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大波乱か? ヒラリー候補が「軍産複合体」に見放され落選する可能性=斎藤満
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2016年11月1日 MONEY VOICE
米国メディアは日本のように官邸に言論を牛耳られているわけでなく、メディアごとに支持政党、主張を鮮明にしています。その分、共和党支持の保守系の論陣を張るメディアか、民主党系の革新的な傾向を持つメディアか、認識してみる必要がありますが、今回の大統領選挙に関しては、総じてメディアはトランプ候補に厳しい論調でした。しかしここにきて、注意すべき変化が起こっています。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
もはや裏の勢力にとって「トランプ大統領」は不都合ではなくなった
■大統領選を支配する「軍産複合体」の力
ニューヨーク・タイムズ紙、USAトゥデイ紙は、トランプ候補を「最低最悪の候補者」と酷評しています。
そしてニューヨーク・タイムズ紙は、納税証明を提出しないトランプ候補について、彼の納税問題を調査し、10月2日には95年に9億ドル余りの損失申告をし、以後最大18年間について、この税控除を利用して連邦所得税の支払いを免れていた可能性を報じました。
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大富豪、不動産の帝王といわれるトランプ氏が、18年も税金を払っていなかったとなれば、いくらトランプ陣営が『天才ビジネスマンの証拠』と言い訳しても、人種差別問題とともに、トランプ氏の評価を大きく下げる問題となります。
米国メディアは、なぜここまでトランプ候補の問題を熱心に暴こうとするのでしょうか。
1つの可能性は、「軍産複合体」の力です。米国のメディアの多くは、この軍産複合体と親密な関係にあります。
その点、大統領候補としては、これに好意的なクリントン候補には優しく、軍産複合体の利益を無視した言動を続けるトランプ候補は「不都合」となります。
■「平和」では儲からない
例えば、トランプ候補はロシアのプーチン大統領を評価し、ロシアとの関係改善が予想されます。これは軍産複合体にはよろしくありません。
先にオバマ大統領の働きかけもあって、シリアの停戦が実現しましたが、オバマ氏の意向を無視して米国軍はシリア政府軍の基地を「誤爆」し、これを機にISISが攻撃を再開し、アレッポの一部を取り戻しました。これを見てロシア、シリア連合は改めてISISをターゲットに空爆を再開し、紛争が激化したため、シリア国民への支援物資が届けられないまま、戦闘が再開されてしまいました。
米国の軍産複合体は、米ロが手を組んで停戦、和平へと進むことを望んでいません。常に敵対関係の中で、紛争を続けることが彼らの利益になります。
トランプ氏が日本や韓国、サウジの防衛に関わることを拒否し、米国ファーストを言っていますが、アジアや中東での危機感醸成が、“THAAD”の配備など、彼らのビジネス・チャンスになります。日本や韓国、サウジに自前で原爆を開発所有されても困ります。
トランプ候補のもとで米国が内向きになれば、軍産複合体の出番が少なくなるわけです。
今の言論が続く限り、軍産複合体と結びついたメディアにとっては、トランプ候補は望ましくない人物となり、意図的に排除しようと言うことになります。
しかし、注意しなければならないのは、そのトランプ候補にも、軍産複合体とつながるネオコン勢力が手をまわしていることです。
■軍産複合体はクリントンとトランプに二股をかけている
つまり、現時点でトランプ候補の発言は不都合でも、徐々にネオコンの考えを植え込み、かつてのレーガン大統領のように、ネオコン色に染めてしまえば、あとは彼らの思いのままとなります。
トランプ氏の主張が今後変節する可能性があるのです。実際、彼がキャンペーンで掲げる「偉大なアメリカを再び」は、ネオコンの発想です。
ネオコン自体はもともとクリントン擁立で動いていたものの、今はトランプ氏でも構わない、彼をネオコンがコントロールできると考えています。
これが各メディアにも浸透し、メディアもトランプ氏でOKと確信が持てれば、トランプ叩きは終わるかもしれません。まだ彼の言動からはこれを確認できない、ということだと思います。
■選挙当日まで何が起きるかわからない
トランプ氏の度重なる「舌禍事件」に納税回避問題と続く中でも、トランプ支持には根強いものがあります。
これまでネオコンなど「裏の勢力」がこれと決めた候補は、多少不利であっても、選挙を操作してでも意中の人物を当選させてきました。今回は、クリントン、トランプ両者に二股をかけている状況では、どちらが勝っても良いことになります。
メディアが叩いているほど、裏の勢力はトランプ氏を不都合とは見ていないと思います。選挙までの間、何が起きるかわかりません。今回の米国大統領選挙、決めてかからない方がよさそうです。
※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2016年10月5日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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