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熊本・大分大地震の報道から消された中央構造線と原発の危険性!安倍政権の「虎の威を借る独裁」を敷くNHK籾井会長 2016/04/30
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/300266
2016.5.1 佐々木隼也 IWJ Independent Web Journal
籾井会長の「独裁」が止まらない。2016年4月14日から始まった熊本・大分大地震について、20日のNHK内部の会議で「原発については、住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えることを続けてほしい」と指示していたことが発覚した籾井勝人会長。26日には、「いろいろある専門家の見解を伝えても、いたずらに不安をかき立てる」などとも発言していたことが明らかになった。
26日の衆議院総務委員会で、公式発表とは何を指すのかと問われた籾井会長は、気象庁や原子力規制委員会、九州電力が発表しているものをあげた。この籾井会長の一連の指示・発言が、国民の安全・命・経済に与える影響は重大だ。
■鹿児島県の震度を不自然に地図からカット!川内原発の危険性に触れないNHK
例えば今回の地震によって脱線し、機能不全に陥った九州新幹線の問題。2015年に再稼働した鹿児島県の川内原発の避難計画には、この九州新幹線による避難が組み込まれている。だが今回、地震によって九州新幹線が機能しないことが判明したことで、メディアは当然、避難計画の不備や見直し論に言及しなければならないはずだ。
また川内原発について九州電力は、当初計画していた免震棟の新設を白紙撤回している。免震棟などの災害時の対策拠点は、対策にあたる作業員を地震や放射能から守り、休息や補給、指揮系統の「コア」となる施設だ。福島第一原発事故では、泉田裕彦・新潟県知事の要請で柏崎刈羽原発内に免震重要棟を設置させたことを受け、福島原発にも、ということで、事故の8カ月前に完成した免震棟の存在が、東日本の壊滅という「最悪の事態」を間一髪で防いだ。必要不可欠な免震棟を排除したまま稼動している川内原発の危険性を、今こそメディアは指摘しなければならない。
しかし、NHKの放送を観る限り、そうした報道は皆無だ。それどころか、14日の地震発生直後、NHKの地震速報は、なんと川内原発のある鹿児島県を、九州一帯の震度を伝える地図から不自然にカットしたのだ。
▲鹿児島県が不自然にカットされたNHK地震速報。その後も鹿児島県は切り離されたまま、放送が続いている
IWJがNHKにこの件について問い合わせると、広報担当者は「特に意味はありません」と回答した。しかし、この地図はあまりにおかしい。熊本県から離れた四国の愛媛県や本州の山口県の震度は表示して、隣県である鹿児島県の震度を伝えない、などということがあり得るだろうか。震度が観測されなかったということならまだ分かるが、この時、鹿児島県でも震度3から4を記録している。
あえて鹿児島県を不自然にカットすることで、視聴者に「川内原発の近くでも揺れが観測させた」という事実をできるだけ気付かせまい、とする意図が垣間見える。このNHKの異常な報道姿勢が、冒頭に紹介した「原発については、住民の不安をいたずらにかき立てないよう」という籾井会長指示の賜物なのだろうか。しかもこの地図画像では、「鹿児島県内で震度3から4」という籾井会長が「ベースにする」としてあげたはずの気象庁発表すら「切除」している徹底ぶりだ。
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http://iwj.co.jp/wj/open/archives/298755
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■「中央構造線」の存在を黙殺!国の原発再稼働方針を後押しする籾井氏の「虎の威を借る独裁」
また報道から「切除」されたのはこれだけではない。今回の大地震否が応でも注目せざるを得ない、日本最大の断層系「中央構造線」の存在だ。
▲中央構造線(赤線)
今回の地震は、熊本の「布田川・日奈久断層帯」や大分の「別府―万年山断層帯」など、中央構造線の延長線上で起きたと指摘する専門家もいる。震源が同時多発的に点在し、徐々に移動するという、気象庁も「過去に例がない」「今後どうなるか分からない」と困惑するほど前代未聞の事態だ。中央構造線に沿って、今後、九州南部や四国、さらには本州でも大地震が発生する可能性についても、メディアは取材し、検証解析していかなければならないはずである。しかし、NHKを観る限りそうした報道は一切ない。
あるのは、原子力規制委員会が発表する「(川内原発の)運転を続けても問題ない」といった、「公式発表」の垂れ流しばかりだ。
なぜ中央構造線の問題に触れようとしないのか。それは、中央構造線の延長線上には来年7月に再稼働を目指す愛媛県の伊方原発があり、延長線上の近くに川内原発があるからではないか。
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もし、九州新幹線の問題や、川内原発の免震棟の白紙撤回の問題、中央構造線の問題に触れてしまえば、川内原発について「避難計画に不備なし」「安全性はほぼ最高レベルに近い」とした原子力規制委員会や、それを受けて再稼働を決めた安倍政権の判断にも当然、斬り込まなければならなくなる。安倍政権が前のめりで進める原発再稼働に水を差すような取材・報道はしない——籾井会長の姿勢は徹底している。
・2014/07/16 川内原発の安全性「ほぼ最高レベルに近いと思っています」〜田中俊一原子力規制委員長定例会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/154240
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就任会見で「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」などと言い放ち、安倍総理という強力な後ろ盾のもとに、「虎の威を借る独裁」を敷いてきた籾井会長の本領発揮と言える。
■「事実は独自取材のなかで見出される」NHK内部から異例の批判!
