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プーチンの警告:スピーチ完全版
【概要】
この非常に率直な対談は、2016年6月にサンクトペテルブルクで開催されていた国際経済フォーラムの期間中に、ロシア政府が様々な報道局の代表者を招待して行われたものです。
【プーチン大統領のスピーチの内容】
次はミサイル防衛システムについてです。
よく聞いてください、ここに座っている私たちは全員が大人で、さらに経験豊富なプロです。
しかしあなた方が私の言葉をそのまま正確に報道することを期待すらしていません。あなたがご自分の報道局に影響を与えようすることすら期待していません。
私は単に、個人レベルであなた方にお伝えしたいだけなのです。
もちろんすでにご存じでしょうが、改めて思い出してください。過去数十年の間は、かつて存在していた地政学的な権力のバランスのおかげで大規模な世界的紛争は避けられてきました。
核兵器を保有している二つの超大国は実質上、先制攻撃目的、そして防衛目的の兵器の製造を停止することに同意しました。
そ の機能システムはシンプルです。一方が軍事的な潜在力で支配的になった場合、そのような力の行使を可能にしたがる傾向があります。(すでに国際法で禁止さ れている通り)対ミサイル防衛システムや、かつて存在していたそれに関連するあらゆる同意事項は、国際的な治安保全の観点から考えると絶対的に必要不可欠 なものです。
誰かを叱りつけるようなことは私もしたくはありませんが、アメリカ合衆国が1972年に批准された弾道弾迎撃ミサイル制限条約から一方的に手を引いたことで、国際安全保障に甚大なダメージを与えました。世界的な戦略的権力バランスの点で評価すれば、これは最初の打撃となりました。
私は当時(2002年)、そのようなシステムを展開させるつもりはないといいました。その理由はA)非常に高価であるかから、そしてB)それによって(アメリカ側から)どのような反応が返ってくるかわからなかったためです。
「私たちはお金を焼き捨てるようなことはしません」ということです。
ロシアは別の選択肢を選ぶつもりでした。先ほどお話しした通り、地政学的な戦略上のバランスを維持するために先制攻撃目的の兵器を展開させることです。ただそれだけのことです。他の誰かを脅迫するような目的ではありませんでした。
アメリカ側はこう言いました「いいでしょう。私たちの防衛システムはロシアに対抗するためのものではありませんし、ロシアの兵器もアメリカに抵抗するためのものではないでしょう。どうぞご自由に」
この対談は2000年代初頭に交わされたもので、当時のロシアは非常に厳しい状態にありました。経済の崩壊、内戦、コーカサス地方でのテロリストとの闘い、ロシアの軍産複合体の完全な壊滅状態などです。
そ の時点ではロシアが(将来に)軍事的権力を再構築することなんて、彼らには想像もできなかったに違いありません。おそらくは、ソビエト時代から残ったもの も徐々に荒廃するだろうとさえ予想していたのではないかと思います。だからこそ、「あなた方のお好きなようになさってください」と言ったのではないでしょ うか。
しかしロシアはアメリカに対し復古的な対策を取ることを告げ、実際にそうしました。そしてロシアは現在、その分野のあらゆる側面で成功を収めていることを断言できます。
全部を説明はしませんが、重要なのはロシアが軍産複合体を近代化させたことです。そしてロシアは、次世代の戦争体制を開発し続けます。ミサイル防衛システムに対抗するシステムについてさえ、ここではお話しするつもりはありません。
私たちがアメリカ側のパートナーの方々に(兵器製造の制限について)何をどうお話お伝えしても、彼らは私たちとの協力を拒否してきました。私たちの申し出を断り、自国のやりたいことを行い続けてきたのです。
この公の場では私からお話しできないこともあります。もし言えば、私が失礼なことを言うことになりますから。
あなた方には私の言うことが信じられないかもしれませんが、私たちはこれ(軍拡競争)を停止するための本物の解決策を申し出てきました。しかしアメリカは私たちがせざるをえなかった提案のすべてを拒否してきたのです。
そして現在、アメリカはルーマニアに自国の対ミサイルシステムを配置させました。彼らの理由はいつも同じです。
