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ロイター/アフロ
クリントン候補、財団に中国人の巨額寄付で疑惑浮上…中国権力闘争が米大統領選に飛び火
http://biz-journal.jp/2016/09/post_16683.html
2016.09.17 文=相馬勝/ジャーナリスト Business Journal
米民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏がニューヨークで行われた9月11日の米同時多発テロの追悼式典を途中退席し、肺炎であることがわかるなど、健康問題が取り沙汰されている。
その折りも折り、クリントン夫妻らが運営する慈善団体「クリントン財団」に200万ドル(約2億円)もの多額寄付を行った中国人実業家が、贈賄を使って中国の国会議員に当たる全国人民代表大会(全人代)委員の地位を得ていたことがわかり、委員の資格を取り消されるという事件が発生。この実業家はこれまでもクリントン氏とのグレーな関係を噂されてきただけに今後、米大統領選に絡む選挙資金流用疑惑が再燃する可能性が出てきた。
この中国人実業家は、中国東北部の遼寧省丹東市に本社を置くゼネコンを主体とする遼寧日林実業グループの王文良会長。同グループは日林建設や丹東港の開発を手掛ける丹東港集団、さらに米国などとの穀物輸入や食用油の製造販売、このほか造船会社などを有するコングロマリット企業グループ。2013年には中国企業トップ500に選出され、営業利益は246億元(約4000億円)だった。
王氏は1954年7月、丹東市の生まれで現在62歳。遼寧大学で経済学の修士課程修了。丹東市政府に就職するが、90年代初めに当時の起業ブームを受けて離職し、米国に渡ったとみられるものの、その後の経歴は知られていない。
■賄賂疑惑
米政府が運営する報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」によると、王氏が頭角を現したのが04年の丹東港再開発プロジェクトの入札。港湾の再開発のため、本来ならば17億元もの土地を8分の1以下の2億元を支払っただけで、その権利を掌中にしたとされる。これは王氏が当時の丹東市長だった陳鉄新氏に賄賂を贈って、入札に成功したとの情報が出ている。
さらに、王氏は陳氏の紹介で当時の遼寧省トップの聞世震・同省党委書記と密接な関係を築き、現在のグループを形成したといわれている。
王氏は遼寧省でも名士となり、13年1月には同省代表の全人代委員に選出されたのだが、全人代常務委は9月13日、遼寧省の代表102人のうち45人が金銭やそのほかの賄賂を使っていたとして、その資格を無効にする決定を行ったと発表。そのなかに、王氏も含まれていた。これによって、これまで囁かれていた王氏の賄賂疑惑は一転して事実であることが明らかになったことになる。
■中国内の権力闘争が影響
この背景には、汚職や腐敗の摘発を強める習近平指導部の意向があるのは確実だ。一説によると、最高指導部人事が大幅に入れ替わる、来年秋の第19回中国共産党大会を1年後に控えて、党内の権力闘争が激化し、習近平主席のライバルで、遼寧省のトップを務めたことがある李克強首相の追い落としのために同省選出の全人代委員の不正が明らかにされたとの見方も出ている。
これは、習近平主席の腹心とされる天津市の黄興国・党委書記代理が10日、突然解任されたことで、習氏が逆襲に出たともいわれている。遼寧省の全人代委員の大量資格取り消しが党中央の権力闘争に絡んでいるとすれば、資格を取り消された委員の不正追及が今後、本格化し、逮捕者が出ることも予想される。
「45人の元委員のなかでも、王の不正の額はとびぬけて大きいとみられるだけに、王の逮捕は時間の問題だろう」と北京の外交筋は指摘する。
■中国の権力闘争が米大統領選に波及か
ここで急浮上してきたのが、中国の火花が米国に飛び火する可能性だ。なぜならば、王氏は中国内ばかりでなく、米国での事業拡大のために、米国内の要所要所にカネをばらまいていた形跡がある。
その端的な例が、王氏が米国の事業の拠点としているバージニア州のテリー・マコーリフ氏への献金だ。米CNNによると、米司法省と米連邦捜査局(FBI)が合同で今年5月、3年前の13年の米バージニア州知事選で、王氏が経営する米国内の企業からマコーリフ知事の陣営に12万ドル(約1200万円)もの選挙資金が提供されたとの疑いで捜査を開始したという。
知事は08年の大統領選でヒラリー・クリントン氏の選対責任者を務めており、クリントン財団の幹部だったことから、クリントン夫妻にとって「もっとも近い友人」とされる。
このため、王氏が経営する中国企業が、マコーリフ知事の紹介を受けて、クリントン財団に200万ドルを寄付していたこともCNNの報道によって判明している。米国の法律では、大統領選や知事選などの立候補者が外国人から選挙資金の提供を受けることは禁じられており、マコーリフ知事の逮捕も視野に入ってきたとの報道もある。
さらに、いったんクリントン財団に入った寄付金が、ヒラリー・クリントン氏の大統領選の資金に流用されたとの可能性も一概には否定できない。このため、今回の王氏の選挙資金提供疑惑は徐々に米国内でも関心が高まっていた。このようななかで、王氏の全人代委員の資格が取り消されたことから、米メディアも今後の王氏の動向を注視している。
中国の権力闘争が米大統領選に波及するという前代未聞の事態が現実化するのか、それとも線香花火のようにしぼんでしまうのか。月並みな表現ながら、事態は予断を許さない。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)
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