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17年度予算案、「景気配慮と財政再建」の細い道
ニュースを斬る
さらに鮮明になる「社会保障の見直しから逃げられない」現実
2016年12月27日(火)
安藤 毅
政府が2017年度予算案を決定した。一般会計の歳出総額は5年連続で過去最高を更新した。景気に配慮する一方、新規国債発行を2016年度より抑えるなどやり繰りの末に「経済再生と財政再建の両立」への体裁を整えた格好だ。小手先の調整では膨れあがる社会保障費に対応しきれない現実が一段と鮮明になってきたと言える。
一般会計の歳出総額は2016年度当初予算より0.8%増の97兆4547億円となった。歳出総額が膨れあがったのは、全体の3割超を占める社会保障費が32兆4735億円と2016年度に比べて4997億円増えたことが最大の要因だ。
高齢化の進行に伴い、医療が11兆5010億円、年金も11兆4831億円と、それぞれ2.0%、1.5%も伸びる。
麻生太郎財務相は12月22日に閣議決定した2017年度予算案について、消費税増税の再延期にともなう厳しい予算編成だったことを述べた上で、「全体のバランスとしてそこそこできている」と語り、経済の再生と財政健全化の両立を図れたとの認識を示した。(写真:Bloomberg/Getty/Images)
「高齢者の負担増」へ一歩
政府は財政再建に向け、2016〜18年度の3年間の社会保障費の伸びを自然増の範囲の1.5兆円程度に抑える目標を掲げている。
高齢者の急増が確実視される中、社会保障費の膨張を放置すれば社会保障制度そのものが立ちゆかなくなる恐れがある。また、ほかの政策に充てる予算の捻出に一層苦慮しかねないからだ。
最低限の基準であるこの目標をクリアするには、今夏の概算要求段階で6400億円だった自然増分を1400億円圧縮する必要があった。政府・与党の調整の末、医療で950億円、介護で450億円抑えることで折り合った。
見直しに当たり、政府・与党は「年齢に関わらず経済力に応じた負担」を方針に据えた。
焦点となった医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」の見直しでは、住民税を払う一定以上の所得がある人を引き上げの対象にする。
具体的には、年収370万円以上で現役並みの所得がある70歳以上の高齢者について、外来医療費の上限を現行の月4万4400円から2017年8月に5万7600円に引き上げる。
年収370万円未満で住民税が課される高齢者の上限についても、1万2000円から1万4000円にする。2018年8月からは上げ幅を拡大する。
75歳以上が加入する「後期高齢者医療制度」にも手を付けた。74歳まで夫や子どもらに扶養されていた高齢者は現在、所得に関係なく保険料を9割軽減している。これを2017年4月から段階的に縮小することにした。
このほか、超高額の抗がん剤オプジーボの公定価格(薬価)の50%引き下げも行った。
社会保障費の伸びを年5000億円程度に抑えるという目標の達成に向け、「世論の反発が比較的小さそうな、削減しやすい項目を積み上げた」と政府関係者は語る。
長年の課題となっていた、一定の所得がある高齢者の負担増に一歩踏み込んだこと自体は評価できる。
ただ、政府・与党内では来年夏の東京都議選や早期の衆院解散・総選挙が実施される場合への影響を懸念する声が広がり、改革の深掘りは先送りされた。年金支給開始年齢の引き上げなどの「大玉」はまだ議論すら始まっていない状況だ。
強まる予算の硬直化
今後は高齢化の進展に伴い、社会保障費の増大が予算全体を圧迫する構図がさらに強まるのは必至だ。その一方で、社会保障の財源に充てるはずの消費税率10%への引き上げは2019年10月に再延期されている。
安倍晋三政権は金融緩和や大型の財政支出で企業業績を底上げし、税収増につなげることで財政再建も図るという「経済再生と財政再建の両立」を経済・財政運営の基軸に据えてきた。
こうした「アベノミクス」による経済成長重視路線が一定の効果をもたらしてきたことは間違いない。
だが、景気の足踏みや円高による企業業績の悪化を背景に、政府は2017年度の税収は1000億円程度の増加にとどまると見込んでいる。
トランプ次期米大統領が米国内のインフラ投資に注力する考えを示すなど、世界的に財政支出で低成長の打破や格差是正につなげようという流れが強まっている。「政策の総動員」を掲げる安倍首相も財政出動を重視しており、財務省幹部は「予算案の総額を2016年度当初予算より削ることはそもそも想定していなかった」と話す。
「トランプ相場」による円安・株高傾向も日本経済にとって、明るい材料と言える。
ただ、トランプ新政権の経済政策の出方や、ドル高による新興国からの資金流出懸念など先行きには不透明感が漂う。景気を急速に冷やす緊縮策は論外だが、大幅な税収増を前提にした財政政策の持続性に陰りが見えたのは確かだ。成長重視の旗を掲げつつ、その脆弱さに向き合うことも欠かせない。
既に政策に使う経費の5割超は社会保障費が占めている。ほかの政策分野への配分が硬直的なものになっているのが実情だ。
働き方改革や子育て支援、研究開発や効果的なインフラ投資など成長を後押しする分野に重点配分する機動的な予算編成の余地を広げるためにも、社会保障分野の抜本改革が避けて通れないことは明らかだ。
海外投資家の安倍政権への不満
「安定した政権基盤の安倍政権に対する海外投資家の期待は大きい」
「ただし、財政規律や社会保障の持続性、人口減への対応といった構造問題への取り組みが足りないとの不満を良く耳にする」
海外の市場関係者などとの関係が深い竹中平蔵・東洋大学教授はこう指摘する。
人口減を踏まえ、生産性向上など経済成長に向けた取り組みを加速させるとともに、経済社会構造の現状に対応する形に社会保障と税制のあり方を一体的に見直す。成長と財政再建の両立には、そうした着実な対応を積み重ねていくことこそが王道なのだろう。
「衆参両院で安定した議席を有する強い政権の間に、日本の構造的な問題の解決に取り組んでほしい」。企業トップらと話していると、こんな声を聴く事が多い。
これに対し、次期衆院選をにらみつつ、こだわりのテーマである憲法改正論議やロシアとの北方領土交渉を本格化していきたい安倍首相にしてみれば、内閣支持率の下落につながりかねない「痛みを伴う改革」はできるだけゆったりとしたペースで進めていきたいというのが本音だ。
一層の長期政権を見据える安倍首相がどのような時間軸で肝いりのテーマや、こうした構造問題の解決に取り組んでいくのか。2017年の大きな注目点となりそうだ。
このコラムについて
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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