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債券利回りの低下、量的緩和以外の原因とは
MKMパートナーズのダーダ氏によれば、最近の利回り低下には量的緩和以外の要因も関係している
By TERESA RIVAS
2016 年 7 月 8 日 14:04 JST
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、債券価格が上昇し利回りが過去最低近くにとどまっている原因として、各国中央銀行の債券買い入れを挙げている。
だが、MKMパートナーズのマイケル・ダーダ氏の見方は違う。最近の利回り低下には量的緩和以外の要因も関係していると指摘している。同氏によれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が行った過去3回の量的緩和では、債券利回りは低下するどころかむしろ上昇した。これは経済が力強さを増している兆候であって、(量的緩和の)失敗を示すものではない。
現に、2010年?14年は米国と英国がユーロ圏をアウトパフォームしたと言う。当時はFRBと英中銀イングランド銀行が債券買い入れを行う一方、欧州中央銀行(ECB)はまだ買い入れを行っていなかった。FRBは現在、市場性のある(容易に売買できる)米国債のうち20%強を保有しているが、この水準はピーク時の14年7-9月期の21.6%から低下している。利回りもこの2年間で1.28%低下した。
ダーダ氏は利回りが低下したもう一つの理由を以下のように説明している。
「量的緩和の縮小・終了とFRBの1回目の利上げを受け、米国と中国の名目国内総生産(GDP)成長率が急減速したことの方が、利回り低下の理由をうまく説明できる。ユーロ圏や日本の量的緩和政策は、名目GDP成長率を加速させ(同時に失業率を低下させ)ることに寄与してきたが、これらの政策が向こう数十年間の景気循環を支えるために維持されるのか、あるいはそれを実現する上で十分なのか、市場は悲観している。そのため、安全性の高い資産や現金に対する需要が強くなり、その分だけ世界のインフレ期待が急低下しているのだ。つまり、債券利回りが急低下した原因は中銀の買い入れか『バブル』、あるいはその両方にあるという、ますます支持を広げつつある見方を、当社としては強く警戒したいところだ。最も簡単な説明が単純に間違っている、ということは往々にしてあるものだ」
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米国債、期間プレミアムが大幅なマイナスに-低利回りが常態化
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ前議長
By JUSTIN LAHART
2016 年 7 月 8 日 15:42 JST
米債券市場にこれまで起きていることは世界のリスクと大きな関連があり、米国内の事情はほとんど関係していない。その結果、米国の長期金利はますます国内経済とちぐはぐな動きを見せている。
10年物米国債利回りは足元で1.39%と、年初の2.27%から大きく低下している。この半年ほどの間に世界経済の混乱やブレグジット(英国のEU離脱)が起きなければ、同利回りは今頃どれくらいの水準だっただろうか。ニューヨーク連銀が推計しているタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)から判断すると、年初とほぼ変わらない水準というのがその答えだ。
タームプレミアムとは、短期債で買いつなぐのではなく長期債を保有することに対して投資家が求める追加的対価。経済よりもむしろ投資家の要求を表す指標なので、タームプレミアムを調べれば、経済と投資家のどちらが市場を動かしているのかをうかがい知ることができる。
タームプレミアムは従来プラスだった。投資家は予想よりもインフレが加速したり金融政策が引き締まったりした場合に損失を被ることを懸念してきたからだ。
ところが今年は、ニューヨーク連銀のモデルによると、10年物米国債のタームプレミアムは2015年末の0.07%から低下の一途をたどり、7月6日時点で過去最低のマイナス0.71%をつけている。この半年間で10年物利回りは0.89%低下しており、タームプレミアムの下げ幅とほぼ等しい。つまり、債券利回りの低下はほとんど全てタームプレミアムの低下で説明が付くということだ。
10年物米国債のタームプレミアム
さらに、この場合、タームプレミアムの低下をもたらしているのは、リスク評価の変化ではなく米国債需要の拡大のように見える。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ前議長が指摘している通り、2000年代半ばにタームプレミアムが低かったのは海外からの旺盛な米国債需要が関係していた。FRBの債券買い入れもプレミアムを押し下げた。