今回の地震をめぐる籾井会長の指示に、NHK内部からやっと批判の声があがった。NHK職員で構成される日本放送労働組合の中村正敏委員長は25日、「組合の見解」として近年の籾井体制のNHKに対する危惧を発表した。
▲日本放送労働組合HP
「もし行政の判断や活動に問題がある場合には、批判をするのも当然の役割である。NHKや取材者の名誉や利益のためではなく、民主主義社会において、国を、社会を強靭にしていくために必要なことだ。こうした役割は、あくまで、私たちが取材した事実や事実関係に基づいておこなわれなければならない」
公共放送の当然の使命を提示したうえで、見解は次のように続く。
「こうした役割は、あくまで、私たちが取材した事実や事実関係に基づいておこなわれなければならない。行政が何事かを発表し、あるいは認定した時点で『事実』が確定するのではなく、『事実』はNHK独自の取材活動のなかで見出されるものだ」
報道に関わる人間として極めて真っ当な認識だろう。特に、国や自治体、スポンサーなどから予算が出る民放各局とは違い、国民一人ひとりから直接「受信料」を徴収するNHKにこそ、国からの自立性や独立性が求められる。
そして見解は、「以上は、ひと昔まえなら、無用のこととして、書くまでもないことだった」としたうえで、籾井会長への批判へと続く。
「それを書かなければならない、マスコミのあり方に強い批判的な先入観が広まっているメディアを取り巻く現状があることも認識しているし、強い危惧を覚えてもいる。そして、そうした世の中で、公共放送のあり方に議論を呼ぶかのような報道や報道のもととなるような出来事がここ数年相次いでいる」
「NHKの現場は、自分の主義主張を番組に反映させることもないし、結論ありきで取材に臨むわけでもない。人々の不安に訴えればメディアとしては視聴者をつかむことができるかもしれないが、そんなことを決してしないのが、受信料制度に支えられた公共放送である」
【「委員長見解」全文はこちら】
http://www.nipporo.com/messages.html
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NHK内部からここまでの、批判と危惧の声があがるのは異例である。この程度の批判の声をあげるのが「異例」なほど、当たり前の声をあげられないのが、NHKであるともいえる。「本来書くまでもないこと」をあえて書かなければならないほど酷い、籾井会長の独裁は、見解にあるように、今回の地震に関する指示だけではない。ここ最近、その独裁体制にさらに拍車がかかっているのだ。
■まさに「粛正人事」!意に沿わぬ幹部を次々閑職送りに!疑問を呈した経営委員も退任
安倍政権の「お友達」として送り込まれた籾井会長は、その強力なバックのもと、会長就任後すぐに理事全員に日付のない辞表を提出させ、人事の掌握をはかったことで有名だ。それ以降、籾井会長(つまり安倍政権)の意に沿わない者、不評を買った者はことごとく排除されてきた。
そんな「粛正」がここへきて加速している。来年1月に予定されている「経営委員会による会長選任」を前に、会長周辺の役員・幹部を刷新する大胆人事を行っているのだ。
理事日付のない辞表を提出させた問題で国会に呼ばれた際、「コメントを控える」とシラを切った籾井会長の意に反し、同じ場で辞表提出の事実を証言した塚田祐之、吉国浩二両専務理事も、今年2月17日に退任となっている。塚田、吉国両理事は国会での証言以降、籾井会長の怒りを買ったのか、2人は任期中に2度も辞任を迫られ、それを拒否すると、2人とも(受信料徴収率80%を目指す)「ターゲット80プロジェクト」という閑職に追いやられていた。
またこの2人の退任が発表された経営委員会で、こうした籾井会長の人事方針に唯一疑問を呈した美馬のゆり委員(公立はこだて未来大学システム情報科学部教授)も、4月19日、浜田健一郎委員長を含む3人の経営委員とともに退任が発表された。
公共放送を「完全にコントロールする」という安倍政権の思惑と、その尖兵となって独裁体制を敷くという籾井会長の二人三脚の努力が実りつつあるように見える。
■「麻生さんの悪口はダメ」NHK会長以前にも放送に圧力をかけていた籾井氏 〜「公共放送」のスタンダードは塗り替えられてしまうのか
「どこの独裁国の宣伝相か」と言いたくなるほどの籾井会長だが、その安倍政権べったりの姿勢は、NHK会長になる前から発揮されていた。
それを暴露したのは、今年3月末に『NEWS23』のアンカーを降板した、岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員)だ。岸井氏は「週刊文春」4月21日号での対談で、BS-TBSで放送されていた『われらの時代』(2009年〜2012年)で麻生太郎氏の批判を展開した際に、当時番組スポンサー・日本ユニシスの社長だった籾井氏が乗り込んできて、「岸井さん、麻生さんの悪口は一言もダメです」と圧力をかけてきた事実を明かしたのだ。
▲岸井成格氏
・「これは政治権力とメディアの戦争だ!」 田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、青木理氏、大谷昭宏氏らテレビ関係者が高市総務相「停波」発言に怒りの抗議会見!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/289637
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籾井氏の実家である福岡の籾井鉱業が、麻生氏の実家である同じく福岡の麻生鉱業の「弟分」であったことから、「どんなことがあっても悪く言ってはいけないという仁義」があったのだろうと岸井氏は語っている。
出自から、今の安倍政権とズブズブの関係だった籾井氏。自身の利害・権力へのゴマスリを平気で放送に反映させようとするその姿勢は、NHK会長に就任してからも自粛することなく、むしろ強化させているように見える。
安倍政権が参院選後に制定を目論む自民党改憲草案は、第21条「表現の自由」で、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動」を禁じている。今回の地震に関する指示のように、安倍政権の意に沿わない「不都合な事実」を黙殺し、権力におもねる姿勢が、いつのまにか公共放送のスタンダードに成り代わってしまったら、この国の報道の自由、表現の自由は死滅してしまうだろう。
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