「イランの核兵器の脅威から、私たちを防衛する必要があるからです!」
その脅威はどこにあるのでしょう?イランの核の脅威など存在していないのですが。
アメリカはイランと合意さえしていたじゃないですか。しかもこの合意を主導したのはあなた方アメリカであり、私たちも手助けしていました。
し かしアメリカがいなかったらこの同意も存在していませんでしたので、これはオバマ政権の業績だと私は考えています。この同意によって同地域の緊張感が緩和 されました。また私もこの同意には賛成しています。ですのでオバマ大統領はご自分の業績リストにこの合意を入れてもよいかと思います。
しかしイランの核の脅威は存在していないにもかかわらず、対ミサイルシステムが配置され続けています。
ということは、アメリカがロシアに嘘をついていると私たちが言ったのは正しいということになります。
(対ミサイルシステムの配置の)アメリカ側の言い分は「イランの核の脅威」に基づいたもので、本当の理由ではありません。
繰り返すようですが、アメリカは私たちに嘘をついたのです。
アメリカはこのシステムを建築し、今ではミサイルが装填されています。
皆さまジャーナリストの方は、このミサイルがカプセルに入れられていることをご存知のはずです。これは水上を拠点にしたトマホーク中距離ロケット発射装置から使用されおり、「対ミサイル」システムが装填され、距離にして最高500kmを貫通することが可能です。
し かしロシアはこのテクノロジーを事前に認識していました。アメリカが最高で1000km、そしてさらに遠くの距離を貫通可能な新しいミサイルの開発に成功 するのはどの年になるかさえ、ロシアは把握していますし、そうなった時点でロシアが保有する核の可能性に直接的に脅威となることでしょう。
何年にそれが実現するかについてロシアは把握していますが、私たちがそれを認識していることをアメリカ側も知っているのです!
そしてアメリカ政府がほら話を伝えるのはジャーナリストのあなた方だけで、そのあなたが自国民にそのでたらめを広げているのです。
その一方、あなた方は迫りくる危機を感じていないことが、私には心配なのです。
この世界が、後戻りのできない方向に向かわされていることを、あなたたちはどうして理解していないのでしょう。
それが問題なのです。彼らはその一方で、何事も起きていないようなふりをしています。
どうやったらあなた方にわかってもらえるのか、私はもうわかりません。
そしてアメリカはこれを「武力侵略を防ぐ」目的の防衛システムとして使われている兵器としてではなく、「防衛」システムとして正当化していますが、決して真実ではありえません。
対ミサイル防衛システムは、攻撃的戦力システム全体の一部であり、攻撃的ミサイル発射装置を含めた全体の一部として機能するからです。
まず複合体がブロックをすれば相手方は高精度の兵器を発射し、次は核の可能性のある攻撃をブロック、そしてその返答として自国の核兵器を送り出すことになります。これは一つのシステムの一部として作られているのです。
現在の核を含まない戦争ではこのように機能します。しかし高精度のミサイル防衛システムは除きますがが。
では実際のミサイルの「防衛」問題はここまでにしましょう。
このようなカプセルには先ほどの「対ミサイル」が組み込まれており、海上を拠点にしています。トマホークス亜音速ミサイルシステムを運搬できる軍艦の上にです。
配置するには数時間かかりますが、ではそれがどのような種類の「対ミサイル」システムなのかが問題になります。配置されたミサイルの種類はどうやって知ったらいいのでしょうか?そのプログラムを(非核から核へ)変更するだけで変わるのですが。
本当にそれだけで変更できるのです。
変更にはほとんど時間はかかりませんし、さらにルーマニア政府自身でさえ何が起こっているのか知らないでしょう。アメリカがルーマニア人に発射させると思いますか?
何が起きたのか、誰も知ることはできないでしょう。ルーマニア人だけでなく、ポーランド人も同じです。
彼らの戦略を私が知らないとでも思われますか?(苦笑)
私が見る限り、私たちは非常に危険な状態にあります。
アメリカ側のパートナーの方たちと対談したことがありますが、彼らは核弾頭抜きの弾道ミサイルを開発したいと話していました。
私たちはこう返しました。「それがもたらす必然的帰結が何か、あなた方は本当に理解しているのですか?
