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傍若無人の中国を孤立させたフィリピンの英知
一触即発の東シナ海、日本も思い切って提訴を
2016.7.26(火) 森 清勇
仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」
南シナ海をめぐる中国との紛争で仲裁裁判所がフィリピンに有利な判断を示すことを期待し、マニラで花を放り上げるフィリピンの活動家やベトナム人(2016年7月12日撮影)〔AFPBB News〕
中国が国際法を守らない国であることがいよいよ鮮明になった。これまでも、中国は自国に力がない時はじっと我慢して、力がついた段階で一気に攻勢に出る「韜光養晦(とうこうようかい)」戦略をとってきた。
日中中間線付近のガス田の一方的掘削や尖閣諸島の領海侵犯、並びに南シナ海の内海化などは、中国の韜光養晦戦略に基づく行動である。
改革開放以来の経済発展によって軍備増強が可能となり力がつくと、世界を牛耳る力を持った中国であることを認めよ(G2論)と米国に迫ったこともある。しかし、人権尊重や国際法の遵守など、ステークホルダーとしての責任感が見られない点などから、米国は潔い返事をしてこなかった。
こうして、中国はがむしゃらに力の戦略を選んだとみられる。「裁定は確定的で上訴できない」とされる今回の仲裁裁判所の判断を、「政治的茶番」「紙屑」と称して無視する態度をとっている。
国際法の番人の一角には到底置けない「異常な国」であることを、まざまざと見せつけている。
国連安保理の常任理事国として、世界の平和と安定に責任を負うべき中国が、確定的な効力を持つとされる仲裁裁判所の裁定を侮り、自ら大国にふさわしくない態度を示しているわけである。
日本は過去にこの中国を相手にして難癖をつけられており、今後も相手にしなければならないわけで、無関心ではおれない。
ケ小平の「棚上げ」ペテン戦略
中国では、2021年の共産党結党100周年が迫っており、力の誇示を推し進めてでも、人民に共産党の偉大さと政権の正統性を示さなければならない。その1つが、東シナ海や南シナ海を包含する第1列島線の内海化であるに違いない。
韜光養晦は使い勝手のいい戦略である。日本は日中国交正常化以来、中国の国力造成にODA(政府開発援助)約3兆7000億円を投与した。しかし、中国は感謝の言葉を述べることもなく、今では戦時賠償であったと言わんばかりの口吻である。
日中中間線のガス田も、尖閣諸島の領海侵犯も、そして南シナ海の人工島造成も、韜光養晦の戦略を愚直に守り通してきた成果という以外にない。
尖閣諸島が日中間で語られたのは国交交渉で田中角栄首相が訪中して周恩来首相と会談した1972年であるとされる。日本は領有権が問題になるとは思ってもいなかった時期であり、日本の国力も格段に大きく、探りのジャブを入れるくらいの感覚であったに違いない。
田中角栄首相が日本の領有権を確認するためか尖閣諸島に言及すると、周恩来は「これ(尖閣問題)を言い出したら、双方とも言うことがいっぱいあって、首脳会談はとてもじゃないが終わりませんよ」と言ったとされる。
田中首相も横綱の積りであったか、「それはそうだ、じゃ、これは別の機会に」と受けて流し、交渉は終わったとされる。
それから6年後の1978年、批准書交換のため来日したケ小平が「こういう問題は一時棚上げして、次世代のもっと知恵があるものに任せよう」と提案したのである。
日本が(領有権に)問題ないと思っていても、中国側からすると、「棚上げ」とは、韜光養晦戦略で力がつくまで待つということであったのである。
日本がのんびり構えているところに、中国は1992年に海洋法を制定して尖閣諸島を自国領として組み込んでしまう。その後、頻繁に領海侵犯を繰り返すようになる。
こうした動きに危機感を募らせた日本、特に石原慎太郎東京都知事は、個人所有の島嶼を都で買い上げる動きに出る。その後、国が所有者を懐柔して国有化する。2012年のことである。「棚上げ」という現状を変更しようとしているのは日本側であるという中国側の指摘は全く当たらない。
