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[Q&A]イタリア憲法改正へ国民投票 実質的一院制を問う
政権揺らぎ解消/否決ならEU離脱論も
【ジュネーブ=原克彦】イタリアは議会上院の権限を大幅に弱める憲法改正案を問う国民投票を12月4日に実施する。頻繁に政権が交代する政治を改めるのが狙い。レンツィ首相は「否決されれば辞任する」と公言。現政権への事実上の信任投票の意味を帯びている。
一部の世論調査で憲法改正の反対派が賛成派を上回っており、政局が混乱する可能性もある。政治混乱で経済改革が停滞すれば、欧州経済に影響を及ぼしかねない。
ムッソリーニが権力を掌握した苦い経験から、権力の分散を重視した現行制度の変更を嫌う国民も多い。欧州連合(EU)懐疑派の野党「五つ星運動」などは反対を掲げ、勢いづいている。憲法改正案は4月に議会を通過。憲法改正には国民投票で過半数の賛成が必要になる。
Q 憲法改正案はどんな内容か。
A イタリアは上院と下院が内閣の承認を含めてほぼ同等の権限を持ち、両院で多数派が異なる「ねじれ」が生じると政権交代が起きやすい。法改正の審議も難航しやすい。政治の混乱が経済改革を阻んでいる。
憲法改正案は上院から憲法と選挙法の改正を除いた法案審議や内閣承認の権限をなくし、実質的な一院制にする。上院議員は3分の1に減らしたうえで、選挙で選ばずに地方自治体の代表者らで構成する。
Q 国民投票の結果は欧州政治にどんな影響を与えるか。
A レンツィ首相は「否決されれば辞任する」と公言してきた。仮にそうなればマッタレッラ大統領が別の人物を首相に指名するか、議会を解散して総選挙するか決める。総選挙になれば、6月の地方選で躍進した欧州連合(EU)懐疑派の「五つ星運動」が勢いを増しそうだ。
五つ星はかねて単一通貨ユーロからの離脱を問う国民投票を求めてきた。ユーロ圏で3番目の経済規模を持つ伊で五つ星が第1党になれば、ギリシャ危機を上回る混乱に陥るとみる専門家もいる。6月に英国がEU離脱を決めたのに続き、EU崩壊を決定的にする事態になりかねない。
Q 銀行の不良債権問題にも影響しそうか。
A 伊の銀行は総額で40兆円あまりと国内総生産(GDP)の2割にあたる不良債権を抱える。世界経済の不安要因の一つだ。レンツィ政権は経営状態がもっとも深刻な伊3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの再建や、小規模銀行の再編に取り組んでいる。政局が混乱すれば問題解消も遠のく。
Q 憲法改正への国民の反応はどうか。
A 伊メディアによると世論調査は「反対派優勢」と「賛成派優勢」が混在する。3割前後は賛否を決めかねているようだ。
レンツィ首相は2014年の就任時こそ国民に圧倒的な人気を誇った。だが景気回復の遅れで高い支持率は衰えた。憲法改正よりも政権への不満が反対派を増やしている面がある。
Q 政局の安定は伊の長年の課題だった。
A 7月に施行された下院の改正選挙法が問題視されている。最大勢力に「ボーナス議席」を与える仕組みは以前からある。改正法はボーナスを与える対象として「政党の連合」より「単一の政党」を重視し、政治を安定させる。
政党連合は内輪もめで政権が倒れやすい。ただ、例えば大衆迎合主義の政党が選挙で勝利した場合などに政治的な歯止めをかけにくくなる。与党は改正選挙法を見直し始めた。
[日経新聞10月8日朝刊P.6]
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