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トルコがロシアと急接近 米国やNATOの新たな脅威に?
2016年08月18日
http://blogos.com/article/187501/
(抜粋)
「愛憎相半ばした関係」が何百年も続く両国
トルコのエルドアン大統領は9日、ロシアのサンクトペテルブルグでプーチン大統領と首脳会談を行い、昨年11月以降、断絶状態が続いていた両国の関係を修復させることで合意した。エルドアン大統領にとっては、クーデター未遂から4週間足らずでのロシア訪問となる。エルドアン大統領はプーチン大統領を「親愛なる友人」と呼び、両国が関係改善に向かって動き出したことを懸命にアピールした。
トルコとロシアの間では観光業を含めた経済的な交流が活発に行われており、トルコ国民はビザなしでロシア国内を旅行でき、商用でロシアに住むトルコ人も少なくなかった。しかし、昨年11月24日にトルコとシリアの国境地域で対IS攻撃作戦に参加していたロシア軍の爆撃機がトルコ空軍の戦闘機によって撃墜されたことで、両国の関係は一気に悪化した。
撃墜の約一か月前から、トルコ国内でロシア軍機による領空侵犯が数回確認され、トルコとNATOはロシアに対して抗議していた。昨年11月に撃墜されたロシア軍機もトルコ上空を領空侵犯していたが、トルコ上空を飛行していたのはわずか17秒で、その間に撃墜許可がおり、ロシア軍機が撃ち落された背景には今も謎が残っている。
余談になるが、ロシア軍機を撃墜したパイロットは、7月のクーデター未遂の際にトルコ国内の空軍基地を戦闘機で飛び立ち、クーデターに加担していた。
サンクトペテルブルグで9日に行われた首脳会談で、トルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領は、昨年11月のロシア軍機撃墜事件以降、断絶状態となっていた両国の関係が修復に向かっていることを印象づけた。トルコで15年にわたってジャーナリストとして働き、現在は米ニュージャージー州で暮らすジェームズ・キュネイト・セングルさんがトルコとロシアの関係について語る。
「トルコとロシアの間では愛憎相半ばした関係が何百年にもわたって続いている。しかし、現在の両国間関係では両国の経済的なつながりを無視することはできない。トルコの観光業にとってロシアは大きな顧客であり、ロシアにとってもトルコは食品や農産物の大きな輸出先なのだ」
24日には米バイデン副大統領がトルコを訪問
米ホワイトハウスは13日、バイデン副大統領が24日にトルコのアンカラを訪問し、エルドアン大統領とユゥルドゥルム首相との会談を行うと発表した。エルドアン政権や政権寄りのメディアは、アメリカがギュレン師の拘束と身柄引き渡しに消極的な姿勢を見せていることを批判。7月のクーデター未遂そのものが、アメリカが裏で糸を引いていた陰謀だったと公言するメディアまで出る始末で、エルドアン政権が国内で増大する反米主義を巧みに政治利用しているとの指摘もある。バイデン大統領のトルコ訪問が二国間の関係修復のきっかけになるという楽観論が存在する一方で、先行きの不透明なトルコの政治情勢は、同盟国として信頼感を欠くという声が欧米、とりわけNATO加盟国からは相次いで出ている。
先述のセングルさんもエルドアン政権のロシアへの接近を懸念する。
「トルコは地理的な理由、そして世俗的なイスラム社会ということで、欧米によって中東政策や対ロシア(ソ連)政策で前線基地として使われてきた。エルドアンの強烈なエゴはトルコ国内で汚職や政情不安を引き起こしてきたが、ロシアとの関係強化はアメリカにとってもはや見過ごすことのできない問題だ。私はバイデン副大統領がアメリカとトルコの関係悪化を防ぐ調停役としてではなく、エルドアン政権に警告を発するためにアンカラを訪問するのだと確信している」
トルコ政府はクーデター未遂直後の先月19日、イスラム教指導者のギュレン師の身柄引き渡しをアメリカに正式に要請したことを明らかにした。しかし、トルコ社会に現在も大きな影響力をもつギュレン師はアメリカにとっても貴重な外交カードであり、米政府は身柄引き渡しに応じる姿勢を見せていない。ギュレン師の身柄引き渡しが行われない現状にいら立ちを隠せないエルドアン政権とアメリカの間で、新たな火種が生まれることを懸念する声もある。前述したインジルリク空軍基地は、対IS攻撃の前線基地として米空軍も使用しているが、クーデター発生時にはクーデター部隊を支援するために給油機が離陸したと報じられ、基地への外部からの電力が遮断される一幕もあった。
米空軍が50発の核爆弾をインジルリク空軍基地内に保管していることが、クーデター後に欧米メディアによって大きく報じられた。クーデター未遂後のトルコの政情不安によってアメリカはインジルリク空軍基地におけるセキュリティの見直しを迫られるだろう。核兵器の保管に加えて、エルドアン政権が対IS攻撃の前線基地として知られるインジルリク空軍基地の使用に関して、規制という名のカードをちらつかせて交渉を有利に進めようとするのではという指摘もある。
トルコと欧米の外交関係も、今回のクーデター未遂によって大きな転換期を迎えたようだ。トルコのロシアへの接近は、中東政策における戦略拠点を失うことや、対ロシア陣営とのパワーバランスが思わぬ形で崩れる危険を欧米諸国に痛感させた。プーチンとエルドアンの動き方次第でNATOは防衛戦略の見直しに直面する可能性もあり、ヨーロッパで新たな軍事的緊張が生まれる可能性が出てきた。
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■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト(http://hirofuminakano.com/)
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