FRBは14年10月で米国債買い入れを終了したが、欧州中央銀行(ECB)と日本銀行は現在、国債買い入れを実施しており、今後数カ月で規模を拡大する見通しだ。英中銀イングランド銀行も、ブレグジットによる経済への悪影響を和らげるために買い入れ枠を増やす可能性がある。
結果的に海外の長期国債利回りは大幅に低下し、マイナス圏内に沈む国債が相次いでいる。他の主要国と比べて利回りの高い米国債に投資家の資金は殺到しており、米国債のタームプレミアム、ひいては利回りが押し下げられている。
米国債のタームプレミアムが他の何よりも世界のリスク要因に左右されていることを示す兆候が一つある。過去1年間の欧州国債利回りの動きを見ると、米国債のタームプレミアム(推計値)と高い相関関係にあり、米国債利回りそのものとの相関よりはるかに強いのだ。
とはいえ、米国債利回りの低下はおそらく海外の懸念を主に反映したものだというだけで、米経済への影響はないと考えて良いわけではない。収入を得られる資産の価格はすでに高値圏にあるが、これからも上昇の一途をたどるばかりかもしれない。投資家の利回り追求を背景に、企業は投資よりもいっそう増配や自社株買いに向かう可能性がある。銀行は融資に一段と消極的になるだろう。
一口に低金利と言っても今と昔とでは大違いだ。
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米10年国債のタームプレミアムが再びマイナス
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長 ENLARGE
米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長 PHOTO: PAUL J. RICHARDS/AFP/GETTY IMAGES
By MIN ZENG
2015 年 8 月 11 日 10:00 JST
米連邦準備制度理事会(FRB)が2006年以来の利上げに向けて準備を進める中、世界の経済成長見通しをめぐり投資家の懸念が高まっている。
投資家が10年物米国債を買う際に求めるタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)が7日、マイナス0.007%をつけた。ニューヨーク連銀の直近データによると、マイナスに転じたのは4月末以来のこと。タームプレミアムは6月26日に昨年9月以来の高水準となる0.509%をつけて以降、低下している。
タームプレミアムとは、短期債で買いつなぐのではなく長期債を保有することに対して投資家が求める対価を示す指標だ。投資家は通常、長期資金を貸し出す場合に上乗せ金利を課す。債券の買い手がこうした補償金を放棄したという事実は、FRBが金融政策を大きく変更した場合に生じかねない経済・金融市場への影響を懸念するあまり、極めて安全な債券を保有したいという気持ちが高じていることを示唆している。
R・W・プレスプリッチの国債・エージェンシー取引部門責任者、ラリー・ミルスタイン氏は「経済成長が緩やかなペースにとどまっている上、原油や商品(コモディティー)は値下がりし、インフレ期待も低下している。そうした中でFRBが利上げすることに投資家は懸念を抱いている」と述べた。
7日に発表された7月の米雇用統計が堅調な内容だったことから、FRBが来月に引き締めを開始する可能性は高まっている。しかし、FRBが利上げサイクルに入れば米国をはじめ世界に悪影響が及びかねないと心配する投資家は多い。
さらに、FRBの超緩和政策が株価と債券価格を大きく押し上げてきたことを考慮すると、FRBが緩和姿勢を後退させればこれらの金融資産の価値は下落するのではないかとの指摘もある。
クレディ・アグリコルの債券戦略グローバルヘッド、デビッド・キーブル氏は「タームプレミアムが低いのは、(投資家が株式やジャンク債、新興国資産の相場下落リスクに備えたヘッジを求める中で)安全逃避の買いが広がっている表れだ」と語った。
タームプレミアムが一向に上昇しないこともあり、指標となる10年債利回りは歴史的に見て低い水準にとどまっている。このため、これまで危機時の水準にあった金利の正常化プロセスの一環として同利回りが年内に3%向けて上昇すると予想していた市場アナリスト、エコノミスト、ファンドマネジャーは困惑している。
10年債利回りは10日、米株高を背景に7日の2.173%から2.238%に上昇した。だが、6月の日中取引で記録した昨年9月以来の高水準にあたる2.5%からは低下している。
