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トランプ氏の柔軟な世界観、良いのか悪いのか
検討中の外交政策チームは寄り合い所帯
トランプ・ナショナル・ゴルフ場で報道陣に手を振るトランプ氏(20日)。ここで次期政権の要職候補と相次いで面会している
By GERALD F. SEIB
2016 年 11 月 22 日 11:05 JST
――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長
***
ドナルド・トランプ次期米大統領が外交政策チームに起用することを検討している候補者の多様な顔ぶれからすると、同氏には確たる世界観がないことが分かる。少なくとも米国やその同盟国が慣れ親しんでいたものではない。
問題は、それが良いことなのか悪いことなのか、である。
例えば、次期政権の国家安全保障担当大統領補佐官に任命されたマイケル・フリン退役陸軍中将は過激派組織「イスラム国」との戦いでロシアと協力する必要性を強調する。一方で2012年の大統領選の共和党候補で、国務長官候補として検討されているミット・ロムニー氏はかつてロシアを「米国の地政学上の最大の敵」と呼んだ。
トランプ氏は、イラク戦争は大変な間違いだったと繰り返し批判しているが、イラク戦争の強力な擁護者だったジョン・ボルトン元国連大使を要職に登用することを考えている。
国防長官候補として検討されているデービッド・ペトレアス退役陸軍大将は国家安全保障問題の専門家で、オバマ大統領によって中央情報機関(CIA)長官に起用されていた。国務長官候補の1人であるルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は、外交の経験が少なく、外交政策に対する見方はほとんど知られていない。しかもオバマ政権を手厳しく批判してきた。
つまり、トランプ氏が検討中の外交チームは、同氏の熱心な支持者と、これまで同氏から遠ざかっていた人たちの異例の寄り合い所帯である。外交政策の主流に近い人もいれば、主流派をあきれさせるような考えの持ち主もいる。
チーム内で互いに反目の恐れ
いくつかの共通点はある。まず軍出身者が多いことだ。国防長官の筆頭候補はジェームズ・マティス元中央軍司令官である。また国家安全保障担当大統領補佐官に就くフリン氏や中央情報局(CIA)長官に指名されたマイク・ポンペオ下院議員のように、イランやISに対する強硬姿勢を唱える人物も多い。
もちろん、これらの候補のうち誰が真剣に検討されているのか、誰が実際には検討されていないのに本人や支持者を喜ばせるために名前を挙げられているのかは、現時点では分かりづらい。またトランプ氏はオバマ大統領と同様に、ホワイトハウスを国家安全保障上の政策決定の中心に置き、各省の重要性を低める可能性もある。
とはいえ特筆すべきなのは、外交チームに名前の挙がっている候補者らのスタイルや考え方、経験がばらばらで、世界とさまざまな脅威に対する姿勢に共通点がないことだ。そこからはトランプ氏自身に一貫した世界観がないことがうかがえる。その空白を埋めようとする多種多様のアドバイザーたちが、互いに反目したり陰口をたたいたりする恐れがある。
「このチームはあっという間に過去40年間で最も分裂したまとまりのないチームになる可能性がある」。共和、民主両党政権で国家安全保障当局の幹部を務めたコロンビア大学のスティーブン・セスタノビッチ教授はそう語る。「カーター、レーガン、クリントンの各政権の初期にも組織上、政策上の対立はあったが、(次期政権と比べると)大したことはなかったといえるだろう」
安倍首相と面会するトランプ氏。後方はトランプ氏の長女イバンカさんと夫ジャレッド・クシュナー氏(17日、ニューヨーク) ENLARGE
安倍首相と面会するトランプ氏。後方はトランプ氏の長女イバンカさんと夫ジャレッド・クシュナー氏(17日、ニューヨーク) PHOTO: CABINET SECRETARIAT AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
一方で、トランプ氏は外交政策に関しては究極の現実主義者で、特定のイデオロギーにとらわれず、党派的な立場や議論を簡単に無視するかもしれない。
