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NHK放送センター(出所:Wikipedia)
2036年にNHKという「放送局」は存在するのか インターネットを無視するテレビ局に未来はない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47789
2016.9.2 池田 信夫 JBpress
NHKは東京・渋谷にある放送センターの建て替え計画を発表した。それによると1700億円かけて今の放送センターを順次建て替え、2036年に新しい放送センターが完成するという。今の建物は最も古いものでは築50年以上たっており、耐震性などに疑問がある。
これを更新する計画は以前からあり、今のセンターを売却して別の場所に新しく建てることが検討されていたが、適地が見つからず、今の建物を使いながら20年もかけて建て直すことになった。しかし2036年にNHKは存在するのだろうか?
■「テレビ」は20年後も存在するのか
まず問題は、今の形の「テレビ」がいつまであるのかということだ。今の若者の部屋には、テレビはない。彼らの通信手段は圧倒的にスマートフォンで、1日中テレビを見るのは老人だ。この傾向が逆転することは考えられないので、2036年にはテレビ放送が存在しているかどうかが疑問だ。
もちろん動画を見る「モニター」はなくならないだろう。しかし今でも日本以外の先進国では、テレビ番組はケーブルテレビやインターネットで見るのが普通で、放送局が特定の周波数を独占する制度はなくなりつつある。
BBC(イギリス放送協会)は10年前からiPlayerというネット配信を始め、ヨーロッパ最大のネットメディアになった。BBCの「ライセンス料」は、テレビとネットを問わずBBCの視聴者すべてに支払いを義務づけ、「BBCはもはや放送局ではない」と宣言した。
デジタル放送にするとき、BBCは放送設備と電波を通信会社に売却してデジタル化の費用をまかない、その設備をリースバックして使っている。テレビ局が占有している電波は通信にも共用でき、技術はメーカーが運用すればいいので、NHKが技術部門をもつ必要はない。メディアが多様化した時代に、NHKだけがテレビ・ラジオ合わせて7チャンネルも持っているのも多すぎる。
したがってNHKの建て替え基本計画(http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/otherpress/pdf/20160830.pdf)に書かれている放送設備や電波は民間に売却し、NHKは「情報棟」のニュースセンターなどの業務に特化すればいい。NHKのインフラと電波なら1兆円以上で売れて、建て替えコストはゼロになるだろう。
このようにコンテンツとインフラを水平分離し、娯楽番組も民間に売却して、NHKはニュースに特化すれば、職員も今の5分の1で十分だ。これはインターネットでは常識で、グーグルもフェイスブックもネットワークを所有してはいない。オープンなインターネットが、最大のユーザーに届けられるからだ。
■モバイル端末から受信料は取れない
しかし今の受信料制度では、こういう改革はできない。それはすべての「受信機を設置した人」に受信契約を義務づけているので、ネット配信すると受信料が取れないからだ。
携帯電話の「ワンセグ」の受信料をめぐる訴訟で、さいたま地裁は8月26日に「放送法の『設置』という言葉はテレビを念頭に置いており、携帯電話の所持は受信設備の設置にはあたらない」ので、受信契約の義務はないという判決を出した。
NHKの受信料は「受信契約」を義務づけているだけで、その罰則もない。昔は特定の人に電波を止めることができなかったので、こういう変な制度にせざるをえなかったが、今はB-CASを使えば、受信料を払っていない人には見せない有料放送ができる。
ところがNHKは、地上波にはB-CASを使わない。見た人からだけ受信料を取る仕組みにすると、NHKを見ていない人から料金を取れなくなるからだ。同じ理由で、ネット配信にも消極的だ。
だがネット配信の流れは止まらない。NHKの番組も、いずれモバイル端末のネット配信が中心になるだろう。そのとき前時代的な受信料制度では、モバイル端末から受信料は取れなくなる。端末を問わないで、B-CASで視聴料を取るしかないのだ。
これは別に新しい制度ではない。世界の有料放送はみんなCAS(制限つき視聴システム)で料金を取っており、日本でもWOWOWやスカパーはB-CASで料金を取っている。NHKもBSは事実上の有料放送だ。それを地上波にも適用するだけである。
■テレビ局の未来はインターネットにある
民放も含めて、テレビという20世紀のビジネスモデルは終わった。アメリカでは、UHF帯の電波をテレビから通信に移すインセンティブ・オークションが進行中だ。これはテレビ局から電波をFCC(連邦通信委員会)が「逆オークション」で買い上げて通信会社に売却するものだ。
その電波はモバイル端末に使われるが、テレビのコンテンツ配信もできる。携帯の基地局は全国にくまなくあるので、放送局が独自に中継局を建てる必要はない。今までは電波を独占していることがテレビ局の強みだったが、今はスマホでHDTV(高精細度テレビ)も配信できる。
日本でも、アナログ放送の引っ越した「跡地」のVHF帯は60メガヘルツ空いたままなので、テレビ局はここに引っ越し、UHF帯をオークションで通信会社に売却すれば、180メガヘルツぐらい開放できる。
ではテレビ局はなくなるのだろうか。そんな心配はない。地上波局のようなコストをかけた番組は、ネット配信ではできない。競争が激しくて、高い広告料が取れないからだ。よくも悪くも地上波の特権はインフラ独占によるもので、今からまねできない。
テレビ局の競争優位は、このコンテンツ制作能力なのだ。それはネット時代にも生きる。特にNHKの場合、娯楽番組はつまらないが、報道は圧倒的に評価が高い。娯楽部門を売却してニュース専門チャンネルにすれば、CNNのように世界に配信することも可能だ。
民放や新聞の質が高くないことから考えても、報道だけは公共放送でやる意味がある。その場合もインフラをもたないで24時間ニュースを有料放送すれば、超優良会社になるだろう。CNNに対抗して日本から情報発信できるのは、NHKしかない。
実はこうした計画は島桂次会長の時代にあり、NHKの孫会社が24時間ニュースを世界に放送するGNN(グローバル・ニュース・ネットワーク)という構想を島は発表した。GNNの発信局として建てられたのが、今の千代田放送会館だ。島が失脚してすべて白紙になったが、今あらためて彼のプランを見直す価値はある。
今回の建て替え計画は、20世紀の古いビジネスモデルを2036年まで延長しようというもので、オリンピックが終わったら行き詰まるだろう。2020年代以降のNHKのビジョンは、インターネットを知っている世代が立案すべきだ。
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