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英スコットランド・アバディーンの北にある、自身が所有するゴルフ場を回りながら報道陣に応えるドナルド・トランプ氏(2016年6月25日撮影)〔AFPBB News〕
ヒラリー勝利がほぼ見えた11月の米大統領選 矛盾だらけのトランプ演説に米国民うんざり
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47226
2016.6.30 堀田 佳男 JBpress
こんなにも変わるものなのか――。
これが正直な感想である。昨年6月、共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)が大統領選に出馬して以来、暴言を含めて様々な主張を繰り返してきた。
だが今、過去の言い分と最近の発言とを比較すると、矛盾が生まれていることに気づく。昨年発言した内容を否定するかのように、時には都合のいいように、主張を変えているのだ。
日本の政治家にも見られることではある。だがトランプは大統領候補である。主張や公約の不一致は、政治家としての資質と将来性に大きなマイナスとなるばかりか、当選の可能性を自ら低下させてしまう。
いくつか例を挙げてみたい。
■イスラム教徒の入国完全禁止
まず最もトランプらしい発言の1つであるイスラム教徒の米国入国の禁止についてだ。昨年12月7日、サウスカロライナ州での集会で、トランプはこう言い放った。
「米国政府が諸要件を見極めるまで、イスラム教徒の入国は完全に禁止したい」
「完全に(Total and Complete)」という単語を使って語彙を強めたところに、トランプらしさが滲んでいる。発言直後から、米国内のイスラム教徒だけでなく、世界中のイスラム教徒の反発を招いた。
しかし今年6月25日に発言内容を変えた。英スコットランドのゴルフ場で記者たちに対し、「(入国禁止は)すべてのイスラム教徒ではなく、テロ国家と思われる国のイスラム教徒」と主張を和らげた。
実は昨年12月7日の発言の5日前に、カリフォルニア州サンバーナーディーノで銃乱射事件が起きていた。犯人はイスラム教徒でイスラム国(IS)に忠誠を誓う発言をした人物だった。
14人が死亡、17人が重軽傷を負ったテロ事件で、トランプはイスラム教徒に激情型の対応をしたわけだ。それを「トランプらしさ」と呼べはするが、米国大統領の言動としては最もふさわしくない振る舞いかもしれない。
またトランプが予備選中、共和党有権者から支持された理由の1つに「誰のカネにも頼らない」という姿勢があった。
選挙資金は基本的に自己資産でまかなうというのだ。それがトランプの候補としての「売り」だった。ロビイストや特定の利益団体から多額の献金を受けないことは、確かに既存の大統領候補と異なる点である。
「俺は誰の操り人形にもならない」というセリフを、筆者も米取材中に何度か聞いた。有権者にとっては説得力のある言葉だった、はずだ。
■最初の献金メール
ところが6月下旬、トランプは全米の有権者(たぶん1000万人以上)に献金を募るメールを送付した。筆者にもメールが届いたほどだ。「最初の献金メールです」という箇所にはアンダーラインが引かれてさえいた。
実はこれまでも、トランプに献金したいという有権者はおり、トランプ選対は寄付を受けていた。だが、自らが一般有権者に「選挙資金を寄付していください」と懇願したのは初めてだった。
と言うのも、トランプ選対には5月末の段階で選挙資金が130万ドルしか残っていなかったのだ(連邦選挙管理委員会報告)。自己申告では資産1兆円超と豪語するトランプだが、資産の多くは不動産や含み資産とみられており、現金は意外にも少ないとの見方がある。
トランプはここまで、約5500万ドル(約55億円)の自己資金を選挙に使っている。トランプが豪語する「キャッシュは無限にある」との発言が本当であれば、一般市民に献金を懇願することはないだろう。それは紛れもなく、昨年からの選挙公約を破ることになる。つまり、普通の候補になったという証だ。
さらにトランプの過去と現在の言動に違いが生じているのが、不法移民への処遇である。
昨年から米国内にいる約1100万の不法移民をすべて強制送還させると繰り返しのべてきた。昨年11月には「強制送還部隊」を組織して、国外に退去させるとも発言した。
だが共和党代表候補になることが確実になると、トランプは主張を変えた。
「私は誰よりも寛大な人間ですから」
ブルームバーグとのインタビューで言い放った。そして記者から強制送還の公約を確認されると、こう返すのだ。
「いや、大々的な強制送還はしません」
共和党レースに勝ったことで、ライバル候補を蹴落とすための過激な発言はもう必要なくなったため、より現実的な政策へと変更したということだ。明らかな矛盾である。
■トランプの壁の高さは?
現実問題として、全米中に拡散している約1100万の不法移民を探し出し、拘束し、国外退去させる手法と予算は途方もないことである。
国外退去させるにしても人数を限定するか、合法的に滞在させて、勤労および納税という流れの方が長期的には国家にとって得策のはずだ。
「トランプの壁」の建設にしても、意欲は予備選終盤まで衰えなかったが、数字がどんどん変わっていった。笑えるほどである。昨年9月、トランプは壁の高さを「25フィート(約7.5メートル)」にすると述べたが、今年2月9日には「40フィート(約12メートル)」に上がった。
驚くのはスーパーチューズデー直前の2月25日の発言だ。
午後の集会で壁の高さを「65フィート(約20メートル)」と言ったが、夜半には「80フィート(約24メートル)」に変化した。高さ24メートルというのはビルの8階か9階に相当する。
数字の変化を見るまでもなく、トンラプは確固とした計画に基づいて話をしていないことが分かる。ほとんど思いつきで数字を上げていっただけである。
これは何を意味するかと言えば、トランプの選挙対策本部の組織力の脆弱さである。政策がしっかりと煮詰められていないばかりか、演説を指導するプロや、発言内容を逐一チェックする地道な作業が疎かになっている。
トランプのこうした主張の矛盾は、選挙戦術と言うより、きわめて思いつきに近い言説の変更と捉えるべきだろう。もちろん、民主党ヒラリー・クリントン候補との本戦での戦いにはマイナス要素にしかならない。
現段階で11月8日の投票結果を予想することは早計かもしれないが、筆者は春先から今年の対戦がヒラリー対トランプになり、最終的にはヒラリー有利であると述べてきた。
■51.5%の得票率でヒラリー勝利
2012年の選挙でも、同年6月にはバラク・オバマ大統領対ミット・ロムニー候補の戦いなり、得票率51%(誤差0.5%)でオバマ氏の勝利と予測した。実際の数字は51.4%だった。
今年の選挙も、実は4年前に似ている。全米50州に割り当てられた538という選挙人の取り分けでも、オバマ氏が獲得した州をヒラリーが取る可能性が高い。
低いインフレ率と失業率、直近の1人あたりの経済成長率(GDP)、候補の資質、選対の組織力、資金力、政策等々を考慮すると、ヒラリーの得票率は4年前の数字に似て、51.5%前後になるだろう。
トランプは主張の矛盾などによって、支持率をさらに下げると読む。これが一応「大統領選をライフワーク」にしている筆者の今の見立てである。
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