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11月18日の定例会見で本誌記者を指名した小池百合子知事 (c)朝日新聞社
小池百合子都知事 最後の切り札はカジノ〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161122-00000195-sasahi-soci
週刊朝日 2016年12月2日号
ドン内田率いる自民党都議団の巻き返しが始まった。リオ五輪への出張費の過小報告、小池応援団の「7人の侍」の不明朗会計の発覚、ブレーンの越権行為などに照準を定め、猛攻に出たのだ。守勢に回る小池知事は、禁じ手の最終兵器を炸裂させるのか──。
東京都庁6階で11月18日、行われた小池百合子都知事の定例会見。質問しようと本誌記者が何度か手を挙げていると、知事が「緑」と言ってこちらを見た。なんと入館証を緑の紐で首からぶら下げていた本誌記者への指名だったのだ。
舛添要一前知事時代の約7分の1に圧縮したと発表された小池知事のリオ五輪への出張費についてさっそく疑問をぶつけた。
「知事は当初、五輪へは4人の随行員で行き、出張費の合計は1350万円と発表されましたが、そうではなかったという話が浮上しています。現地に先に行った『先乗り隊』の職員がいたと指摘されていますが、実際はどうだったのですか」
小池知事は百合子スマイルで、こう答えた。
「『先乗り』ということでいうなら、100人以上が行ってますけど、それをどうカウント(計算)するか。要はその問題だと思います。リエゾン(連絡係)という役割ですので、それをどうカウントするのか。どこで切るのかはある種テクニカル(技術的)だと思います。今後とも出張費は公開させていただきます」
横文字は多いものの、答えになっていなかった。
リオ五輪へは都職員136人が出張し、計3億2千万円の出張費を使ったことが、自民党都議の質問で明らかになっている。だが、都のホームページでは知事は4人の随行員と閉会式に出張し、計約1350万円の出張費を使ったと公表されており、齟齬(そご)があるのだ。
「現地ではいくつかの場面で知事と一緒だった職員がいます。現地で都の職員は知事のアテンドの仕事をしていたわけで、知事が行かなかったらそういう仕事をしていないのですが、この出張費がカウントされていない可能性もあります」(都庁関係者)
東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長が小池知事を「何も勉強していない」とこき下ろすと、それに符合するように都議会のドン、内田茂都議が率いる自民党都議団も勢いづき、“包囲網”も厳しくなってきた。
目下、ターゲットになっているのは、都知事選で小池知事を応援し、党から除名処分を検討されている「7人の侍」(豊島、練馬区の区議)の一人、河原弘明・豊島区議だ。自身が役員を務め、親族が経営する印刷会社に、2011〜15年度の5年間で、政務活動費から約1080万円の仕事を発注していたことが発覚したのだ。豊島区のルールでは政務活動費で議員個人の資産形成につながる支出はしてはならないという取り決めがある。7年前、豊島区の政務調査費の使い方のルール作りにかかわった千葉大学の新藤宗幸名誉教授は言う。
「親族が経営する会社に発注することは、議員活動とはいえず、論外ですね」
「としま政務活動費を考える会」の渡邉瑛之氏は言う。
「区議会議長宛てに区議の辞職勧告決議を求める陳情を21日、出す予定です。陳情が審議にかかれば、区議会の本会議にかけるかどうかになるでしょう」
また小池知事が自身の給与を半分にカットしたことにより、都議の報酬もカットすべきか否かでも都議会が紛糾。都議らの報酬は1708万円だが、小池知事は現在、1448万円となり、都議のほうが260万円も高い。
都議会では18日、公明党案の都議報酬の2割削減をめぐって議会が紛糾した。
「私たちの報酬を下げると、次は都庁職員を下げろという玉突きの議論になる。戦々恐々ですよ」(都議)
自民党都議団はさらに小池知事のブレーンを標的に定め、攻撃を開始。都政改革本部を取り仕切る上山信一特別顧問(慶応大学教授)だ。五輪予算で、3兆円を超す可能性もあると独自試算した調査チームの報告書をIOCのバッハ会長に直接手渡したことで、都議らからは「越権行為だ」などと批判の声が相次いだ。
上山氏は橋下徹前大阪市長時代から大阪府、市の特別顧問も務め、前々からその手法に異論の声が上がっていた。自民党府議が語る。
「大阪府でも、上山氏は知事に代わって職員に直接指示を出すなど越権行為があるのではないかと疑問視されていた。特別顧問の時給は約1万円で、ちょっとしたヒアリングやアドバイスにもそのつど報酬が支払われていたようです。なかでも上山氏の報酬総額はトップクラスで、12年度は約223万円、13年度は227万円に上ります」
自民党府議団はこれまで3度にわたって、活動の実態と報酬額の透明化を求める情報公開条例の一部改正案を提出。賛成多数でいったんは可決したが、松井一郎府知事が再議の発動をし、廃案になったという。政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう警告する。
「小池さんの本音を代わって言うことが、上山氏の役回りなのでしょう。自民党都連は小池さんのオウンゴールを狙っているから、上山氏がターゲットにされる可能性が高い。五輪カヌー会場で唐突に“宮城長沼”案を持ち出したり、森喜朗・大会組織委員会会長に対して挑発的なコメントを発してみたり。小池人気に陰りが生じてきたとき、かえって小池さんを窮地に追い込む危険性もはらんでいる」
小池知事は18日の会見で、「豊洲市場の安全性が総合的に確認されれば、17年冬あるいは18年春という見通しが立つ」と築地市場の豊洲移転の具体的なスケジュールを初めて披歴した。
その豊洲移転問題での最後の“切り札”とされるのが、「カジノ解禁」だ。
小池知事は衆院議員時代から統合型リゾート(IR)推進の立場を表明し、IR議連のメンバーに名を連ねていた。カジノを合法化する「IR法案」が今国会で審議入りの可能性が高まっていることで、いっそう知事が前のめりになっているというのだ。
「豊洲移転には土壌汚染対策費も含めてすでに約6千億円もの膨大な費用がつぎ込まれています。市場会計保有資金は約1350億円しかなく、市場跡地の売却収入を当てにするしかありません。跡地が売却できなければ、都に11カ所ある中央卸売市場すべてが危機に瀕する。ですから、これまで以上に誘致に熱心にならざるを得ない。五輪とは別に、政策企画局と港湾局が本腰を入れて調査に乗り出しているようです」(都庁関係者)
IRに詳しい大阪商業大学アミューズメント産業研究所所長の美原融教授が解説する。
「米ラスベガスやシンガポールで展開するIR大手のCEOは、東京でのマネジメントに1兆円の投資を公言しているほどです。IR全体で雇用もおよそ1万人を見込めます。東京五輪後の景気浮揚の起爆剤になることは間違いありません。東京でのカジノ誘致は、お台場が早くから候補に挙がっていましたが、理想的なのは銀座から近く利便性がいい築地市場跡地です」
だが、豊洲の地下空間からベンゼンやヒ素など有害物質が検出されたことで、築地市場の移転を疑問視する声も多い。都の専門委員を務める建築エコノミストの森山高至氏はこう言う。
「豊洲は市場にするのは問題ですが、レジャー施設ならば許容の範囲だと思う。交通アクセスを充実化させて、IRを豊洲に誘致するのも選択肢の一つになるのではないでしょうか」
いずれにせよ、そう遠からず、小池知事が「カジノ解禁」という禁じ手を使う日が来るかもしれない。(本誌・上田耕司、亀井洋志)
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