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北京で掲げられる中国国旗(2016年8月8日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News〕
西側をスケープゴートにする中国の「賭け」 偏見をあおるプロパガンダに拍車、裏目に出る恐れも
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47621
2016.8.16 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年8月11日付)
世界のあちこちで、恐怖を広めたり排外主義をあおったりする言動が公共の場や政治の世界に入り込みつつある。
言論の自由の伝統を持つ自由民主主義国では、そういった態度が声高に非難されて釣り合いがとれる可能性がある。だが、反体制的な言説が禁じられている権威主義的な国では、外国人や「ほか」の人々を悪魔のような存在に仕立て上げようという当局の試みは、特に危険なものとなり得る。
中国政府は8月初旬、「西側の敵対勢力」が中国国内で数々の不幸を引き起こしたり陰謀とおぼしきことを画策したりしていると非難するオンライン動画を公開した。
動画の作りは粗雑だが、シンプルさと感情をゆさぶるアピール力はまれにみるパワフルさだ。例えば、最高人民検察院と中国共産主義青年団(共青団)という最大級の権力を誇る国家機関が奨励しているある動画は、イラクやシリアの戦争の犠牲者や孤児たちの胸の張り裂けるような映像で始まる。そして、一足飛びに、米国が主導する西側諸国が中国に同じ運命をたどらせようとしているという主張を展開する。
「『民主主義、自由、法の支配』という旗印の下で西側諸国は、(中国)政府を転覆させるために、社会の矛盾を常に作り出そうとしている」。香港の民主化運動やダライ・ラマと会談するバラク・オバマ米大統領の映像にかぶせ、こんなメッセージが字幕で流れる。
この動画によれば、アフリカで国連平和維持活動(PKO)を行っていた中国の派遣移動部隊が襲撃されたことをはじめ、中国内陸部での農民たちの暴動、チベットの独立運動などすべてが西側諸国の策略と「星条旗の暗い影」のせいだという。この動画の効力は、不気味な音楽と中国以外での混沌とした状況の羅列、そして中国の兵士や兵器類の英雄的なイメージにより強化されている。
いろいろな意味で、これは中国以外の国々で生じているポピュリスト的、感情的愛国主義的な傾向を映す鏡だ。米国発の独断的なトランプ主義や欧州で台頭している右派ナショナリズムに対する直接的な反応ではないものの、それと同じ集団的アニムス*1のいくつかが、与党の共産党の煽動も手伝って中国で根付きつつあるのだ。
このメッセージを拡散している人の多くは、最も皮相的なナショナリストだ。資産(違法に手に入れたものであることが多い)を外国に大急ぎで持ち出して分散投資したり、オーストラリアや米国、カナダ、英国などに自分の子供を留学させたりしている共産党機関員らのような人々だ。
実際、西側諸国の陰謀をテーマにしたビデオの主力制作者の1人は、中国の出身で現在はオーストラリアのキャンベラに住む29歳の大学院生(博士課程在籍中)だ。また、中国共産党は西側の価値観や概念を拒絶するよう求めながら、マルクス主義を推奨している。マルクス主義と言えば、ロンドンに暮らしたドイツ人の名前を冠した、モスクワを経て中国に入ってきたイデオロギーだ。
偽善と矛盾を含んでいるにもかかわらず、この種のプロパガンダは非常に効果的であり、普通の人々が最も原始的な偏見に熱中することにゴーサインを出す。
習近平国家主席が2012年後半に権力を握って以来、中国在住の外国人に対する中国国民の態度は目に見えて否定的なものになっている。
*1=無意識の中にある男性的特性
以前は、中国在住の外国人のほとんどが、暗黙の保護と特権をある程度享受していた。企業活動でも日常生活においても「外国の友人」は歓迎され、当局からも丁重に扱われた。中には明らかにそれに乗じ、罰を受ける恐れがないからとルールを無視したり狼藉を働いたりした者もいた。
今日では、この非公式の特権は消えてしまったように思われる。それに代わって出てきたのが、その反動の前兆だ。中国に長く住む外国人の多くはきっと、この反動は――軽微な差別から人種差別的な中傷、人種差別の特徴を備えた激しい口論に至るまで――非常に厄介なものになり得ると言うだろう。
この反動は、個人への対応から多国籍企業の扱いにまで広がりを見せている。多国籍企業は現在、中国では地元企業との競争が公平に行われていないとの不満を強めている。
中国の政府職員や多くの一般市民がかつて外国人に与えていた特権は、そもそも存在するべきものではなかった。しかし、計算づくで「西側の敵対勢力」を繰り返し悪者扱いすると、排外主義が醸成され、中国政府が将来的に政策を再考するときの余地が狭くなってしまう恐れが出てくるだろう。
中国の不幸の多くは外国のスパイや陰謀によるものだという説を国民に信じ込ませれば、中国政府は最終的には、国民の怒りをなだめるために、敵だと思われている国々に反撃せざるを得なくなるかもしれない。外国直接投資の最近の減少や国際的な才能を持つ人物の中国からの脱出は、このように外国人を以前ほどには歓迎しない環境のせいでもある。
中国経済の目を見張るほどの発展は40年近く前、「改革開放」路線として知られる政策で始まった。それ以降、この国は、その非常に長い歴史におけるおおむねどの時代よりも長い間、外に開かれていた。
この開放政策に終止符が打たれれば、中国にとっても世界にとってもひどい事態になるだろう。
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