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「朝三暮四」を思わせるちぐはぐさに、効果を疑問視する声が出ている(※イメージ)
政府が1100万人に3万円支給 「選挙前のバラマキ」と批判の声〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160120-00000003-sasahi-pol
AERA 2016年1月18日号より抜粋
政府は今年度の補正予算案に、安倍首相の肝いりで、年金額が比較的低い高齢者に3万円を配ることを盛り込んだ。消費を刺激して「1億総活躍社会」を実現するというが、高齢者向けの施策は負担増や給付減が続いている。「朝三暮四」を思わせるちぐはぐさに、効果を疑問視する声が出ている。
今回の補正予算案は、住民税が課税されていない65歳以上の約1100万人に、参院選前に「臨時福祉給付金」として3万円を支給するという。
実は、消費増税対策には税率10%を想定した「年金生活者支援給付金」もある。国の年金を含めた所得が基礎年金の満額(年間77万円)以下の人に月5千円が支給され、年間87万円までは総所得の逆転が起きないよう、所得に応じて少しずつ少なくなる給付がある。対象者は計約600万人だ。
今回の臨時給付金は、消費増税が2017年4月になったことで先送りされたこの制度を、安倍首相の意向で前倒しで実施するものとされる。現役世代の賃金上昇から取り残された年金受給者に支給することで景気刺激になるのだそうだ。
しかし、対象者は約1100万人と約500万人も多い。住民税の非課税世帯が対象のためだ。その年収の目安は、65歳以上の1人世帯だと年金収入などが155万円程度、夫婦2人世帯だと211万円程度までに上がる。
さらに毎月ではなく、「ワンショット(1回限り)」(厚生労働省)で3万円が配られ、所得逆転を防ぐ調整もない。
それだけに「場当たり的な対策で、夏の参院選前に配ることを優先したバラマキだ」という批判の声が出ている。
そもそも、年金生活が苦しくなったのは消費税率が上がって生活費が増えたのに、その分は年金額が増えない「マクロ経済スライド」のためだ。この仕組みは少子高齢化で悪化する年金財政を立て直すために04年に導入されたが、デフレのために封印されてきた。本来、年金額は物価に応じて変わるが、それをストップする仕組みだ。14年の消費増税などで物価は2.7%上がったのに、15年度の年金額はマクロスライドで0.9%しか増えていない。
マクロスライドは年金額の多寡に関係なく一律で適用される。その結果、基礎年金で買えるものは最終的に3〜4割も減る。このため、年金の専門家の間には「基礎年金にマクロスライドを適用すべきではない」という意見も強い。ところが政府は、年金制度を見直さず、「朝三暮四」の故事さながらに税金からの給付金を用意した。
年金以外でも高齢者の生活は圧迫されている。医療や介護の保険料は上がり、サービスを使う時の窓口負担は増えた。特別養護老人ホームの利用料は、住民税非課税でも貯蓄が一定以上ある人は値上げされた。
こうした「老人地獄」はそのままで、選挙前に大盤振る舞いしても将来不安が減りはしない。
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