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スペイン・ロタの海軍基地に到着したオバマ米大統領(2016年7月10日撮影)〔AFPBB News〕
米国が新型核兵器投入、開発配備に1兆1000億円 核兵器廃絶を訴える裏で、新型核兵器の開発怠らず
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47888
2016.9.15 堀田 佳男 JBpress
突然だが、「B61」と聞いてすぐにピンとくる方はいらっしゃるだろうか。
B61というのは米国が1960年代から開発・製造、配備している核爆弾の1つだ。バラク・オバマ政権は先日、2020年から新型「B61-12」の生産を開始すると発表した。
なぜここでB61を取り上げるか言えば、「核なき世界」を目指しているオバマ大統領の考え方と逆行する動きに思えるからだ。
今年5月、同大統領が広島に出向いた時、「核保有国は恐怖の論理から脱すべき」と述べ、核軍縮に前向きの姿勢を示した。2009年のプラハ宣言では、全世界に向けて核なき世界を訴えたし、今夏には核兵器の「先制不使用宣言」をするとの観測さえあった。
■先制核不使用宣言は見送り
だが今月5月、ニューヨーク・タイムズ紙が政府関係者の話として、同大統領は先制不使用宣言をしなさそうだと伝えた。理由は「同盟国を不安にさせ」、なおかつ「中国とロシアを勢いづかせる」可能性があるからだという。同盟国の中には日本も入る。
そうした状況下で、オバマ政権はB61の製造を進めていくというのだ。「核なき世界」と表舞台では言いながら、裏では新型爆弾の開発に抜かりがないと思われても仕方がない。
新型B61-12の予算は400個で約110億ドル(約1兆1000億円)と言われる。コストがかかり過ぎるとの批判のほか、「世界で最も危険な爆弾と呼べる」(レン・エイクランド・シカゴ大学教授)との声もあるが、計画は進行中だ。
簡単にB61がどういうものかを説明したい。
B61はいわゆる戦術核兵器で、射程の長いミサイルに搭載する戦域核兵器と違い、射程の短いミサイルに搭載したり、爆撃機や戦闘機に載せて落下させて使う。
これまで9タイプが製造され、今回のB61-12が最新型となる。実は2012年に、将来もB61を製造・配備していくための延命計画が打ち出され、過去4年を費やして研究開発が進められてきた。オバマ政権時代に下された決定である。
実際にはエネルギー省国家核安全保障局(NNSA)が主導しており、ロスアラモス国立研究所とサンディア国立研究所で実験を繰り返してきた。
もちろん核兵器なので破壊力は甚大で、核出力は10キロトンから340キロトンという規模だ。広島に落とされた原爆が15キロトン前後なので、いかに強大かが分かる。
新型爆弾の特徴は遠隔操作によって弾頭を起爆できる点で、空中、地上、地下を問わない。これまでの戦術核兵器は爆撃機から落下されると、いわゆる「自由落下」の状態だったが、B61-12は正確に標的まで誘導されるスマート弾である。
ただ専門家の中からは「大きな脅威にはならない」との見方もある。というのも、核兵器には実践で使用できる保証期間があり、老朽化した爆弾が新型に置き換えられることはむしろ自然だというのだ。
■使いたくなる核兵器
古いタイプのB61はすでに5カ国(ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコ)に配備されており、2020年に製造が始まるB61-12は2024年に実践配備される予定だ。
ロシア科学アカデミーでさえも、米露が所有する核兵器は抑止のためのものであり、老朽化された核爆弾を計画的に交換するのは驚くべきことではないとの立場だ。
だが全米科学者連盟(FAS)のハンス・クリステンセン氏は「誘導型の核兵器が導入されると、核兵器の不使用という限界レベルが下がることは間違いない」と、世界が危険水域に入り込む危険性を示唆する。
こうした流れを受けて、連邦上院議員10人が連名で今夏、オバマ大統領に書簡を送付した。開発を見合わせるように促す内容だ。
「大統領にはぜひ余剰核兵器の近代化計画を縮小していただきたい。そして先制不使用宣言を採用してもらいたい。こうした政治決断こそが、2009年に行ったプラハ宣言の趣旨である『核なき世界』の実現につながるはずだ」
「核兵器の近代化を続けていくだけで、今後30年で米国は1兆ドル(約100兆円)の予算が必要になります。不必要なものは削減していただきたい」
書簡に署名した議員を眺めると、全員がオバマ大統領の同胞である民主党議員だ。上院の重鎮パトリック・リーヒー議員や今年の大統領候補だったバーニー・サンダース議員、さらにはエリザベス・ウォーレン議員やダイアン・ファインスタイン議員といった名前も読める。
民主党議員が憂慮するのも無理はない。というのも、米露が2010年に調印した新戦略兵器削減条約(新START)では、2018年までに戦略核弾頭の配備数を1550発まで減らすことになっていたにもかかわらず、大きな進展がないからだ。
ウクライナ危機によって、ロシアは条約の履行どころか逆に大陸弾道ミサイル(ICBM)の増強を発表して、核戦力の強化に動いている。
しかも新STARTで対象になるのは長距離弾道ミサイルであって、今回のB61-12のような戦術核ではない。核兵器の削減と増強は国際情勢の中で浮き沈みしながら一進一退を繰り返している。
■保有数で群を抜く米ロ
条約の枠の外であれば、新型の戦術核兵器を開発し、配備したいというのがオバマ大統領の本音だろう。だがそれが、「核なき世界」というオバマ政権の遺産となるはずの政治成果から外れてしまうことは明らかである。
共和党ドナルド・トランプ候補は核兵器について述べている。
「核兵器の使用については最後の選択だと思っています。実際に手をかけることが嬉しいわけがありません。ただ最終手段として、その選択は否定しません」
核爆弾の保有数に目を向けると米露が群を抜いている。今春の数字では、米国が1750発、ロシアが1790発だ。前述したように、戦略核兵器は両国が削減しつつあったが、現在は停滞したままだ。
核の抑止力によって、広島・長崎以降は実践では使用されていないが、両国ともに準備だけは怠っていない。
しかもミサイルに搭載する戦略核ではなく、戦闘機に積む戦術核の高精度化が目立っており、操作が簡素化されて「より使いやすい」戦術核が誕生している事実を忘れてはいけない。
専門家の中には「地域紛争での使用の可能性は否定できない」と見ている人もいる。本来、被爆国の日本が戦術核をも撤廃させていく音頭をとるべきだが、そこまでの外交力が備わっていないのが今の日本であり、限界なのかもしれない。
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