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撮影:常井健一
「安倍総理は強引」「進次郎には資質がある」 小泉純一郎元首相が独白録に込めた怒りと希望
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48042
2016年03月02日(水) 常井健一 現代ビジネス
■独占インタビューの舞台裏
「安倍さんは全部強引、先急いでいるね」「進次郎が総理になる資質、他の議員に比べればあるよ」
豪放直言。小泉純一郎元首相(74)の独白本が発売され話題を集めている。長時間の取材には一切応じなかった小泉氏が、なぜいま口を開いたのか。その舞台裏と、小泉氏が内に燃やす「野心」について、インタビュアーとなったノンフィクションライターの常井健一氏が明かす。
政界引退後もなお、その記憶が語り継がれ、人気の衰えを知らぬ小泉純一郎元総理(74)。総理退任から10年という節目に初のロングインタビューに応じ、無名のフリーライターである筆者の質問に4時間半にわたって真摯に答えた。その記録をまとめたのが、2月25日に上梓した『小泉純一郎独白』(文藝春秋社刊)だ。
筆者(36)は、2012年末、人気・知名度の割にメディア露出が極めて少ない政治家・小泉進次郎(34)に興味を持ち、全国各地で密着取材を始めた。以来3年間、街頭演説や講演、視察、党内活動、地元回りなど、彼の肉声を拾った機会は全国300か所以上にも及ぶ。
小泉進次郎氏を追えば追うほど、方々で「原発ゼロ」を明確に訴える父・純一郎氏と、「誰もが原発なしを望んでいる」と議論の必要性を訴えながら、いまいち歯切れの悪い進次郎氏との違いが気になっていた。そこで筆者は思い切って純一郎氏に取材を申し込んでみた。
今回のインタビューを実現するのに、なにか秘策があったわけではない。筆者はこれまで進次郎氏の取材でも同氏の事務所から便宜供与を受けたことはないし、純一郎氏につながる特別なコネクションを持っているわけではない。
取材を申し込む際にいつも使う「銀座 伊東屋」の便箋7枚に、思いを込めて手紙を書いただけだ。純一郎氏本人から筆者の携帯に電話があったのは、その11日後のことだ。
■溢れる「現役感」
ウラもオモテもない。それが、すべてだった。
沈黙を守り続ける大物の独占インタビューというものは、概して、受ける側に何かメリットがあるから受けるものだ。主導権も受け手側が握ることになる。そう考えると、純一郎氏にも彼なりの目論見があったのだと思う。
1つ目は、「原発ゼロ」についての主張を保守論壇で展開したかった、ということ。リベラルな新聞社や出版社の媒体に掲載したのでは、もともと支持しているような人たち以外に広がりにくい。そこで『文藝春秋』という保守系の雑誌に載ることに意味がある。純一郎氏が電話で「インタビュー、受けるよ」と言った後、すぐに掲載媒体について確認された覚えがある。
2つ目は、正月号に載せたかったということ。月刊誌や週刊誌は、正月号の第一特集が一番読まれるものだ。普段雑誌を買わない人も帰省の移動中などに買ってくれる。
インタビューを始める前に、純一郎氏から「何月号に載せるの?」と聞かれ、「11月発売号です」と答えると、「もっと練ったほうがいいよ」と言われた。結局正月号に載せることになったが、結果として世の注目も集まり、朝日、毎日、読売の論壇面でもこの記事が取り上げられることになった。
3つ目は、筆者がフリーランスだったから。小泉純一郎という政治家は、昔から雑誌やスポーツ紙にも自分の意見が載ることを重んじる人だった。支持の裾野がより広がるから、ということだろうです。今回も、「若い無名のライターに、オープンに書かせる」というのは、ある種の小泉流のイメージ戦略でもあったと思う。
4時間半にわたった独占インタビュー。そのすべてがここに収められている
インタビューの会場となったのは、東京・赤坂にある小料理店「津やま」。政財界の重鎮や大物芸能人がこよなく愛する名店だが、小泉氏にとっては政治の師・福田赳夫に紹介されて以来、40年以上も晩酌をしに通う台所≠ナある。筆者が約束の10分前に到着すると、純一郎氏はすでに一人で待ち構えていた。
初対面にもかかわらず非常にざっくばらんで、何を聞いても包み隠さず話してくれたのが印象的だった。まず、緊張する筆者に対し、「あなたの書いた進次郎の本読んだよ。あれほど取材しているのは強いよ」とねぎらいの声をかけてくれた。
おそらく多くの読者は街頭で大声を張り上げる純一郎氏のイメージが強いと思うが、実際の声は、思いのほか小さい。取材用のボイスレコーダーにきちんと収まっているのか、終始心配せずにはいられなかったほどだ。
郵政解散の時、記者会見に臨む前に参加した経団連の奥田碩会長(当時)との会合で、日本酒を二合飲んだという逸話を明かした際に、「酒と女は二ゴウまで」という言葉がふっと出てきたり、趣味の短歌を幾つも披露したり、ユーモアとサービス精神も感じられた。