潜水艦や領土からミサイル、弾道ミサイルを発射するということですが、そのミサイルに核弾頭がついているかどうか、私たちはどう確認したらよいのでしょうか?!
それにより、一体どのようなシナリオをもたらされるか、想像できないのですか?」
しかし私が知っている限りでは、アメリカはこのような兵器の開発はしていません。今のところは中断しています。それでも他のことは実行しています。
私が理解しているのは、私たち自身を防衛する必要が出てくるということです。そしてアメリカはこの動きを、いつも通りに「ロシアの武力侵攻だ!」と宣伝するということも、私は知っています。
しかしこれは、あなた方の行動に対する私たちの反応にすぎません。(大統領として)私たちの国民の安全を確保しなければならないことは、明らかではないでしょうか?
それだけでなく私が最初に申し上げた通り、戦略的な権力バランスを維持するよう努力する必要もあります。私の回答を終わらせるにあたり、またその点に戻らせてください。
過去70年以上の間、世界的な大規模な紛争を避け、人類に安全を確保してきたのはまさにこの権力のバランスでした。「相互の脅威」に根付いた恩恵であり、この相互間の脅威こそが相互の平和を地球規模に保証していたのです。
どうやったらそれをあのように簡単に台無しにしてしまうのか、私にはまったく理解しようもありません。
私は彼らの行動は非常に危険だと思っています。思っているだけはなく、確信しています。
(翻訳終了)
*****
【コメント】
プーチン大統領の読み通り、この会談の翌月の7月に開催されたワルシャワでのNATOのサミット会談では、NATO同盟国はロシアを「世界的な安全に対する主要な脅威」であると(再び)定めていました。ISISをさしおいての、世界の脅威No.1だそうです。ISISは彼らの支配下にあるから脅威でもないということでしょうか。
この動画のほとんどは翻訳してありますが、後半約5分の一は2007年のミュンヘン安全保障会議でのプーチンのスピーチで、この部分は翻訳していません。
しかし2007年のスピーチの最後には、プーチンも「あなた(アメリカ)の対ミサイル防衛システムがロシアを標的にしたものではないというのであれば、ロシアの新しい兵器もアメリカを標的にしたものではありませんから!」と、キレています。
私 もプーチンの発言をこの動画のように何度も聞いてきましたが、本当にプーチンの言っていたように西側のメディアは彼の言葉(通常は国際法を守り、紛争を避 けようという申し出)をそのまま伝えることはなく、なぜかロシアが「攻撃を仕掛ける側」にいるような表現になっていることが多いので、このスピーチで隠し きれていないようにプーチン氏が怒るのも仕方ないことかと思います。
トニー・ブレアのイラク戦争に関する調査委員会の発表から、イラク戦争は不要な戦争であったと伝えられましたが、プーチン大統領は最初からアメリカのイラク武力侵攻に反対してきました。
プーチン:「ロシアはイラク(侵攻)についてアメリカに警告を発していた」
2004年6月16日【Washington Post】
リビアについても、ヒラリー・クリントンのEメールスキャンダルの辺りから、さらに加速度的に様々な情報が公開されており、リビア武力侵攻も必要のない武力行為であったことが公けに明らかにされ始めています。
このリビアに関してもプーチンは反対してきました。
プーチンが「リビアに関する決議に違反している」とイギリスとアメリカを攻撃
2011年11月12日【Independent】
このように考えると、アメリカの武力侵攻を免れたイランはラッキーだったけども、シリアへの武力介入も本当に必要なことなのか、疑わしく思えてきます。
ヒラリー・クリントンはISISに資金を寄付していた企業の取締役だった
2016年8月1日【YourNewsWire】
(イメージ画像)
「ヒラリー・クリントンがシリア国内のISISに資金を提供していた企業から10万ドルを取っていたことが、ウィキリークス(Wikileaks)が公開した資料から明らかになった」
シリアでも、プーチンはアメリカの武力侵攻に最初から反対し続けてきたことは言うまでもありません。
これもプーチン大統領の言う通りですが、世界第三次大戦が始まろうかとしているような緊張感の中で、何事もないようにふるまっているメディアには不気味さすら感じますね。
またCNNの報道によれば、ロシア国民は迫りくる世界第三次大戦に備えて必需品を備蓄しているということです(YourNewsWire)。
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