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安倍首相とトランプ時期米大統領との会談 (c)朝日新聞社
「北方領土問題」ロシア通対談 安倍首相に立ちはだかるプーチン、トランプの壁〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161201-00000093-sasahi-int
週刊朝日 2016年12月9日号
北方領土問題の行方が注目されている12月15日の日ロ首脳会談。東郷和彦元外交官と木村三浩「一水会」代表のロシア通2人が、過去の交渉を振り返りながら、山積する課題とともに交渉シナリオを語り合った。
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木村:安倍晋三首相とプーチン大統領はこれまで15回会談し、信頼関係を徐々に築き、気心は知れあっている。日本に日ロ平和条約がないことは異常な事態。これに終止符を打つという安倍首相の意気込みは、非常に評価している。
東郷:今の流れが直接始まったのは2012年3月にプーチンが大統領に返り咲く直前の記者会見で「自分が大統領になったら、日本と経済協力を抜本的に進めたい。引き分けによって、領土問題を解決したい」と述べたときからです。引き分けの定義はどっちも負けないということ。いま、ロシア人で領土を返したいと思っている人は皆無ですから、本当にびっくりした。安倍首相も12年12月の再任以来、日ロ関係の活性化に努力。14年のソチ五輪開会式では出席した首脳中で一番厚遇されたが、ウクライナ問題が勃発。約2年間、交渉が止まってしまった。ようやく、今年から再活性化し、首脳同士での話し合いがこれほど重みをもってくる交渉は、私の知る限り、戦後、例がありません。ソチの時点で安倍首相の任期はあと2年、その間に決着させたいという意欲を感じました。
木村:私はプーチン大統領の側近と会ったが、一連の安倍首相のアプローチを高く評価しています。
東郷:日本の世論には、プーチン大統領においしい経済を食い逃げされて領土を返してもらえないかも、という不信感がある。それは乗り越えないといけない。「引き分けで解決したい」と相手が言っているときに「信用できないから話さない」と言うのか。もちろん熾烈な議論を経ずに接点は見えない。しかし相手がやろうというときに、こちらが逃げるのでは、引き出せるものも引き出せるはずもない。
木村:ロシアはしっかりつきあえば、頼れる国家。4島一括でなくても、弾力的にいろいろな形で先行返還でもいいのではないか。完全固定化よりマシだ。
東郷:過去、日ロ交渉で2回大失敗した。1回目は、ソ連邦の崩壊によりロシアは極端に弱化。エリツィン新政権は日本を目標とした国づくりをやろうとしていた。当時のコーズィレフ外相が1992年3月に来た際、まず2島(歯舞、色丹)の引き渡しを交渉し、協定という形でまとめる。その後、残り2島(国後、択捉)も結論を出そう、4島合わせて、平和条約を結びましょうと秘密裏に提案してきた。しかし、歯舞・色丹だけでの食い逃げリスクを恐れた日本側はこの提案を拒否。エリツィン大統領の92年9月の訪日ドタキャンが起こった。その後、橋本・エリツィンによる交渉活性化が起きるが実を結ばず。2回目は、プーチン大統領が00年9月に来日したとき、56年の日ソ共同宣言を確認した。チャンスであり、交渉を経て、01年のイルクーツクで森(喜朗)総理は並行協議を提案。歯舞・色丹の2島は引き渡すと決まっているんだから、どうやって渡すか協議しよう。同時に意見が真っ二つの国後・択捉を並行協議しようという案でした。これはプーチン大統領が日ソ共同宣言を認めたことによって出てきた知恵なんです。プーチン大統領はこれに対し、「パスモートリム」(様子を見ましょう)と言った。ノーと言わなかったことは値千金。その後、いろんな事情で日本のほうから自壊した。安倍首相が躊躇したら、プーチン大統領以上の条件を備えた人が出てくることはもうないだろう。
木村:日ロ交渉を進めるうえで、米国の出方を気にしておく必要がある。
東郷:冷戦まっただ中の56年の交渉中には、ダレス国務長官が「日本が国後、択捉のソ連帰属を認めて妥協したら、沖縄の返還はなくなる」と言った恫喝の話もあった。しかし逆の状況もあった。01年の同時多発テロ発生で、米国はテロとの戦いに全外交を集中する状況になった。進撃地はアフガニスタン。米国は戦略的にパキスタン、中央アジアからコーカサスに米軍基地を置く必要に迫られる。そのために米国は、プーチン大統領の協力が必要になった。
木村:プーチン大統領の一番の売りはロシアの国益を守るということ。グローバル資本から国益を守るということだ。ロシアにとって、米国政権は共和党のほうが体質に合う。来年からトランプ大統領が率いる共和党政権になる。価値観外交でなく、日本の自主外交(国益外交)がやりやすくなるが、戦略的な基準値が必要だ。
東郷:オバマの価値観を引き継ぐヒラリーが当選したら日本の対ロ外交推進について、より厳しい視線が向けられただろう。しかし、トランプ大統領が誕生し、米ロ協調が進めば、ロシアにとって日本の希少価値が減るというパワー・ポリティクス面もあり、事態はそう単純ではない。
木村:安倍首相も米国を気にしている。安保関連法で可能になった南スーダンでの駆けつけ警護など国際協調と言いながら、実は米国のやってほしい政策を先取りして、外交のフリーハンドと歓心を買っている。日ロ接近で中国が焼きもちを焼いているが、この点で対中外交上で、追い風にはなっている。
東郷:外交交渉は何が起こるかわからない。12月の首脳会談でどこまでいくかわからないし、期待値が上がりすぎていた。2年の間に解決に持ち込みたいというのが5月のソチ首脳会談での両首脳の意図であったとしても、領土交渉は極めて複雑。半年で大筋の結論を得られるかは疑問。他方、経済面では八つの項目のうち具体的な成果が早急に望まれる。それが出てくるか、注目したい。
木村:領土問題は12月からがスタートと考えたほうがいい。マスコミはあまり煽らないほうがいい。そう冷静になっていないと、世論の対ロ不信感と安倍首相への失望感が大きくなる。
東郷:13年7月、パノフ元駐日ロシア大使と共同で「2島プラスアルファ」の私案を提案した。これまでの交渉で実際にあった提案を活用したものだった。歯舞・色丹の2島については、56年の日ソ共同宣言で書いてある。国後・択捉についてのアルファは、98年にエリツィン大統領が「4島を特別の法的地位をもつ経済特区にしましょう」と小渕恵三首相に提案したので、これを国後・択捉のみにあてはめようという案だ。これは、概(おおむ)ねのイメージを言っているだけで、主権の問題を始め、本当に難しい問題にはまったく手がついていないのが現実です。詰めるべき問題は山ほどある。
木村:民進党の前原誠司元外相が衆院予算委員会で政府見解を聞いたが、安倍首相は「4島一括返還の原則に変わりはない」と言った。しかし、現実的なことで言えば、2島は帰ってくる。残り2島をどうするかが問題。首相が(国後島、択捉島の)帰属を認めないということだったら、ロシア側にどういう提案をするのか注目したい。
東郷:国の力が一番弱いときですら「それだけはできない」と言っていたロシアが、国の力が強くなったいま、「一括返還」に応ずるか。可能性はゼロであろう。しかも歯舞・色丹の引き渡しだけでも、いま住んでいるロシア人をどうするか、日米の基地配備の問題を含む非武装化の問題をどうするか、たくさんの実務問題がある。外務省の諸兄が全精力をなげうって補佐していただかねばならない。(構成 本誌・村上新太郎、森下香枝)
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