それを裏付けるのが、トランプ氏が選挙期間中、完全に構築された世界観を一度も示さなかったという事実だ。同氏は既存の貿易協定の再交渉や、不法移民の流入を阻止するための壁の建設、ロシアに友好的な姿勢を取ることなど2、3の持論には固執した。しかしシリアのアサド政権への対応など多くの問題では見解ははるかに曖昧だった。トランプ候補は米国第一を掲げるナショナリストだったが、それで米国の同盟国はどうなるのかについてはほとんど説明してこなかった。
究極のテストはプーチン氏との関係
道しるべとなるものはほとんどない。世界中が不安に覆われ、臆測が乱れ飛んでいる。だが、だからこそトランプ氏は外交チームを編成する上で最大限の柔軟性を確保できている。
トランプ氏の現実主義が究極的に試されるのは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との関係かもしれない。トランプ氏は大統領選後のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、プーチン氏から「素晴らしい」書簡を受け取ったとし、特にISとの戦いではプーチン氏とは対立するのではなく協力したいとの意向を明確にした。
だが、ロシアの独裁者であるプーチン氏と手を組めると考えた米国の新大統領は、トランプ氏が初めてではない。ジョージ・W・ブッシュ前大統領はプーチン氏の目を見て、「彼の魂に触れた」と述べた。だがプーチン氏はその後、国内のメディアや企業への規制を強化し、隣接するジョージアを抑圧した。オバマ政権はロシアとの関係を「リセット」できると考えたが、ロシアはクリミアを併合し、ウクライナを威嚇している。
トランプ氏の外交チームがどのような構成になろうが、注意すべきことははっきりしている。ウラジーミル・プーチンと付き合う時は失望させられることを覚悟しなければならない。
トランプ次期政権特集
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広告業界にもトランプ効果、従来の手法見直し
中間層消費者の希望や憧れを読み間違えているかもしれない
オハイオ州デラウェアでの集会でトランプ氏の演説を聞く聴衆(10月20日)
By ALEXANDRA BRUELL AND SUZANNE VRANICA
2016 年 11 月 22 日 16:33 JST
広告業界の関係者たちは長年、高級感ただよう都会的生活のイメージを使って、米国の消費者たちの心をつかもうと努めてきた。だが今や厳しい現実に直面している。大半の消費者たちの希望や憧れを読み間違えているのではないかという思いだ。
ドナルド・トランプ氏が米大統領に当選したのは、中間層有権者から支持を得たためだった。これを受けて広告関係者たちは、トランプ大統領の誕生に大きな役割を果たした中間層と自分たちも断絶していたのではないかと反省している。つまり、地方に住み、経済的に不満が大きく、反エリート層で反グローバル化の有権者たちだ。
トランプ氏の勝利を受け、広告関係者は消費者や売り込み対象製品などに関する各種データの収集方法そのものを見直そうとしている。
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11月8日の大統領選投票日の数日後、広告代理店大手マッキャン・ワールドグループのハリス・ダイヤモンド最高経営責任者(CEO)は幹部を招集し、予想外の選挙結果から何が学べるか話し合った。分かったことの一つは、余りに多くの広告活動が誤った前提に立っているということだった。それは、すべての消費者が、ニューヨークやロサンゼルスなど沿岸の大都市に住むエリート層への憧れを持っているという前提だ。
ダイヤモンドCEOは「われわれが売り込もうとする製品について、一般消費者が憧れている目標とは何なのかを繰り返しリセットしなければならない」とし、「現在、あまりに多くのマーケティングプログラムが大都市エリート的イメージに傾いている」と語った。
同CEOは、今後のマーケティング活動について、ニューヨークやロサンゼルスの大都市文化をそれほど反映させず、「デモイン(アイオワ州)やスクラントン(ペンシルベニア州)」の地方文化を反映したものにする必要があると述べた。
ビッグデータの落とし穴