南シナ海を巡る対応も、類似の経過をたどっている。1980年代後半、ケ小平がフィリピンに南シナ海問題の「棚上げ」を提唱し、事実上の協調路線を打ち出したとされる。
しかし、ケ小平が1997年に死去すると、国力を急伸させていた中国は東南アジアでの経済的影響力を高め、南シナ海問題でも「自国の漁民保護」を名目に領有権を主張するようになり、2012年にはスカボロー礁を奪うなど、実力行使を進めるようになっていく。
中国式トリック
中国が南シナ海に影響力を拡大でき、大胆に行動するようになったのは、米中枢同時テロで米国がテロとの戦いに忙殺され、東南アジア諸国からアジア軽視と批判されるようになる一方で、中国の協力も必要になり、中国に対する圧力が弱まったこともあるとされる。
他方、中国は日米などの動きに神経質に反応し、些細なことでも必ずと言っていいほど外務省報道官などが反論し、声高に事実に反する声明などを発表して平然としている。
中国人民は事実を知らされていないから不思議に思わないが、言論や報道の自由がある日米などから見ていると、噴飯ものであることがしばしばである。
南シナ海の問題は中国に原因がある。しかし、中国に不利な論調が世界で流布されると、なりふり構わず反論してくる。ちなみに、東シナ海問題も同様に中国に問題がある。
マダム・プロパガンダ″の異名を持ち、先の全国人民代表大会で外事委員会主任であった傅瑩(ふえい)は、中国南海研究院院長の呉士存博士との連名で米紙ナショナル・インタレスト(2016年5月9日付)に、「南シナ海〜この局面にどう至ったか」を発表した。
この中で、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、2009年までは良好な関係を維持していたが、2009年に発足したバラク・オバマ政権が「アジア回帰」政策を掲げ「南シナ海で中国と摩擦を起こし始めた」と、米国の介入を非難する。
そのうえで、「主権を守り文民と防衛の必要性に応えるため」スプラトリー(中国名・南沙)諸島の実効支配地で、13年から埋め立てを始めたと自己正当化した。
これに対し、英国王立国際問題研究所準会員で南シナ海問題に詳しいビル・ハイトン氏は同誌で、「魅力がなく喧嘩腰〜中国政府が偽造する南シナ海広報キャンペーン」と題して、中国の米国に対する責任転嫁を批判している。
米国のアジア回帰は2009年ではなく、2011年秋から打ち出されたこと、またワシントンではオバマ政権以前から東南アジア諸国が南シナ海での中国の主張に懸念を深めている事態を問題にしていたこと、その他にも、傅氏自身が2007年から南シナ海問題で強硬姿勢を取っていた証拠などを挙げて論破している。
2009年は南シナ海の管轄権を主張する根拠の「九段線」の入った地図を中国が国際社会に初公表した年だと指摘し、論文には多くの矛盾があり、「パロディー」で、「中国を帝国主義による背信の被害者に見せようとしている」とも指摘している。
中国が自らを被害者に仕立てる論調はいまに始まったことではない。支那事変に至った経過もワシントン会議で決められた諸条約を中国が守らなかったことが原因であるが、南京大虐殺の大嘘に見るように自国を犠牲者に仕立てている。このことについては稿を改めたい。
国連の機能不全
国連は自国の利害にあまり関わりないことでは協調するが、利害が大きくかかわる問題では拒否権を行使するために決定できないことが多く、死に体も同然である。
クリミア問題、続くウクライナ問題、さらにはシリア問題、そして派生したIS(イスラム国)問題など、迅速な対処ができなかった故に、テロ事案などの拡大・拡散につながっている。
それどころか、人権問題などでは、中国や北朝鮮、あるいはアフリカ諸国など今日的問題には焦点を当てようとしないで、70年も80年も前の日本糾弾に注力する不公平さが目立つ。
外務省の無気力、無定見、無責任がまず責められるべきであるが、平和国家として国連分担金などを拠出してきた日本の誠実さを考慮しない国連に、大きな期待を抱くのは間違いである。
