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検証 OPEC減産(上) 時間稼ぎ 見透かす市場(下)加盟国と距離置くロシア
http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/593.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 10 月 12 日 04:23:26: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


検証 OPEC減産

(上) 時間稼ぎ 見透かす市場
足並みに乱れ、各論先送り

 石油輸出国機構(OPEC)が9月28日、8年ぶりの減産で合意した。長引く原油安を踏まえ、産油国の結束力を市場に示す狙いがある。供給過剰の解消効果は薄いとの見方も多い。協調を呼びかけたロシアはむしろ増産に動いている。サプライズ減産の真価を検証する。


減産合意は市場にとって予想外だった(カタールのサダ・エネルギー相)=AP

 9月29日早朝、商社の原油トレーダーは端末で真っ先にニューヨーク原油先物の相場を確認した。価格が急反発しているのを見てホッと胸をなで下ろした。

上昇鈍いWTI

 市場予想に反する減産決定で、米指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は28日、約3週間ぶりに1バレル47ドル台に乗せた。会合前に売り持ち高を手じまっていたが、放置していたら大損は避けられなかった。

 もっともその後の上昇は鈍い。OPECが示した加盟14カ国の生産目標は日量3250万〜3300万バレル。8月の生産量は3324万バレルなので24万〜74万バレルの減産となる。現在の供給過剰は100万バレル程度とみられ「供給過剰をすぐ解消できるほどではない」(住友商事グローバルリサーチの舘美公子氏)。

 サウジアラビアや1月に経済制裁が解けたイランは増産でシェアを競ってきた。サウジの8月の生産量は自国の電力向け需要がピークを迎えることもあり、1〜3月と比べ約50万バレル多い。米シティグループは、サウジの生産量は季節的に減るため「減産合意の意味はあまりない」と指摘する。

 合意はいつから、どの国が減産するかを示していない。各論は11月末のOPEC総会に先送りした。イランは現状の360万バレルから400万バレル超への増産を主張。政情不安で生産が低迷するナイジェリア、リビアも例外扱いとするようだが、しわ寄せがくる国が納得するかは別だ。

 「OPECの統計は我々の生産量を過小評価している」。会合後に怒りをぶちまけたのがイラクだ。8月の統計によると、自己申告ベースで日量464万バレルの生産量が、正式な生産量と見なされる石油情報会社の報告だと435万バレルになっていた。ルアイビ石油相が情報会社の担当者に詰め寄ったとも報じられた。

枠順守には疑問

 合意できても、各国が生産枠を守るか疑問が残る。WTIが1バレル10ドルを割った1986年、OPECはそれまでのシェア拡大路線を改め、生産枠を復活させた。だが翌年には各国のヤミ増産が横行。相場回復は約1年の短命に終わった。

 OPECは「大幅な値上がりは望んでいない」(マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘代表)との見方もある。米国のシェールオイルをはじめ非OPECの生産量が増え、シェアを奪われかねないからだ。今回の合意を「時間稼ぎ」(米ゴールドマン・サックス)と見る向きも多い。足並みの乱れを市場は見透かしている。

[日経新聞10月5日朝刊P.18]

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(下)加盟国と距離置くロシア
ルーブル安で輸出に傾く?

 9月28日、アルジェリア。石油輸出国機構(OPEC)が予想外の減産で合意した産油国会合に、ロシアのノワク・エネルギー相の姿はなかった。ロシアは直前に会合への出席をキャンセル。29日には「ロシアは到達した生産水準を維持する」との声明を出した。

ロシア企業は西シベリアでの開発に力を入れる=ロイター

 OPEC加盟国のサウジアラビアなどは国営石油会社が原油生産を寡占するケースが多い。減産も政府の号令一下で進む。だがロシアでは最大の国営石油会社ロスネフチに加え、ルクオイル、スルグートネフチガス、ガスプロムネフチと、大手だけでも複数ある。

 中小の民間石油会社も競争を繰り広げる。ロシア国内の原油生産シェアの2割強を中小が占める。政府が減産を決めても「中小の石油会社の生産まで管理するのは難しい」(英調査会社のIHSエネルギーのマシュー・セイガーズ氏)。

 ロシアの油田は寒冷地にある。「生産を一度止めてしまうと再稼働に時間とコストがかかるため、企業は生産を止めたくない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)。ルーブル安で原油の輸出採算は大きく改善、生産コストも下がっており、むしろ増産したいのが本音だ。

 ウクライナ問題を巡って欧米と対立したため、深海や北極圏の開発は技術的に難しい。ロシア企業は旧ソ連時代から続く西シベリアでの生産に力を入れる。生産中の大油田であれば、低コストで早期の増産が見込める。「早期に資金回収できるとあって、金融機関も西シベリアの開発案件の融資には前向きだ」(IHSのセイガーズ氏)

 ロスネフチも西シベリアの開発にシフトし、増産に乗り出している。プーチン大統領に近いとされるイーゴリ・セチン社長は、これまで幾度もOPECとの協調を否定してきた。

 ロシア、サウジと並ぶ産油国である米国も減産の勢いが鈍ってきた。世界的な原油の供給過剰を招いたシェールオイルは中小業者がひしめく。原油価格が上昇し経済的に合理性があれば、いつでも増産に動く。

 OPECは2017年の非加盟国の生産見通しを、日量数十万バレル上方修正した。カザフスタンで開発案件が立ち上がり、生産が増えている。OPECが合意通り減産に動けば相場が上昇し、産油国は増産の誘惑に駆られやすい。イラクなどの不満がくすぶり、合意に早くも黄信号がともる。サプライズ減産の行方は視界不良だ。

 飛田雅則、田上一平が担当しました。

[日経新聞10月6日朝刊P.22]

 

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