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トランプが「暗殺」されかねない2つの理由。究極のテールリスク=斎藤満
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2016年11月22日 MONEY VOICE
今回の米国大統領選挙で、米国内のみならず世界は「敵か味方か」で二分してしまいました。さらに「トランプの米国」は、経済・外交政策でも極端な政策を打ち出そうとしているだけに、各方面に様々なリスクを内包しています。今回はその中から「究極のリスク」を選んでご紹介します。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年11月21日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
トランプ暗殺、第2のプラザ合意…究極のリスクは実現化するか
■新大統領を「消したい」人たち
最初は不謹慎ながら「暗殺リスク」です。米国大統領にはこのリスクがつきものですが、トランプ氏の場合は2つのリスクがあります。
1つは、そもそも彼を大統領にしたくなかったグループから狙われるリスク。もう1つは、彼を裏から操ろうとする勢力が、思い通りにならなかった時に「消される」リスクです。
まず前者については、西海岸や東部で連日のようにデモが繰り広げられています。彼らが穏健に進めてくれればよいのですが、何が起きるかわからない面があります。
それよりも怖いのは、「裏の勢力」で、トランプ氏を推す勢力とクリントン氏を推す勢力とに分かれていました。ロンドン勢は好感していますが、NY勢が不満のようです。
反対勢力が実力行使に出る懸念はゼロではありません。彼らはまだあきらめていないとの見方もあります。また、トランプ氏を推した勢力も、彼がパトロンの思惑通りに動かず、トランプ流を押し通そうとすると、これを排除しにかかる可能性があります。
前者が動くとすれば早い時期に、後者はある程度実績を見てからとなります。
暗殺が起きた場合、その時期によって「交代者」が変わります。12月19日に選挙人による投票が行われ、ここでトランプ氏が選ばれると、それ以降に暗殺された場合、ペンス副大統領が大統領になります。
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しかし、選挙人による投票前に暗殺されると、クリントン氏が大統領になります。その場合、ここまで上昇した金利、株、ドルが急落する可能性があります。
■「第2のプラザ合意」リスク
次のリスクは「第2のプラザ合意」がなされる可能性です。
レーガン大統領以来の大幅な財政拡張策が、しかも「完全雇用」に近い経済情勢の下でなされます。これが実施されると、賃金、インフレがFRBの想定以上に高まり、想定以上に大幅な利上げを余儀なくされる可能性があるためです。
当然、その過程でドル高が進み、米国の負担となります。
レーガン政権下でもボルカーFRB議長が高金利政策を余儀なくされ、80年から82年には世界経済を不況に陥れ、さらに85年には「G5」でドルの引き下げを図りました。
当時はプラザ・ホテルが利用されましたが、今回はトランプ・タワー合意になるかもしれません。その際、当時よりも為替市場が大きくなり、「G7合意」で修正できるかどうか、難しい面もあります。
為替が人為的にドル安に動かされると、結果としてまた金融政策も極端に動かねばならない可能性が出てきます。前回はそのために日本では激しい「バブル」が生じました。
また前回は80年から世界不況となりましたが、今回は特に新興国での債務危機、金融危機が誘発される懸念が強く、ベネズエラ、ブラジルなど中南米や、そこに金を出している中国も打撃を受けます。
その際、トランプ氏が「アメリカ第一」を唱え、周辺国への影響を無視する可能性があり、新興国危機や世界経済悪化の兆候が出ても、米国がそれを見て早めに修正する可能性は高くありません。これも懸念材料です。
■米国による「双子の赤字減らし」という究極リスク
そして3つ目の究極リスクは、米国による力ずくの「双子の赤字減らし策」です。
まず貿易赤字ですが、労働市場中心に供給制約が強い中で大規模な財政需要をつけると、国内で生産できずに輸入が大幅に増え、貿易赤字が膨張します。これに対して、保護主義が前面に出て、大幅関税などで輸入制限をすると、報復関税などでブロック化が進み、世界貿易や景気が急縮小します。
もう1つの財政赤字拡大については、トランプ氏周辺に不穏な考えがあるようです。
つまり、新ドルを発行し、旧ドルとの交換で掛け目を大きくし、結果として債務をかなりの額棒引きできる、というものです。これは力ずく、暴力的な赤字減らしで、政治的には極めて大きな反発を呼びますが、対外債務に適用されると、米国債を1兆ドル以上保有する日本、中国に打撃となります。
これらは「究極のリスク」で、その発生確率は低いことを期待しますが、その中で「トランプ・タワー合意」の可能性は比較的高いと見られます。
それ以外は「テールリスク」として、つまり可能性は低いとしても、生じれば甚大な影響があるので、頭の隅に入れておいた方が良いと思われます。
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