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米大統領選の第1回テレビ討論会を終えて握手する民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(右)と共和党候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月26日撮影)〔AFPBB News〕
今まで全勝の米大統領選予測、今回は異変が・・・ 当選予測モデルが割り出す次期米大統領は誰か
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48011
2016.9.30 堀田 佳男 JBpress
米大統領選の投開票日(11月8日)まで1か月あまり。民主党ヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー)と共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)のいったいどちらが勝つのか。
第1回テレビ討論会が終わり、両候補はいまレース最後の直線に入ったところだ。毎日のように発表される世論調査結果を眺めると、両候補の数字は拮抗している。ヒラリーが数ポイント差でトランプをリードしている調査結果もあれば、逆の結果もある。
勝者を予測することは危険であるが、米国では当選予測モデルがいくつもあり、大統領選の専門家が予測を公表している。
当欄では単なる「直感的な予想」ではなく、少しマニアックであるが「学究的な予測」を中心に、数字とともに示していきたい。
■米大学の政治学者が公表する9つのモデル
米国で最初の当選予測モデルが紹介されたのは1912年のことである。当時は、近年のような学究的なアプローチを駆使したものではなく、予備選の結果を考慮したモデルだった。
政治学者が学会の場で予測モデルを公表したのは1996年のことだ。全米政治学会(APSA)で勝者を分析する予測モデル(Forecasting Models)が発表されている。
1996年というのは、ビル・クリントン元大統領と共和党ボブ・ドール候補が戦った年で、同年の予測だけでなく、過去をさかのぼって大統領選の勝者を割り出すモデルが紹介された。
近年になると、主な予測モデルだけで9つも登場している。すべて米大学に在籍する政治学者が公表しているものだ。いくつか紹介したい。
ニューヨーク州立大学バッファロー校のジェームズ・キャンベル教授のモデルは、過去にさかのぼっても「ハズレ」のない予測を出している。
今年の予測は「ヒラリー勝利」である。同教授が使う指標は、民主・共和両党の全国大会前後の支持率の推移、第2四半期のGDP(国内総生産)実質成長率、政権を担う政党が何年継続しているかを測っている。
8月26日時点でのヒラリーとトランプの勝率は51.2%対48.6%。ヒラリーに軍配が上がっている。同教授の予測モデルだけでなく、他のモデルも数式化されて小数点まで割り出されている。
ジョージア州にあるエモリー大学のアラン・アブラモウィッツ教授のモデルも「勝率」は100%。なにしろ1948年からデータを取り始めて、これまで1度も外していない。
今年の同教授の予測はなんと「トランプ勝利」である。筆者は10年以上前から両教授の予測を見ているが、これまでは予測が一致していた。だが今年初めて予測が割れている。
同教授が使う指標は、現職大統領の6月末時点でのギャラップ調査の支持率、第2四半期GDPの実質成長率、現職大統領が1期目か2期目かの3点である。前出のキャンベル教授との差異は、現職大統領の支持率か候補の支持率かの違いだけだ。
■入手可能な情報をすべて使うアームストロング教授
ブラモウィッツ教授の予測数値は51.4%対 48.6%で、キャンベル教授と真逆の結果である。ただ前出の2教授が使う指標が3点だけということが多少、気になる。
予測モデルの発案者の1人として忘れるべきではないのが、ペニンシルバニア大学ウォートンスクールのJ・スコット・アームストロング教授である。
同教授は政治学者ではなくマーケティングの研究者で、ビジネススクールの教授らしく入手可能なあらゆる情報を使い、数値化してエラーが生じない予測を試みている。しかも1日1回のペースで数値を更新している。
支持率や経済指標だけでなく、民間の予測やアイオワ電子市場の勝率予測まで考慮する点に特徴がある。
アームストロング教授の最新の数字(9月29日)は、ヒラリーの52.3%に対しトランプが47.7%。今年の選挙は「ヒラリー勝利」と予測している。この数字は今年2月1日にアイオワ州で党員集会が始まった時からほとんどぶれていない。
当欄では3教授の予測結果を紹介したが、前述した主要9教授(3教授含む)の予測モデルでは7教授が「ヒラリー勝利」を、アブラモウィッツ教授を含む2教授だけが「トランプ勝利」と予測している。
ただ投票日までは1カ月以上ある。多くの方はあと2回残っている討論会での両候補のパフォーマンスや、不測の事態によって予測が外れる可能性があると考えるかもしれない。
けれども過去10年以上、インターネットによる情報量の増加などにより、約9割の有権者は現段階でどちらの候補に一票を投じるか決めている。
最新のウォールストリート・ジャーナルとNBCテレビの共同世論調査によると、討論会を観て心が動かされ、支持候補を替える可能性のある有権者は11%に過ぎなかった。
つまり、討論会は自身の支持する候補がどういった討論をするのかを確認する場になっているのだ。1960年のジョン・F・ケネディ対リチャード・ニクソンのテレビ討論の時代とは討論会の意味合いが違う。
■堀田モデルの内容と結果
筆者は一応、大統領選をライフワークと公言しており、1992年の予備選からずっと取材を続けている。そうした経験も踏まえ、おこがましいが「堀田モデル」を作っている。
指標にしているのは以下の6つである。
(1)過去1年の世論調査5社(ロイター、ニューヨーク・タイムズ、ギャラップ、キニアピッグ、エコノミスト)の支持率の中央値
(2)集金額
(3)選挙対策本部の組織力
(4)候補の資質
(5)経済指標(最新の1人あたりの経済成長率、失業率、インフレ率)
(6)ガソリン価格
以上の指標を元に一般投票の獲得率を計算している。
自身のブログでは今年6月にヒラリー勝利を予測し、得票率を51%とした。ただ第3政党の候補として、リバタリアン党のギャリー・ジョンソン候補と緑の党のジル・ステイン候補が出馬している。
ジョンソンは全米50州で、ステインは最低45州で投票用紙に名前が刻まれる。米大統領の歴史の中で第3政党の候補が勝ったことはなく、今年も両者が勝つ可能性はほとんどゼロに等しい。
ここまで紹介した政治学者の予測モデルには両候補が加味されておらず、紹介した数値はヒラリー・トランプ両候補がとり分ける値が示されている。しかしジョンソン・ステイン両候補はほぼ間違いなく計1000万票超を獲得するので、ヒラリーとトランプの票数は自ずと減る。
いずれにしても、実際に4人が票をとり分けることになり、「堀田モデル」ではヒラリーが47%、トランプが43%、ジョンソンが7%、ステインが3%で、「ヒラリー勝利」と予測する。
もちろん予測に過ぎないが、かなり近いものになると考えている。
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