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仏北部リールで、英国の国旗(左端)と欧州各国の国旗を掲げる人(2016年6月25日撮影)。(c)AFP/PHILIPPE HUGUEN〔AFPBB News〕
ブレグジットは阻止できるか? 何が起きても不思議はない未知の世界
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47228
2016.6.30 Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年6月27日付)
ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)が決まってから4日。果たして後戻りする道はあるのだろうか。
先週のブレグジットの決断を覆すよう下院議員に求める嘆願書は330万の署名を集め、なお増え続けている。4分の3がEU残留に投票した若者たちは、ソーシャルメディアに殺到し、自分たちの将来が引退したベビーブーム世代によって決められたことへの怒りと失望を吐露している。
トニー・ブレア元首相は2度目の国民投票は可能だと示唆しており、金融市場が揺らぎ、ブリュッセルがすでに英国に扉を閉ざしつつある中、高い買い物をした後の後悔が広がる可能性は十二分にある。では、国民は考えを変えられるのだろうか。後戻りする道はあるのだろうか。
どんなこともあり得るが、今の状況では、自信を持って言えることは2つしかない。そして、その2つの発言には一貫性がない。
1つ目は、ブレグジット支持派はこれから、英国とEUの関係解消は高くつき、とてつもなく大きな混乱を招くことを知る、ということだ。関係の解消は政治、法律、憲法の各面で、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長やマイケル・ゴーブ司法相といった離脱派の荒っぽい主張が想像していたより、計り知れないほど難しい。
2つ目は、議会――この問題に関して主権国として意思決定する組織――が国民投票でブレグジットに投票した1740万人の意思を覆すことを決めるまでには、本当に驚くべき何かが起きなければならない、ということだ。嘆願書に数百万人が署名しただけでは十分ではない。絶対的な最低必要条件は、考え直すことをはっきり約束した政党が総選挙で勝利を収めることだ。
■宴の後で・・・
有力なブレグジット派は、英国独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージュ党首が「独立記念日」と呼んだものを祝っており、ジョンソン氏はダウニング街10番地(首相官邸)を狙う計画を練っている。この先には、二日酔いが待っている。
離脱派の間でも、より思慮深い人たちは、40年間続いた外交、経済政策を破棄することが思っていたほど容易ではないことに気づいた。たとえ事態を極力難しいものにしようとする一部EU諸国の決意を脇に置いたとしても、障害はとてつもなく大きい。
翻って英国では、離脱派はまだ、2年間の脱退手続きの時計を起動させるEU条約50条をいつ発動するかについてさえ合意していない。
より根本的には、国民の判断を法律として制定しなければならない下院議員の3分の2は、議論の残留側についていた。先週の投票結果を覆す用意がある人は少ないが、国民投票はEUの完全なメンバーシップを何に置き換えるかについて何も語っていない。
現時点では、過半数の人は恐らく英国を単一市場にとどめておく何らかの形の連合協定を支持するだろう。だが、これは明らかに、離脱キャンペーンの指導者たちと相いれない。その結果生じるのは、政治的なまひ状態かもしれない。どんな取り決めも議会が承認しなければならないからだ。
意見の違いはここで終わらない。離脱派が採用した1つの主張は、EU離脱でお金が浮いて国営医療制度(NHS)やその他の公共サービスに費やせる、というものだった。しかし離脱派には、公共支出を削減し、税金を減らすことを望む右寄りの市場リベラル派の大きな集団も含まれている。誰かが失望することになる。
どうすればこうした対立を解消できるのか、簡単には分からない。保守党の活動家たちがジョンソン氏をダウニング街に送り込んだ場合は特にそうだ。ジョンソン氏は保守党下院議員のかなり大きな集団に忌み嫌われており、下院で忠誠心を得るのに苦労するだろう。
問題はウェストミンスター(英議会)で終わらない。EU加盟は、スコットランドと北アイルランドへの地方分権協定に埋め込まれている。これらの地域でEUの法律を無効にするためには、スコットランド議会と北アイルランド議会の同意が必要になる。
スコットランドのニコラ・スタージョン行政府首相はすでに、スコットランド民族党(SNP)が多数派を占める議会が拒否することを明確にしている。憲政危機は避けられないように見える。今回はスコットランドの英国離脱が決まる可能性がある2度目の住民投票も不可避に思える。
■気が変わったか?
では、すべてがそれほど難しいなら、考え直すことはできないのか。何より明白なことは、議会が国民投票を認める法律を制定したとき、結果を尊重することを明確にしたことだ。投票はブレグジット派が勝利を収め、過半数の票を廃棄することは、憲法上、異常な行動になる。確かに、ほかの欧州国家はEU問題について自らの判断を覆したが、そうした国の憲法は英国とは異なり、利害もずっと小さかった。
保守党の離脱派は、考えを変えるつもりはない。だから再考するためには、残る27カ国のEU加盟国と新たな取り決めを協議し、その結果を2度目の国民投票にかける明確な負託を持った新政府の選出が必要になる。
ほかの状況であれば、これはぎりぎり考えられたかもしれない。だが、労働党は現在、ジェレミー・コービン氏によって率いられている。同氏は世間に広く選出される見込みがないと見なされている政治家で、いずれにせよ、よく言ってもEUについて中途半端な人物だ。
先週末起きた労働党のシャドーキャビネット(影の内閣)の大量辞任はいずれコービン氏の党首辞任につながるかもしれないが、そこから新たな野党党首が総選挙で勝利を収めると想像するのは、大きな飛躍だ。
また、このシナリオでさえ、ブリュッセルのまひ状態という犠牲を強いて英国が自らと議論する間、残るEU27カ国があと2年ほど傍観する意思があることを想定している。確かに、この段階に至っても、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は恐らく英国がEUにとどまることを望むだろう。また、英国が50条を発動した後でさえ、翻意は可能だ。この道を阻むのは、政治だ。
■何でもあり得る
では、親欧州派はあきらめるべきなのだろうか。そうではない。英国政府が50条を発動しない限り、英国はEU加盟国であり続ける。今回の国民投票で解き放たれた政治勢力は、前例がなく、予測不能だ。
今後2年ほどで、英国の政治の全面的な再編が起き、新しい、中道主義の親欧州政党が創設されると想像することは、決して非現実的ではない。だから英国が欧州大陸から離れないことを望む人たちは、「考えられないこと」を考え、それを「考えられること」にするよう努力できるはずだ。
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