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2012年11月1日 琉球新報掲載
「性的暴行容疑で2米兵逮捕!」。
テレビ画面の“速報”に、一瞬身体がこわばった。
これまで起こったいくつもの事件が思い起こされて、
またしても再発を止めることが出来なかった無念の思いと怒りが込み上げて
しばらく震えが止まらなかった。
米軍は今回の事件に対して、全軍の夜間外出禁止や海軍司令官の謝罪など、
これまでにないすばやい対応を見せた。
それはオスプレーの強行配備に対する県民の怒りが、
これ以上高まらないようにという思惑が見え見えだ。
しかし、どんなに綱紀粛正や米兵の再教育をしようとも、それは真の再発防止にはならない。
なぜなら彼らは全く逆の教育・訓練を受けて兵士になっているからだ。
1995年に北京で開催された第4回世界女性会議で、
沖縄の女性たちが「基地・軍隊、その構造的暴力と女性」と題するワークショップを開いた。
沖縄で戦後この方起こり続けてきた米兵による強姦、性暴力事件の数々。
遡れば約160年も前、ペリー艦隊の兵士が沖縄の女性をレイプするという事件を起こしている。
米軍だけではない。
沖縄戦の最中、日本軍はこの小さな島に130以上もの慰安所を設け
朝鮮半島の女性たちをはじめ、日本、沖縄の女性たちを軍隊の性奴隷にした。
これらの事実を無言劇にし、基地・軍隊が内包する構造的暴力を訴えるワークショップだった。
「構造的暴力」とは、平たく言えば、「起こるべくして起こる暴力」という意味である。
1996年、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」が、沖縄の状況を米市民に訴えるため、
アメリカピースキャラバンを行った際、事前の勉強会で元海兵隊員から衝撃的な話を聞いた。
「兵士の仕事は人を殺すことである。
しかし、人間は普通の精神状態では人を殺すことは出来ない。
では、どうやって人を殺すことの出来る優秀な兵士を育てるのか。
それは、女性蔑視を植え付け、それを利用する」と。
例えば、厳しい訓練で根を上げる新兵に対して、上官は
「それでも男か!へなちょこ女め」とののしり、
「お母さんのオッパイを飲みに、国に帰るか?」とあざけり笑う。
特に有効なのは、「兵士のなかにある母親への尊敬の念を叩き潰すことだ」という。
軍隊もののテレビドラマや映画には、
よく兵士たちが隊列を組んで駆け足で行進するシーンが登場するが、
そのとき指揮官のかけ声に呼応してリズミカルに発しているあのことばには、
聞くに堪えないような女性への侮辱的なことばが並べられているのだそうだ。
このようにして兵士の中に徹底的に植え付けられる女性蔑視は、
考える間もなく条件反射で瞬時に身体が動くよう仕組まれていく。
戦場では強くなければ生き残れない。
自分が強い兵士である証明の一つが、力の弱い女性を強姦することへと繋がっていく。
元海兵隊員で後に平和の語り部として活動したアレン・ネルソンさんも繰り返し語っている。
『来る日も来る日も「いかに殺すか」を学ぶ。
訓練が終わると、夜は街に繰り出す。目的は三つ。酒と喧嘩と女。
タクシーを使って基地に帰ってくるとき、代金は払わない。運転手が要求すると殴り倒す。
女性を訪ねてサービスを受けたあと、やはり「金は払わん」と言う。
それでも請求すると、タクシー運転手と同じ目に遭う。
皆さんは「そんなムチャな」と思うかも知れない。
しかし忘れないで下さい。
私たちは毎日「殺し」という暴力を、徹底的に叩き込まれているのです。
その兵士たちが街に出るとき暴力だけを基地に残しておくということはできません。
兵士とともに「暴力」が街を横行するのです。
不祥事が起こるたびに司令官は、周辺住民に「謝罪声明」を出します。
でも司令官の胸の内はどうだかわかりません。
「この新兵どもも暴力性がようやく身についてきたな。いよいよ本物になってきた。
戦場で使いものになるぞ!」と、ご満悦かもしれないのです』
これは、ベトナム戦争の頃の話だが、いまも全く変わっていないことを、
今回の事件は教えてくれる。
まさに兵士による女性への強姦、性暴力は、
暗黙の了解として彼らの任務の一つに組み込まれているといっても過言ではない。
オスプレーの強行配備も問題の根っこは同じだ。
作られた差別、さらにその差別を利用して戦争が生み出され遂行されていく
意図的なしくみがある。
抗議集会で誰かが言っていた。「オスプレーが空飛ぶ凶器なら、米軍兵士は、歩く凶器だ!」
これは比喩でも何でもない。事実である。
米兵による女性への強姦、性暴力の再発防止策は、唯一「基地撤去、軍隊の撤退」以外にない。
その道筋を、私たちは今度こそ見つけなければならない。
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