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護衛艦「かが」初公試、完成秒読みに 海自ヘリ空母、4隻体制化の大きな意味、浮き彫りになる課題
http://trafficnews.jp/post/55956/
2016.08.13 関 賢太郎(航空軍事評論家) 乗りものニュース
2016年8月に、ヘリ空母「かが」が初公試を実施。まもなく海上自衛隊の「ヘリ空母」が4隻体制になります。これは日本の防衛、そして災害対策にとって大きな意味があるものですが、それにより「別の課題」が浮き彫りになりつつあるようです。
■海上自衛隊で4隻目の「ヘリ空母」、そこにある意味
2016年8月2日(火)、海上自衛隊の新鋭ヘリコプター搭載護衛艦「かが」が、初公試を実施しました。
「公試」とは、艦の建造および進水、そして必要な装備品を搭載する艤装作業を行ったのちに実施される性能評価試験であり、今回、「かが」は生まれの地である横浜市磯子区のジャパンマリンユナイテッドの岸壁からはじめて出港しました。「かが」は今年度末に海上自衛隊へ就役し実働体制に入る予定で、完成まで秒読み段階といえます。
横浜市のジャパンマリンユナイテッドで艤装中の護衛艦「かが」(関 賢太郎撮影)。
「かが」は、海上自衛隊で最大の艦艇である「いずも型」の二番艦であり、全通飛行甲板を使ったヘリコプターの運用を主目的とする空母(航空母艦)の一種、「ヘリ空母」です。ひとまわり小さい「ひゅうが型」の「ひゅうが」と「いせ」、同型の「いずも」に続き、海上自衛隊のヘリ空母はこれで4隻目。そして「かが」の就役によって、海上自衛隊・自衛艦隊の主力となる4つの護衛隊群すべてに、ヘリ空母が配備されることになります。
護衛艦は、その就役期間の3分の1を休息および修理、同じく3分の1を訓練に必要とし、実戦に投入できるのは残りの3分の1で、この3段階を繰り返し続けます。「かが」の就役でヘリ空母が計4隻体制になること、それは最低でも1〜2隻のヘリ空母を高い練度の状態で維持できることを意味し、それによって有事における海上自衛隊の作戦自由度を大きく高めることが可能になります。
■「海の戦い」で非常に重要な役割を果たす「かが」
「かが」および3隻のヘリ空母に課せられた最大の役割は「対潜作戦」です。現代の高性能な潜水艦は、常にその身を隠しながらの行動が可能。潜水艦を探知するには、ディーゼルエンジンを運転するため海上へまれに突き出される空気流入・排出口を探しだすか、ごくわずかなスクリュー音をソナーによってとらえるしかありません。
ただいずれの方法も、ほぼ無限ともいえる広大な海に比べ、針の先ほどの範囲しか索敵することができないため、海中にひそむ潜水艦をピンポイントで探しだして駆逐することは、基本的に不可能といえます。
海上自衛隊の対潜哨戒ヘリコプターSH-60K「シーホーク」(2015年10月、恵 知仁撮影)。
そのため「かが」は通常7機、最大で十数機のSH-60J、またその後継機であるSH-60K「シーホーク」対潜哨戒ヘリコプターを搭載。複数機が同時に離発着可能な広い飛行甲板を生かし、自艦の周囲を常に「シーホーク」で哨戒することで、艦隊に接近する潜水艦を探知する「対潜哨戒網」を構築します。これによって、敵潜水艦を排除できなくとも、攻撃をあきらめさせたり、攻撃を受けた場合でも即座に反撃できると同時に、対抗手段を実施するための時間的な猶予を確保できます。
現代では有事において、対潜作戦能力の低い艦は全く行動できません。たとえば1982(昭和57)年のフォークランド紛争において、アルゼンチン海軍は敵国イギリス海軍の潜水艦を恐れ、作戦に大きな制限を受けました。
■充実するヘリ空母、しかしそれにより加速してしまう「海上自衛隊の課題」
まもなく就役する見込みの「かが」、そして2015年に就役した「いずも」の2隻、「いずも型」のヘリ空母は、ひとまわり小さな「ひゅうが型」にくらべ集中治療室や手術室、病床といった治療施設、トラックなどの搭載能力が充実しています。このたび、洋上における医療、物資輸送の拠点としても能力が高い「いずも型」が2隻になることによって、1隻が長期のドック入りをしていたとしても、常に片方を派遣できるため、災害に対する備えも向上することになるでしょう。
さらに、「ひゅうが型」は飛行甲板上に設けられた5か所の離発着スポットのうち、垂直離着陸機のMV-22「オスプレイ」は、最後部の「5番」しか使うことができませんでした。しかし「いずも型」ではそのほかのスポットも利用でき、「オスプレイ」の同時離発着も可能。本格的な「ヘリ空母」としての能力に優れます。
飛行甲板上にSH-60J/Kを搭載する「いずも」。定数は7機だが、物理的には十数機を艦載できる(関 賢太郎撮影)。
ただ、こうしてヘリ空母が充実する一方で、海上自衛隊の「ヘリコプター不足」が加速するという課題も存在します。海上自衛隊は「空母航空隊」を編成しておらず、既存の基地に配備された航空隊から必要な機数を割いて「いずも型」や「ひゅうが型」、ないしそのほかの護衛艦にヘリコプターを派遣しますが、ヘリコプターの総数自体は増えていません。
海上自衛隊が保有する対潜哨戒ヘリコプターSH-60J/Kの数はおよそ80機。そのうちの14機、実に2割が「いずも」と「かが」の2隻に割り当てられるため、そのぶんどこかが必ず“割を食う”はず。ほかの護衛艦に搭載されていたヘリコプターが「かが」へ移っただけ、という本末転倒な結果になる可能性も十分にありえるため、今後、SH-60Kの増産が必要になるかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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