳地秀士防衛政策局長(当時)は13年4月の衆議院予算委員会で、FFRSを福島第一原発の情報収集に使用しなかった理由をこう説明した。
「運用開始から1年程度しか経過していないため、飛行実績が不足していた」
しかし、それから3年半後に起こった御嶽山噴火でも使用できなかったということは、信頼性、性能面に何らかの問題があったと判断せざるを得ない。
FFOSとFFRSは本体のほか、制御装置や発着装置などを搭載する7台の車両によって構成されており、ある防衛省幹部は「まるで大名行列のようだ」と揶揄(やゆ)気味に評している。
価格も1セット約45億円(FFOS)と高く、防衛省は費用対効果などを考慮した結果、14年度をもって事実上調達を打ち切った。つまり、使えなかったのだ。
自衛隊も他国に比べてドローンの導入・運用が遅れていることを認識しており、東日本大震災後に編成された11年度の補正予算では、本格的な導入を前提として、ボーイング社の子会社であるインシツ社が開発した「スキャンイーグル」と、日本のフジ・インバック社が開発したドローンを試験導入した。また14年度からは陸海空3自衛隊の共通装備として、前述した「グローバルホーク」をアメリカから購入。ドローンの技術ではアメリカと双璧にあるイスラエルとの間で、中型偵察用ドローンの共同研究に向けた交渉を進めた。
ただ、こうしたドローンを自衛隊が使いこなせるかは未知数だ。既存の航空法や電波法の中にドローンをどう位置づけるのかや、ただでさえ不足している電波をどう確保するのかといった問題が山積している。
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