http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/494.html
Tweet |
内向き強める欧米、世界の覇権狙う中国
中国の指導者はグローバル思考で戦略的な計画を実行
主要国の中で、中国ほど自由貿易と投資の恩恵を受けてきた国はない。西側世界でのポピュリズム台頭が中国に絶好の機会を提供している(英語音声、英語字幕あり) Photo: Getty
By ANDREW BROWNE
2016 年 7 月 6 日 18:02 JST
【上海】西側世界でグローバリゼーションが後退している。ポピュリスト(大衆迎合主義)的風潮が顕在化した直近の最も衝撃的な例は、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)だ。こうしたなか、西側が後退した隙間は新勢力が埋めていくと考えるのが妥当だろう。
関連記事
中国「シルクロード構想」はテロ対策になるか
欧米でポピュリズム台頭、背景にあるもの
英EU離脱特集
中国は過去数年にわたり、この機会を虎視眈々と狙ってきた。世界経済に成長と投資が欠乏するなか、中国は勢いと富を兼ね備えている。現在、同国の指導者らは国際的野心のようなものに突き動かされているが、これは米国が「マーシャル・プラン」の下で第2次世界大戦後の欧州を再構築した時に似ている。習近平国家主席は長年続いた外交面での気後れを捨て去り、「奮発有為(発奮して何事かをなす)」という新たな行動主義的標語を考え出した。
現在の西側諸国はテロの脅威のほか、多くの人が制御不能と捉えている移民問題などを受けて内向きになっているが、問題なのはグローバリゼーションがあるべき道をたどっているのかというより、その道を中国が引き継ごうとしているのかなのだ。
香港浸会大学で中国を長年ウオッチしているジャン=ピエール・カベスタン氏は「中国が望む世界秩序とはどのようなものか」と問うている。
グローバリゼーションのシンボル
西側が主導権を握らないのであれば、中国が握ることになろう。中国はかつてグローバリゼーションのシンボル的存在だった。グローバリゼーションの巨大なうねりが勢いを増した1970年代後半、中国の指導者は絶妙なタイミングで自国経済を開放した。
そこでは資本、モノ、テクノロジーの自由な流れが変化を促すことが証明された。数億人の中国人が貧困から脱却し、多くの人が世界的な労働市場に組み込まれた。最初は玩具やスニーカー、そして後には携帯電話やノート型パソコンなど、価値の高い製品を生み出す労働市場にだ。
米欧におけるグローバリゼーションの後退は中国経済に厳しい課題を突きつけているが、それは致命的なものにはならないだろう。ここでも中国の出方は抜け目なかった。世界貿易が崩壊した2008年の金融危機以降、同国は輸出主導型の経済モデルから距離を置き始めた。現在、中国の主な成長エンジンとなっているのは国内消費だ。
中国はブレグジットから波及する金融ショックを乗り越えれば、欧州がこれまで以上に「中国マネー」を渇望することを目の当たりにするだろう。そして、中国の貿易慣行に欧州諸国が共同で対抗する機運も後退することになろう。
ハーグ仲裁裁判所の判決が試金石
欧州アジア研究所(EIAS)のシニアアソシエート、テレサ・ファロン氏は、南シナ海の領有権を巡る問題でオランダ・ハーグの仲裁裁判所が判決を下す今月12日に最初の試練が訪れると見ている。仲裁裁判所は中国に不利な判決を下すとみられているが、中国はそれには従わないと主張している。
国際法という極めて重要な問題について、EUは米国とアジアの同盟国を公然と支持するだろうか。あるいは中国を刺激するのを避けるため、支持をためらうのか。
‘「中国はEUの政策に影響を与えるため、EU加盟国内の2国間でけん制外交に出ることが少なくない」’
—欧州アジア研究所(EIAS)のテリーサ・ファロン氏
ファロン氏はアサン・フォーラムに向けた文書で、「中国はEUの政策に影響を与えるため、EU加盟国内の2国間でけん制外交に出ることが少なくない」と指摘した。
欧州経済は長期的な衰退期にあり、中国経済は成長している。欧州では雇用が減り、中国では増加している。現在の中国は労働集約型サービスに焦点を当てているからだ。
中国指導部はグローバル思考
潤沢な資金力を誇る中国企業は海外へ進出している。米調査会社ロジウム・グループの試算によると、2000年から14年の間に、中国企業は急増する対外投資の一部として欧州に500億ドル(約5兆円)以上を投じてきた。ロジウムは中国が保有する海外資産が5年間で3倍となり、20年には約20兆円に達すると予想している。
欧州が内部問題(政治分裂の回避が新たな優先事項となっている)に縛られ、その解決策を模索する一方、中国の指導者は世界目線で考えて戦略的な計画を実行している。
習国家主席は中国と欧州を結ぶ古来の貿易ルートに沿った、新たな繁栄の軸を作り出すのにエネルギーを注いできた。
戦略提携文書に署名し、握手する中国の習近平国家主席(左)とポーランドのドゥダ大統領(6月) ENLARGE
戦略提携文書に署名し、握手する中国の習近平国家主席(左)とポーランドのドゥダ大統領(6月) PHOTO: JACEK TURCZYK/EUROPEAN PRESSPHOTO AGENCY
そのルートに沿った中央アジア、中東、アフリカの国々は、港湾施設や原子力発電所、高速鉄道路線の建設で中国から資金を得ようと競い合っている。中国政府は「一帯一路」構想に3兆ドルほどを投じる方針だ。マーシャル・プランに投じられた額は現在の価値に換算すると1200億ドルほどだった。
多くが誤った方向に進む可能性もある。パキスタンのように政情が不安定な国が投資ファンドにとってブラックホールだったことが判明するかもしれない。中国企業は膨大な負債を抱えている。中国の指導者が気後れし、消費主導の成長モデルを支えるのに必要な、痛みを伴う経済改革の実行に失敗するかもしれない。
西側の保護主義が波乱要因にも
西側の保護主義が世界経済を揺さぶる要因になるというリスクもある。中国は信念を曲げず、海外のテクノロジー企業を締めだし、メディアをたたくという国家主義的な経済政策を推し進めている。ドナルド・トランプ氏は米国経済の問題が「アメリカニズムでなくグローバリズムを崇拝する指導層」にあると非難している。同氏は中国を相手取って貿易訴訟を起こすと警告している。
それでも中国は強力な影響力を持つ。グローバリゼーションが自由市場とリベラルな価値の普遍的勝利につながると期待していた人は、そうした期待を中国の国家資本主義および政治面での過度な権威主義と調和させる必要に迫られるだろう。
自由主義ではない中国がますますルールを定めるようになる。それは財政がぐらつき、グローバルな視点を狭めている西側が支払う代償だ。
(筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト)
関連記事
中国「シルクロード構想」はテロ対策になるか
中国勢、過去最高の海外企業買収ペース 年初来で総額680億ドル
習主席、パキスタンで「一帯一路」の旗艦事業発表へ
中国、外国サイト遮断へ規制強化案
欧米で台頭するポピュリズム、背景にあるもの
英EU離脱特集
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj5gPnuyt7NAhWDJ5QKHYogCiQQFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11860788629023424577004582171932241507386&usg=AFQjCNEFo1YQvAfCqW0NxNE_b-9NgaPOVA
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。