つい近年まで、日本は米国に次ぐ多額の分担金を負担してきた。米国を除く安保理常任理事国4か国の合計よりも大きな額であった。しかし、それに見合う幹部ポストなどを要求するどころか、逆に遠慮して返上し他国に譲るなど、日本的謙譲の美を発揮してきた。
しかし、日本の感傷的な美徳などどこ吹く風の国際社会である。国連機関がイデオロギー色か民族色を持ちつつあるかのように見受けられ、十分な機能が期待できなくなりつつある。
国連は日本が思うような理想の調停機関ではなく、それぞれの国家が国益を獲得する闘争場である。現在の国連は顕著に韓国人が補職され、国際社会の顰蹙を買っている。
世界文化遺産や記憶遺産登録などでは、反日的日本人の暗躍で思うように登録が進まなかった。こうした状況を防ぐためにも、愛国的日本人を然るべきところに派遣することが必要であろう。
言論の自由をたてに日本を貶める反日的日本人が国際場裏に出没し、拍手喝采を受けているようである。当人は国際人として、国民より一段上に立っているという優越感があるのかもしれないが、国際社会は熾烈な闘いであり、自国の尊厳を傷つけるような人士は幼稚であり、蔭では笑いものになっているに違いない。
あっぱれ!仲裁裁判所
国連の機能不全に飽き飽きしていた矢先、今回の国際仲裁裁判所の判決は見事と言うしかない。
日本は竹島や尖閣諸島問題、さらには北方四島問題で、相手が乗ってこないので、裁判が成立せず、意味がないようなことを言って国際裁判に持ち込む素振りさえ見せなかった。しかし、今回の比国の上訴が示したように、大きな意義があることが分かった。
実力では到底かなわない比国の知恵の勝利である。
福沢諭吉は武力での解決を好まず、「智戦」の奨めを語っている。武力解決は国民の犠牲を伴う上に、国際社会の評価も受けにくい。これに対して、智戦は今回の比国に見るとおりであり、有力な国のほとんどが支持している。
日本は、領土問題に加え、慰安婦や南京問題も抱えているが、日本の主張を国際社会に理解してもらえないで苦心している。
国連海洋法条約(UNCLOS)は「条約の解釈又は適用に関する紛争」を解決する手段として、国際海洋法裁判所、国際司法裁判所、仲裁裁判所、及び特別仲裁裁判所があることを教えている。
比国は今回、仲裁裁判所を選択し、領有権を問うことなく、中国が設置した九段線の有効性や島嶼が島かどうかを問うたのである。
同裁判では中国が主張する古代から中国のものという「歴史」は判断しないことを明確にし、あくまでも近代法治社会における各国の主張などから、その妥当性と国際法上の島などの解釈を明確にしたのである。
終わりに
日本は、領有権問題として国際司法裁判所への提訴などを考えたこともあるようであるが、そもそも領有権問題はないという立場とともに、提訴しても相手が受けて立たないであろうということから、提訴することを躊躇してきた。
しかし、今次比国の状況を見て、外務省には知恵がなかったと言わざるを得ない。相手が拒んでも手続きは可能であるし、しかも海洋紛争に限らないことも明確になった。
中国が仲裁裁定を受け入れないことは、中国自身の言行によって予測されていた。しかし、中国が力任せに自国の政策を推し進めるならば、国際社会を敵に回すことになろう。
日本は東シナ海についても関心を有している。中国は尖閣諸島を自国領だと称して接続水域ばかりでなく領海にも軍艦を入れてきた。また、東シナ海では一触即発の危機をもたらしかねない行動を、中国空軍機が採ったとされる。
南シナ海同様に、力ずくの現状変更であり、安穏としてはいられない状況に立ち至っている。比国の英知に倣い、法的正当性を訴えるとともに、東シナ海で起きている実情を広く国民に知らせ、国民を啓発すべきではなかろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47443
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