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NHKの1日の番組制作費は15億円、先進資本主義国の中でも異質なメディア企業の巨大化、それがもたらす世論誘導と政府広報化の悲劇
http://www.kokusyo.jp/mass_media/9434/
2016年01月18日 MEDIA KOKUSYO
ジャーナリストの林克明氏らが主催する「草の実アカデミー」で16日、立教大学の砂川浩慶準教授が講演した。タイトルは、「NHKとは何か、そして抱える問題は?」。NHKについての概論で、配布された資料の中に、興味深いものがあった。その資料の題名は、「NHK予算審議の経緯」である。
これはNHK予算を審議する際に、どの政党が予算案に反対し、どの政党が賛成したかを年度ごとに記録したものである。対象は、1951年から2015年までの期間である。
この資料を見ると、NHK予算は、ほとんどの年度で「全会一致」により通過していることが分かる。たとえば最近の状況を見ると、2014年度と2015年度は、野党側が反対しているものの、2007年から2013年までは、いずれも全会一致で予算案が承認されている。
■「NHK予算審議の経緯」
http://www.kokusyo.jp/wp-content/uploads/2016/01/mdk160118a.pdf
また、別の資料によると、2016年度のNHK予算は7016億円(事業収入、2016年1月12日に総務省へ提出)である。このうち番組制作・放出費は5,581億円。これを一日に使う番組制作費に換算すると、なんど15.29億円になる。世界最大の規模である。
もちろんNHKの財源の大半は受信料であるが、このような大規模な放送局の存在を国が承認して、疑問を提起する国会議員がほとんどいないのである。
以下、わたしの考えである。
◇放送局と新聞社−いずれも世界一の規模
わたしは日本の新聞社が世界の中で、飛び抜けて大きな経営規模を誇っている事実を、繰り返し問題視してきたが、NHKが世界最大規模の放送局であることは認識していなかった。
日本の新聞社、とくに中央紙が先進資本主義国の中では、際だって経営規模が大ききことは容易に確認できる。たとえば世界の主要紙の発行部数が、大半は100万部以下であるのに対して、日本の場合は、読売が900万部、朝日は600万部、毎日が300万部もある。たとえ「押し紙」で公称部数を偽っているとしても、経営規模が欧米の新聞社と比較にならなほど大きいことは確かである。
一方、放送局に関して言えば、既に述べたようにNHKは世界最大の規模を誇る。民間放送局に関しては、データを持っていないので比較できないが、大半の放送局が、新聞社と系列関係にあることを踏まえると、これも相当大きな経営規模と推測される。
つまり日本では、新聞社もテレビ局も、その経営規模が世界の常識から著しく突出して大きいと推測してもよさそうである。第三世界の国々を含め、世界の常識からすば、ありえない経営規模ということになりそうだ。当然、給与も破格の額になり、それをリスクにかけて内部から反旗を翻すひともいない。
◇日本社会の第3の異質性
日本の資本主義は、欧米に比べると、明らかに異質なものがある。たとえば、
アーミテージやジョセフ・ナイらの指示を受けて自衛隊の再編を決めるなど、奴隷なみのな対米従属ぶりである。大企業を最優先する政策によって生み出された経済を中心とした価値観である。これら2つの問題点は識者によりすでに繰り返し指摘され、周知になっているが、歴史的にも、旧ソ連のプラウダの例を除いて前例がないメディアの異常はほとんど指摘されていない。
それはメディア企業があまりにも巨大化しすぎて、しかも、権力構造の一部にがっちりと組み込まれているために、それを切り崩そうとする行為が、自滅を招きかねないという警戒心があるからだ。
大学の教員が、新聞・テレビの巨大化を問題視する観点から講義を続けたならば、学生はメディア企業に就職できなくなる可能性がある。ジャーナリストが同じ視点から、メディア批判を展開すれば、原稿の発表媒体そのものを奪われかなない。
つまり学術という観点からも、ジャーナリズムという観点からも、メディア企業に対する監視ができなくなっているのだ。これは日本のメディアの最も著しい特徴である。もっと広い視野でみると、対米従属と大企業優先という日本社会の2つの異質点と並ぶ第3の異質点でもある。
◇新聞社を解体しなかったGHQ
改めていうまでもなく、メディアを権力構造に巻き込んた要因は、政策による経営面への介入である。その具体的な中身は、新聞社の場合は、軽減税率の適用であり、再販制度であり、記者クラブ制度の温存である。また、「押し紙」問題の放置していることも、両者の癒着関係の温床となっている。
GHQは戦後、新聞社の戦争責任を追及して、組織を解体することもできたが、あえてそのまま残したのである。世論誘導の道具として利用できると読んだ結果ではないだろうか?
記者が無能だからメディアが堕落したのではない。ジャーナリズムの役割を果たせない客観的な要因があるからだ。
◇世論誘導と政府広報化の悲劇
NHKの番組は、確かに非正規労働者の貧困や福祉の切り捨てなどの社会問題を報道するが、なぜ、こんな悲劇が起こっているかは、絶対に伝えない。新自由主義という国の政策と悲劇がどうかかわっているかは、絶対に見えてこない。
巨大メディアが果たしている負の役割は、われわれが想像している以上に大きい。日本社会の異常のひとつとして、新聞・テレビの巨大化を認識すべきだろう。この体制を崩さない限り、日本は絶対に泥沼から脱することはできない。世論誘導ほどやっかいなものはないのだ。
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