また、「発表する前に原稿をチェックさせて」などと、三流政治家が我が物顔で注文してきそうな野暮なことは一切言わない。筆者も、彼の発言をまとめた原稿を事前確認ナシで「文藝春秋」新年号に掲載した。
今回の書籍にあたっても、純一郎氏から電話がかかってきた際に「書籍にします」と切り出すと、「あぁ、いいよ。常井さんの名前で書くなら。お好きに出してください」という明快で歯切れの良い返事をもらった。筆者は、今回の仕事を通じて、現職時代の「小泉純一郎にオフレコなし」という評判は本当だったのだと痛感した。それぐらい「現役感」が溢れている。
■父が語った「政治家・小泉進次郎」
拙著のキモは、異例の本人取材で明らかになった純一郎氏と、かつて自身が後継指名した安倍晋三氏との違いである。
先述のように、小泉政権時代には純一郎氏に厳しい目を向ける雑誌記者やフリーランスにもきめ細かく対応をしていたが、安倍政権の場合は、総理を中心にフジサンケイグループなど比較的思想の近いメディアに露出する傾向がある。さらに野党や反対派の異論に対しても、二人の対応は実は大きく異なる。
純一郎氏は安保法制や憲法改正などを例示し、「安倍さんは全部強引、なんか先急いでいるね」と批判するなど、本書の中で「総理大臣とはどうあるべきか」を饒舌に語っている。ただ、そんな中でも「総理大臣」という職務に対する「敬意」は強く感じた。それは年下で派閥の後輩でもある安倍首相のことを一度も呼び捨てにせず、「総理」と呼び続けたことに端的に表れている。
先ほど、インタビューは受け手が主導権を握るものと書いた。しかし、こちらも政治家の言いなりになるわけではない。純一郎氏に宛てた依頼の手紙には「原発ゼロの主張についてお聞きしたい」と書いたが、その話は1時間ほどで切り上げ、残りは政治家・小泉純一郎の頭の中をのぞき込むような質問に徹した。
自身の政治遍歴、塩川正十郎氏や綿貫民輔氏との交遊、小沢一郎氏との知られざる接点、二人の息子たちや今の暮らしぶりなど、これまでベールに包まれていて、読者の関心が高そうな話も聞き出せたのではないかなと思っている。
純一郎氏は、「郵政民営化は田中政治を潰す、経世会を倒すためにやったという意識はなかったよ」などと、これまで歴史家や評論家の間で定説とされてきた解釈を次々と否定し、本人の口からまったく別の意図を話した。手前味噌になるが、そういう意味では日本政治史の定説を覆す野心的なロングインタビューという位置づけにもなったのではなかろうか。
また、人気俳優へと成長した長男・孝太郎氏や、各種世論調査で常に「総理にしたい人」のトップクラスに名が挙がる次男・進次郎氏を振るたび、目を細くして嬉しそうに語っていた。4時間半にも及ぶ取材が終わる頃、純一郎氏の顔はすっかり「父」の顔になっていた。
特に、進次郎氏については筆者が批判的な質問をいろんな方向から投げても、純一郎氏は全面的に擁護し、「進次郎には総理の資質、他の議員に比べればあるよ」と断言した。
今回、純一郎氏の取材を通して気づいたのは、進次郎氏が取り組んでいる政策には、小泉構造改革でやり残した課題が多いということだ。一つは社会保障や雇用・教育のあり方、一つは農林中金のあり方を含む農協改革や第一次産業についての課題、一つは電力自由化に関連するエネルギーのあり方である。
最近、進次郎氏は「2020年以降は日本の第二創業期だ」と言い始めているが、筆者はそれを「第二の小泉構造改革の始まり」と解釈している。
では、原発ゼロ社会実現という主張は、親から子に引き継がれるのだろうか。純一郎氏は「それは自分で決めるもんだよ」と言っていたが、3か月にわたって純一郎氏の講演行脚を密着してきた中で見えてきた原発ゼロへの「ロードマップ」については、本書の中に詳しく示しておいた。ぜひご一読いただきたい。
■小泉純一郎の「これから」
純一郎氏は現在74歳。古希を超える人物のインタビューとなると、普通はタイトルのどこかに「遺言」の2文字が躍るものだが、そんな気が微塵も湧いてこないほど、同氏には生気が漲っていた。
筆者が純一郎氏と最後に話したのは昨年末。「これからも原発ゼロ、まだ訴え続けていきますから。よろしく」と彼は最後に言っていた。私はこれまで多くの政治家にインタビューしてきたが、これほどのエネルギーを有する政治家は現職でも知らない。
この3月にも福島で講演活動をするなど、血気盛んな青年代議士のように全国を飛び回る純一郎氏を見ていると、近い将来、彼の中でマグマが抑えきれなくなり、隠居生活をやめて表舞台に出てくる可能性は否定できないような気がしている。
「人生の本舞台は常に将来に在り」。これは純一郎氏がいつも講演の締めに使う尾崎行雄の言葉である。純一郎氏の「本舞台」の胎動をぜひ本書から感じ取ってもらいたい。
常井健一(とこい・けんいち)ノンフィクションライター。1979年茨城県生まれ。朝日新聞出版入社後、『AERA』で政界取材を担当。退社後、オーストラリア国立大学客員研究員。2012年末からフリー。著書に『小泉進次郎の闘う言葉』『保守の肖像 自民党総裁六十年史』など
豪放直言。小泉氏初の独白録
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