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不安げに外をのぞくシリアの少年(GettyImages)
勝者はプーチン、敗者はケリー氏、シリア停戦破綻の収支
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160923-00010000-wedge-int
9月23日(金)11時20分配信 佐々木伸 Wedge
シリアの停戦がわずか1週間で“破綻”した。その最大の要因は17日に起きた米軍のシリア軍誤爆事件だ。再燃した戦闘は停戦前以上に激化しており、「再び停戦にこぎ着ける望みは極めて薄い」(ロシア高官)状況。残りの任期少ないオバマ政権はお手上げの状態で、停戦崩壊をめぐる勝者と敗者がはっきりした。
■自ら崩壊招いた米
米ロの合意により12日に発効した停戦は米軍のシリア軍誤爆後に一気におかしくなった。米軍は東部のデリゾール県のシリア軍の陣地を過激派組織「イスラム国」(IS)の拠点だとして誤爆。同軍兵士90人以上が死亡する惨事となった。
ロシア外務省高官は米国が停戦を台無しにしたと非難、「米国はISを守っている」とさえ決め付けた。シリアのアサド大統領も「言語道断の攻撃」と強く米国を非難した。米国も過ちを認めて謝罪したが、後の祭りのように戦闘が再開していった。
18日に激戦地アレッポの反体制派地区が空爆を受け、翌日にも猛爆された。国連と赤新月社の援助物資を輸送する車列も爆撃された。米側は空爆したのがロシア軍機と見ており、今後大きな政治問題となる可能性がある。この攻撃で輸送トラックの関係者も含め30人以上が死亡。シリア政府はこれに先だって同日、停戦が終了したとする声明を発表した。
その後は大々的に戦闘が再燃、ロシア国防省の発表によると、20日にはロシア空軍の支援を受けたアサド政権軍が過激派を含む反体制派約140人を殺害した、という。今回の米ロ合意によると、停戦が1週間続いた後、両国がISなど過激派攻撃で協調する運びだったが、絵に描いた餅になった。
停戦崩壊の要因になった米軍の誤爆に一番がく然としたのは停戦をまとめた米国のケリー国務長官だった。長官はオバマ政権のレガシー(遺産)となったイラン核合意の立役者で、シリア停戦にも早くから取り組んできた。
長官は「最大の課題であるIS壊滅のためにはまず、内戦の停戦が必要」というのが持論。2月にロシアのラブロフ外相と1回目の停戦にこぎ着けたものの、約2ヶ月で破綻。このため7月に訪ロしてプーチン大統領と会談して新しい提案を示すなど交渉を続け、この9日に同外相との間で2回目の停戦合意を成し遂げた。
停戦合意にはカーター米国防長官ら対ロ懐疑派が強く反対。最終的にはオバマ大統領の最終判断で合意が承認された。しかしその後も、国防総省を中心に停戦に対する不満がくすぶっていた。
米メディアによると、誤爆の直前には、カタールの米中央軍司令部がロシア軍にホットラインを通じてISの拠点を攻撃すると通告。攻撃が開始されてから20分後にロシア軍からシリア軍が空爆を受けているとの連絡が入り、攻撃が中止になった、という。
ケリー長官は国連で「国際シリア支援グループ」の会合を開き、アサド政権を停戦に復帰させるようロシア側に求めるなど停戦への意欲をなお示しているが、オバマ政権の任期が4ヶ月を切った中、停戦の勢いは萎んでいる。
■余裕のプーチン
停戦が事実上崩壊した現時の中で、最大の勝者はプーチン大統領だ。「シリアの状況を思うがままに操っているかのようだ。軍事介入で政府軍を優位にし、今やシリアで主導権を握っているのはプーチンだ。彼抜きでは何も語れない」(ベイルート筋)。
この見方のようにロシアにとって戦闘の継続はむしろ都合のいいことかもしれない。軍事的には少ない戦費で戦況をコントロールし、当初懸念されたようにアフガニスタン介入のような泥沼にはまるような状況ではない。
新型の爆撃機や巡航ミサイルなど近代化した兵器の性能をシリアを実験場にして世界に誇示しており、兵器の売却という商売の面でも抜かりなく進めている。政治的には、クリミア併合、ウクライナ問題で欧米から制裁を受けて追い詰められていた劣勢をシリア介入でひっくり返してしまった。
アサド大統領の追放を主張してきたオバマ政権はもはや“アサド存続”を黙認、シリア政策は次期大統領に委ねられることになったし、仮にプーチン氏を評価している共和党のトランプ候補が大統領にでもなれば、同氏にとって状況はさらに好転することになるだろう。
またアサド追放の急先鋒だったトルコのエルドアン大統領はロシア軍機撃墜問題でプーチン氏に頭を下げ、米国同様、アサド存続にカジを切った。プーチン氏はこうしたシリアにおける成果も追い風にして、18日のロシア下院選では圧勝を決め、国内の権力基盤を盤石なものにした。
しかし逆に言えば、プーチン大統領にはシリアの内戦を何としても終結させ、ISなど過激派を一掃するという意欲は薄いと言える。空爆など“適度な介入”を維持はしても、複雑な内戦のドツボに入り込む気は毛頭ない。内戦の終焉は全く見えなくなった。
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