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慰安婦問題合意の非民主性を見事に喝破したトロント大学教授
http://new-party-9.net/archives/3227
2016年1月14日 天木直人のブログ 新党憲法9条
慰安婦問題をめぐる今度の合意は、冷え切った安倍首相の日本と朴大統領の韓国との関係があまりにも行き詰まっていたため、関係改善の急展開ばかりに目を奪われがちだ。
しかし、合意の背景にあった米国の圧力や、合意そのものの本質が、今も昔も変わらぬ日韓の不平等性の歴史であることについて、わかりやすく説明して国民に教えてくれるものは皆無だ。
そう思っていたら、きょう1月14日の東京新聞紙上で、トロント大学の米山リサさんという教授が見事にその事を喝破していた。
この日韓合意は、当事者不在の国家間処理と言う点で、日韓政府が請求権問題は「完全かつ最終的に解決した」とする協定を結んだ50年前のつまずきの亡霊を見るかのようだと。
この合意は、米国に日本は付き従うという冷戦レジームの温存であり、沖縄の基地問題や、特定秘密保護法、安保関連法強行の延長線上にあるものだと。
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」というが、むしろ戦後の冷戦体制を完成させつつあると。
その通りだ。
そして米山教授はこの事を書かない日本のメディアについてこう批判している。
戦前・戦前の検閲も、「勘ぐれ、おまえ」という自己検閲だった。侵略の過去を振り返らない民主主義は、他社を抹殺する攻撃的なナショナリズムに直結する。ジャーナリズムが見定めるのはその事である、と。
そのメディアに守られて、安倍首相は、国会での攻撃的発言がますますエスカレートしている。
反省のかけらもない首相が、歴史に残る日韓合意を成し遂げたというのなら、これ以上の逆説はない(了)
◇
【言わねばならないこと】 (63)「冷戦体制」の温存 トロント大教授・米山リサさん
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2016011402000209.html
2016年1月14日 東京新聞
安倍晋三首相が昨年四月に米議会で演説し「先の大戦」への反省を表明した。しかし、アジアでの侵略や植民地支配には触れなかった。これは、米国重視、アジア軽視という七十年前の歴史認識と変わらない。
「慰安婦」問題をめぐる年末の「日韓合意」も、当事者不在の国家間処理という点で、日韓政府が請求権問題は「完全かつ最終的に解決した」とする協定を結んだ五十年前の躓(つまず)きの亡霊を見るかのようだ。
米国が中国・ソ連と覇権を争う中で旧植民地支配の仕組みを引き継ぎ、その米国に日本は付き従うという冷戦レジーム(体制)が温存されている。米国は中ソに対抗するために日本の再軍備化を急いだ。日本は核の傘への批判を控え、沖縄には基地という負担を課してきた。米軍と自衛隊の一体化を進める特定秘密保護法や安全保障関連法も、その延長線上にある。首相は「戦後レジームからの脱却」というが、むしろ戦後の冷戦体制を完結させつつある。
今回の日韓合意を米国は高く評価した。米国が日本に和解を勧めるのも、自衛隊に米軍の肩代わりをしてもらうには、アジアの同盟国の理解が必要と考えているからだ。
歴史認識の問題で日本は謝罪の姿勢さえ示せば、和解できるとしてきた。だが、謝罪は一方的に押しつけるものでない。女性国際戦犯法廷(二〇〇〇年)で中国の元慰安婦の女性が「日本に赦(ゆる)しを請うてほしい」と訴えた。日本政府は「赦してくれ」と言ったことはあるのか。
当時、主要メディアは萎縮し、この法廷をほとんど伝えなかった。戦前・戦中の検閲も「勘ぐれ、おまえ」という自己検閲だった。侵略の過去を振り返らない民主主義は、他者を抹殺する攻撃的なナショナリズムに直結する。ジャーナリズムはそこを見定めてほしい。
<よねやま・りさ> 1959年生まれ。トロント大学教授。専門は日米文化研究。著書に「暴力・戦争・リドレス」など。カナダ在住。
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