FRBは最近の金融政策報告で「(タームプレミアムが)より正常な水準へ大きく反転する可能性は、いまだ資産価格を脅かす潜在的リスクだ。特に経済成長について明るい材料がないときにこうした反転が起きればなおさらリスクは大きい」と警告した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiDg8SJ1-PNAhXFjJQKHchMBKwQFggjMAE&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12655068274443284796304581163234039319632&usg=AFQjCNEOSSOcGhPY4Cw4rjMKJHP8w_OuBw
英不動産市場、真のリスクは住宅セクターに
By
STEPHEN WILMOT
2016 年 7 月 8 日 14:51 JST
【ロンドン】英国が欧州連合(EU)離脱を決めた後、同国の商業用不動産市場が機能不全に陥ったことが今週表面化した。事務所や店舗に投資し、通常は日々の流動性を供給するミューチュアルファンドが、その扉を閉ざした。
しかし本当のリスクは、商業用不動産ではなく居住用不動産にある。賃貸用に集合住宅を購入した中小投資家も、英国の不動産バブルは終わったと判断すれば、事態は本当に面倒なことになるだろう。
いままでに、突然の評価減などを受け、6つのファンドが取引を停止した。英保険大手プルーデンシャル傘下のファンド運用会社M&Gインベストメンツは先週、資産規模46億英ポンドのファンドについて約5.5%の評価損を計上した。アバディーン・アセット・マネジメントは解約を希望する投資家に17%の減価を容認するよう求めた。同社はファンドの評価が約7%下落したとみている。残り10%は現金化する際の対価だ。不動産を1週間以内に売却するためには、割り引く必要があるためだ。
オープンエンド型の不動産ファンドは、2013年から15年にかけて81億ポンドの資金を集めた。ファンドはその資金を投資する必要があり、既に高くなっていたロンドンの不動産相場が一段と過熱した。ここにきて一部の投資家が逃げ出し、ファンド運用会社は資産売却を強いられている。解約を停止しても、この動きは止められない。英中銀イングランド銀行は5日に発表した金融安定報告で、オープンエンド型ファンドの構造は「あらゆる市場の調整を増幅する可能性がある」と予測して警告した。
リスクは、不動産の不良債権が08年のように金融システムを機能不全に追い込むことだ。だが、銀行は当時よりもはるかに備えを固めている。英国の商業用不動産を裏付けとする債権総額は、07年当時よりも約3分の1少ない上に、融資基準は厳格化している。
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-OU609_PropHe_G_20160707085250.jpg
英国の賃貸物件購入用ローン(単位:十億ポンド)
本当に悪夢のような展開は、居住用不動産市場で同じような投資家の売りの波が生まれることだ。投資家が住宅価格の値上がりを狙い低利の資金を利用したため、英国の銀行では、いわゆる「賃貸物件購入」用ローンが主な成長分野になってきた。こうしたローンは、英国の有担保貸し出し残高全体の17%を占めている。
ミューチュアルファンド投資家に追随して居住用不動産の所有者も逃げ出すと、高いことで知られる英国の住宅価格の調整につながる可能性がある。イングランド銀行が5日に「賃貸物件購入の投資家は景気循環に従い行動する可能性があり、住宅市場の循環全体を増幅する可能性が高い」と警告した意味はここにある。
住宅資産を担保とした借り入れはまだ盛んではないが、大多数の英国人にとって住宅は純資産の中で高い割合を占めているため、住宅価格の下落は消費経済に厳しい痛手となるだろう。
最近の税制改正により、特にロンドンのような高い不動産市場においては、賃貸物件購入はかつてほど利益の上がる取引ではなくなった。だが、金利がこれほど低い中、しかもしばらく続く可能性が高い中で、おそらく大多数の不動産保有者にとっては引き続き利益を生むことだろう。これに住宅を売却する難しさと費用を合わせると、投資家が自らの資産を抱え込む可能性はさらに高くなる。住宅価格が下がり始めれば、さらなる売りを誘う可能性があり、自らの予測を実現するような下げ相場になるだろう。
約350億ポンドの資産を運用する不動産ファンドの解約が生み出した懸念を思い、5月だけでも182億ポンドのローンが組まれた賃貸物件購入が解消され始めた場合を考えると、イングランド銀行が心配しているのは間違いない。
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