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EU離脱選択と英国の未来 孤独な道か経済の自由か:英国EU離脱問題はEU統合(深化)問題への入り口
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/703.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 7 月 27 日 04:06:22: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


[今を読み解く]EU離脱選択と英国の未来 孤独な道か経済の自由か
ニッセイ基礎研究所上席研究員 伊藤さゆり

 6月23日の国民投票で英国民は欧州連合(EU)からの離脱を選択した。

 EUに譲り渡した主権を取り戻そう(Take back Control)という離脱派の主張は、離脱による経済面への打撃を強調する残留派の警鐘よりも、より多くの有権者の心に響いた。離脱派は、立法権限や財源とともに移民のコントロール権もEUからの離脱によって取り戻そうと訴えた。

 パニコス・パナイー著『近現代イギリス移民の歴史』(浜井祐三子・溝上宏美訳、人文書院・2016年)は、英国への移民の流入と社会への統合について長期的な視点から詳細に分析した良書だ。英国は、そもそも民族的にマジョリティーであると考えている人々も欧州大陸やさらにその向こうからやってきた人々に起源を持つ移民の国。多文化社会であると同時に人種主義と外国人嫌悪も脈々と存在し続けたと分析する。

●移民急増が影響

 本書が主な分析対象とした過去200年間も、欧州、英連邦などから約900万人の移民が流入し、発展の中心的な役割を担ってきた。移民とその子孫は、最下層から最上層まであらゆる職を得て、階層の移動も見られる。食やスポーツなど生活の様々な側面にも影響を与えた。他方で、もっとも新しい集団には敵意が向く傾向があるという。国民投票は、近年、中東欧のEU加盟国からの移民が急増、テロや難民危機もあり、EU域内の人の移動の自由への懸念が高まっていた時期に実施され、EU離脱という結果に終わった。多文化社会に深刻な亀裂が残った。

 アンソニー・ギデンズ著『揺れる大欧州』(脇阪紀行訳、岩波書店・15年)とロジャー・ブートル著『欧州解体』(町田敦夫訳、東洋経済新報社・15年)。ともに英国人の著者が欧州の停滞の打開のためのEU改革について論じた書だが、結論は大きく異なり、英国のEU離脱の捉え方も対照的だ。

 ギデンズが示すのは、国家主権をさらにEUに譲り渡すという連邦主義的な解決策だ。グローバル世界で個々の国が持つパワーは小さく、相互連携によってこそ積極的な役割を果たすことができると見る。英連邦の威光が消えた今、英国がEU離脱を選択すれば、「広大で不安に満ち溢(あふ)れた世界に孤独な一歩を進めることになる」という。

 逆に、ブートルは、EUは過剰な規制と競争の抑制を招く機能不全の構造体であり、権限を加盟国に返還し、ダウンサイズを図るべきだという。EU離脱は、EUの根本的な改革がなされなかった場合には取るに値するリスクであり、国内の経済運営や世界各国との貿易をEUがもたらす様々な重荷抜きでできるようになるベネフィットもあると主張する。

 EU離脱を決めた英国が歩むのは、ギデンズがいう孤独な道か、ブートルがいうより開かれた道なのか。メイ首相率いる新体制によるEUとの協議、さらにEU域外との連携強化の手腕に依拠する部分が大きく、今の段階では確かなことは言えない。ただ、EUにとって英国の離脱は、EU改革への強い問題意識を持つ加盟国を失う意味で大きな損失になると感じる。

●主導権は握れず

 英国は、EUの単一市場が生み出す経済的な利益を重視し、ユーロ導入の見送り、人の移動の自由を保障するシェンゲン協定への未参加が象徴するように統合の深化には距離を置いてきた。それ故、大国でありながら、統合の主導権を握ることはできず、徐々に周辺化されていたことも、離脱への力として働いた。遠藤乾編『原典 ヨーロッパ統合史』(名古屋大学出版会・08年)は欧州統合の前史から21世紀までの流れを通史的にまとめた一冊。英国の統合との関わりの変遷とともに、これまで何度も危機を乗り越えてきたEUが、政策領域を拡大したことによって市民の間で懐疑が広がるという新たな危機に直面するようになった経緯を理解する上でも役立つ。

 今回の国民投票の結果は、EUの分裂ばかりでなく、残留を支持したスコットランドの独立による英国の分裂も引き起こしかねない。改めて英国の成り立ちを振り返りたいという思いを抱いた読者には、紀元前5000年から20世紀までのイングランドの歴史を、地図や年表も含めて200ページ余りにまとめたクリストファー・ヒバート著『図説 イギリス物語』(小池滋監訳、植松靖夫訳、東洋書林・1998年)をお薦めしたい。登場人物の描写に重きを置き、各時代の建造物の写真や人々の暮らしを描写した絵画などの図版が豊富に盛り込まれており、具体的なイメージを描きながら、時代の変遷をたどることができる。

[日経新聞7月24日朝刊P.19]

 

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コメント
 
1. 2016年7月27日 16:59:42 : nJF6kGWndY : n7GottskVWw[2070]

何らかの安全保障や経済での大きなショックで再統合への圧力が働くまでは

当面は、EU統合も深化も進まず、分離圧力が強まるだろうな


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