一部のマーケティング担当者は、データだけではすべてを把握できないことを懸念し、市場調査などで個別インタビューの利用を増やすことを計画している。また一部広告代理店は、これまでの手法を見直し、地方からの従業員採用を増やすことを検討している。ある会社は、実際に広告を見る消費者により近づくべく、世界中に現地オフィスを増やすことも考えているという。
サンドイッチチェーン大手サブウェイのジョー・トリポディ最高マーケティング責任者は「今回の大統領選は、マーケターにとって転機だ。人々が頭のなかで何を考えたり感じたりしているのか、実際に消費者の選択の原動力になっているのは何なのかを落ち着いて学ぶ時が到来したのだ」と述べた。
性や人種などの多様性(ダイバーシティー)を改善しようとしている広告代理店は少なくないが、業界幹部は社会経済的、地理的にも多種多様なバックグラウンドの従業員を持つべきだとしている。
例えば広告代理店大手72&サニーのジョン・ボイラーCEOは、ダイバーシティー雇用は「ペンサコーラ(フロリダ州)に住むキューバ移民であったり、インディアナ州の農村出身女性であったりということだ」と述べた。ゼネラル・ミルズやクアーズ・ライトなどの広告を手掛ける同社は、大卒者募集プログラムを地方にも拡大する計画だという。
大統領選の世論調査は、トランプ氏への支持の大きさを過小評価していた。パソコン大手HPインクの最高マーケティング責任者アントニオ・ルチオ氏は、今回の選挙結果は「ビッグデータの時代でさえ人的バイアスの影響を受けるという調査上の方法論」の限界を際立たせていると語った。HPは現在、オンライン世論調査のような手法を見直しており、個人的なインタビューやフィールドワーク的手法を増やす必要があるかどうか見極めようとしているという。
広告代理店最大手WPP傘下のY&RでグローバルCEOを務めるデビッド・セーブル氏は、今回の大統領選はビッグデータに夢中になり過ぎていたマーケターや広告代理店にとって一つの教訓になると指摘。同氏は「ライオンの狩りの仕方を理解したいと思うならば、動物園ではなくジャングルに行く必要がある」と語った。
広告支出は伸び鈍化へ
また業界幹部によれば、予想外の大統領選の結果を受けて、来年の広告支出は絞り気味になる公算が大きい。トランプ次期政権の政策がビジネスにどう影響するか見極めようとするためだ。
広告代理店大手パブリシス・グループのモーリス・レビCEOは、マーケティング担当者がトランプしの政策に「様子見」姿勢をとると予想されることから、来年第1四半期には「広告支出が鈍化するだろう」と述べた。
WPP傘下の広告スペース購入会社グループMはこれまで、来年の米国の広告支出額が前年比3%増の1839億ドルになると予想していた。同社グローバルCEOのケリー・クラーク氏は、現在では広告支出の伸びが向こう半年にわたって数%ポイント鈍化する公算が大きいととし、「(広告支出の)投資決定が遅れるだろう」と語った。
広告の手法やトーンに変化
パブリシス・グループ傘下の広告製作会社サーチ&サーチのワールドワイドCEO、ロバート・シニア氏は「大統領選の結果を受けて、リベラルエリートたちは『世界をもっと良い場所にしよう』といった高邁(まい)な考え方から逃げ出し、『わたしのために何ができるか教えてくれ』などという地に足の付いた地道な考え方に向かうだろう」と述べた。
同氏は、こうした変化は、幻想的ないし現実逃避的なイメージを広告であまり使わず、より現実に即した世界や実在する人々を多用する契機になる公算が大きいと述べた。
前出サブウェイのトリポディ氏は、マーケターたちは消費者を大きなグループに集約したうえで、そのグループ内の消費者を同一視することに集中し過ぎていると指摘。サブウェイのような世界的企業は、よりローカルなマーケティングや広告活動を展開し、特定のコミュニティーの関心事をもっと反映できるようにすべきだと語った。
またマッキャンのダイヤモンド氏によれば、広告業界はこれまで、地域的な拠点を設立して大掛かりにサービスを提供しようとしてきたが、こうした動きは今や、米国や英国、中国など多くの国では時流に合わなくなってきている。つまり、こうした国では消費者がグローバリズムに不満を抱いているというのだ。約90カ国にオフィスを展開している同社だが、今はローカルな広告製作チームを強化したいとダイヤモンド氏は言う。
「ローカルな独自性が求められる世界では、それを反映するクリエーティブを持たねばならない」
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