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シドロモドロ(C)日刊ゲンダイ
甘利大臣は辞任秒読み 安倍内閣を待つ一蓮托生崩壊
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/173796
2016年1月20日 日刊ゲンダイ
こりゃ、完全にアウトだろう。
21日発売の週刊文春が報じた甘利経済再生相の金銭大醜聞だ。甘利の事務所がトラブル解決の口利きの見返りに1200万円もの“賄賂”を受け取っていたというもので業者の人間が実名告発しているだけでなく、秘書との現金授受の場面もバッチリ写真に撮られ掲載されている。甘利本人も直接カネをもらっているといい、大臣辞任どころか議員辞職、逮捕されてもおかしくない内容だ。
さっそく、21日の参院決算委員会で追及されたが、甘利はシドロモドロ、何一つマトモに答えられなかった。
文春によると、2013年5月、千葉県内の建設会社の総務担当者が、独立行政法人都市再生機構(UR)とのトラブル処理を甘利事務所に依頼。決着した謝礼として甘利の秘書に500万円、甘利本人に50万円を手渡した。一部は政治資金収支報告書への記載がないという。
さらに、秘書らはこの関係者に“タカる”ように、キャバクラやフィリピンパブなどで豪遊。こうした接待なども含めれば“賄賂”総額は1200万円に及ぶという。口を利いてもらった建設会社は、URから約2億2000万円の補償金を受け取った。これらは、あっせん利得処罰法違反や政治資金規正法違反にあたり、立派な犯罪だ。
文春には、甘利本人が告発者とガッチリ握手している写真や、秘書がニタニタしながら現金を受け取っている写真、さらには甘利事務所が出した手書きの領収書も掲載されている。事実を裏付けるメモや録音データも残っているという。もはや言い逃れはムリだろう。
■新年度予算審議入りの最悪タイミング
甘利は20日の会見で「私自身は国民から後ろ指をさされる行動を取ったことはない」「調査した上で、説明責任を果たしたい」と平静を装ったが、動揺は隠せなかった。それもそのハズで、週刊誌の発売日前日にもかかわらず、テレビは20日からこのニュースを大々的に扱っている。これは異例のことであり、それだけ致命的、決定的醜聞だと判断したからに他ならない。
本人にもその自覚はある。
「16日に文春に直撃された甘利さんは、17、18日の2日間で記事をもみ消そうと奔走したようです。しかし、手に負えず、19日に官邸に駆け込んだ。党幹部らが対応策を協議し、『もう閣僚辞任しかないか』という話にもなった。本人も腹を決めて、大臣を辞任しようとしたが、官邸がそれを押し戻したらしい。官邸は『十分に説明すれば乗り切れる。甘利さんはダボス会議で間もなく海外出張するので、行ってしまえば何とかなる』と甘く考えていたようです」(自民党関係者)
このタイミングでの甘利のスキャンダルは、安倍政権にとって痛すぎる。
今国会は22日、安倍首相の施政方針演説が行われ、新年度予算案の審議に入る。経済担当の甘利はそのキーパーソンのひとりであり、重要法案のTPP関連法案の責任者だ。頻繁に答弁に立つことになるが、カネの問題を追及され、予算やTPPの審議が滞るのは間違いない。野党はこの問題をガンガン攻めるつもりで、参考人招致や証人喚問に進展する可能性もある。
民主党の枝野幸男幹事長は20日の会見で「相当深刻な問題を抱えているという認識だ。本人を厳しく問いたださないといけない」と語り、21日から始まる参院決算委員会などで取り上げる方針を明らかにした。共産党の穀田恵二国対委員長は安倍首相の任命責任を問題視し、「真相について解明が求められている。内閣の長たる者の責任をはっきりさせる必要がある」と述べた。
菅官房長官は「一般論として疑惑を持たれれば、政治家自らが真摯に説明する必要がある」としている。
「7月に参院選があるし、その前の5月は日本が議長国となるサミットがある。事実上、審議はGW前までになるので日程がキツイ。そのために今国会は政府提出法案を過去最少の55本に抑えたほどです。甘利さんへの追及や審議ストップで時間を取られたら綱渡りの日程になってしまう……」(官邸事情通)
安倍のイライラは頂点だろう。
首相を取り巻く環境のすべてが逆回転してきた
ドミノ辞任に発展か(島尻沖縄担当相と高木復興相)/(C)日刊ゲンダイ
それにしても、政権中枢の重要閣僚がよくもまあ、こんな分かりやすい典型的なワイロをもらったものだ。文春によれば、謝礼のカネは「大臣室でとらやの羊羹と一緒に封筒に入れて手渡された」というから、ひと昔前の疑獄事件を思わせるヤリ方だ。
「甘利さんはもともとは山崎拓さんの派閥でしたが、石原伸晃さんとの“跡目争い”に負けて離脱した。その際、自らのグループをつくろうと動き、カネ集めに奔走していました。ですから甘利事務所はカネに対する嗅覚がある。甘利さんは次は幹事長を目指しているようなので、まだまだカネや人脈が必要だったのでしょう。もともと古いタイプの政治家です」(自民党関係者)
実名告発した建設会社の総務担当者は20日、「私がURとの補償交渉で甘利事務所に口利きを依頼し、計1200万円を渡した。裏付けるメモや録音データが残っている」とあらためてコメントを出している。覚悟の告発ということだ。
今後、警察や検察も動き出すだろう。もはや甘利は逃げられない。
■「潮目が変わってきた」
この甘利スキャンダルは安倍政権の終わりの始まりだ。
まず、閣僚のドミノ辞任が再び現実のものとなる。甘利が辞めれば、下着ドロの過去を報じられた“パンツ大臣”高木毅復興相やカレンダー問題で公選法違反の疑いが持たれている島尻安伊子沖縄担当相への追及も再び強まり、ただではすまなくなる。
第1次安倍政権では、閣僚の不祥事が相次ぎ、07年参院選で大敗した。この夏の参院選もあの時の再現になるんじゃないか。
それでなくても、安倍政権を取り巻く環境は、年明けから昨年とは様相がガラリと変わってきている。
その筆頭がアベノミクスのインチキを隠してきた株価だ。中国経済の低迷や中東の緊張、原油安を背景に未曽有の世界恐慌に突入し、日経平均株価は年初から2500円以上も下げ、昨年来安値を更新中。
為替相場も、きのうロンドン市場で1ドル=115円を付けた。円高傾向に歯止めがかからなくなってきて、頼みの大企業の業績も先行き不透明感が漂う。
「経済、経済、経済」で参院選まで高支持率を維持しようと考えていた安倍のシナリオは、ガタガタと崩れている。そこにもってきて、政権発足から3年間にわたって最側近として支えてきた最重要閣僚が辞任必至なのだから、安倍政権そのものにも大打撃、一蓮托生で崩壊が始まることになる。
政治評論家の野上忠興氏がこう言う。
「参院選に向けて、『3分の2の勢力で改憲する』と強い姿勢を見せたりしていますが、株価の暴落に看板閣僚の醜聞と、すべてが逆回転してきました。こうなると体調不安も重なり、今後、どうなるかわかりませんよ。潮目が変わってきました」
驕れるもの久しからず、だ。
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