http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/841.html
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※関連参照投稿
「デフォルトを嫌う金融家のため、危機を頼りにする軍需産業のため、「東西」の合作で分断と対立を煽られたウクライナ」
http://www.asyura2.com/14/senkyo162/msg/467.html
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[創論]ロシアとどう向き合うか
イタリア元首相 マッシモ・ダレマ氏/リトアニア外相 リナス・リンケビチュス氏
プーチン大統領が率いるロシアとどう向き合うべきなのか。ウクライナへの軍事介入を巡り対ロ制裁が続いているが、テロや難民問題などを抱える欧州では制裁を解除すべきだとの声も出てきた。欧州内でそれぞれ融和派、強硬派とされるイタリアのマッシモ・ダレマ元首相と、リトアニアのリナス・リンケビチュス外相に聞いた。
■対テロで協力不可欠 イタリア元首相 マッシモ・ダレマ氏
――ロシアのウクライナへの軍事介入を受けて「新冷戦」とも呼ばれる状況が続いています。
「プーチン政権がナショナリズムに訴え、ウクライナのクリミア半島を併合し、(東部の)親ロ派を軍事支援していることは大きな過ちだ。ロシアは冷戦後、欧米がロシアを大国と見なしていないことに反発し、攻撃的な行動を取るようになった。北大西洋条約機構(NATO)がロシア国境まで拡大し、ロシアを包囲しようとしているとの印象を与えてしまった面もある」
「冷戦の構図をつくり出してはならない。最大の脅威はロシアではなく、イスラム過激派によるテロだからだ。イスラム過激主義とテロ対策にはロシアとの協力が必要で、敵対してはならない」
――対ロ制裁は解除すべきだとの考えですか。
「我々は制裁で高い代償を払っている。欧州経済の回復力を弱める一因になっている。米国と対ロ戦略の見直しを協議する時だ。制裁解除にはウクライナ東部の停戦合意を履行させるという条件があるが、ロシアと合意する可能性は数カ月前と比べて高まっている」
「原油価格の急落によりロシア経済は厳しい状況にあり、制裁の痛みは強まっている。生活水準が低下すればプーチン政権の支持も下がりかねず、紛争を続ける意欲はそがれているはずだ。クリミア半島をロシアが明け渡すと考えるのは現実的ではないが、少なくとも部分的に制裁を解除することはできる」
――国境を侵したクリミア併合を容認すれば、中国などの行動にも影響しませんか。
「同じような行動は受け入れられない。しかし、多くの住民はウクライナに戻ることを望んでいない。西側はコソボ独立を承認したことで国境は不可侵という主張は説得力が弱まった。ここは現実的に対処すべきだ」
――ロシアが求めているのは勢力圏の分割との見方があります。
「NATOと欧州連合(EU)の拡大を制限することをロシアに約束するのは可能だ。ウクライナなど旧ソ連諸国を加盟国にするのは現実的ではない。同時にウクライナの独立を守ることも我々の責務だ。自由貿易協定(FTA)や連携協定を通じウクライナを支援する。EU加盟が狙いでないことを明確にすればロシアも受け入れられる。ウクライナはロシアとEU双方と良好な関係を維持するため、橋渡し的な国になりえる」
「新たな安全保障の枠組みを構築することが欧州の最重要課題だ。ロシアとNATOはテロやイスラム原理主義への対策、不安定化する中東、中央アジア、北アフリカ情勢で協力できる。率直で生々しい議論が協力構築の前提になる」
――シリアではロシアが空爆を強行し、アサド政権を支援しました。
「ロシアは地域での影響力を維持するためにアサド政権を支援した。ロシアが成功したのは、欧米が数カ月にわたり戦略のないまま、ちぐはぐな対応を繰り返したためだ」
「ロシアは欧米が支援する反体制派と和平で合意しなければならない。この戦争に勝利することはできないし、トルコやサウジアラビアなどイスラム教スンニ派のロシアへの敵対心が高まっている。アラブとの関係悪化のリスクがロシアを欧米との協力に向かわせる」
――クリミア併合も中東混乱も、米国のリーダーシップの衰えが背景では。
「世界は米ソ冷戦という二極時代から米国一極化を経て、多極的な混乱の時代に入ったとみている。多極的な秩序を構築する必要がある。米国が世界秩序に果たす役割は変わらないが、米国はアジアシフトを進め、地域への関与を減らしていくだろう。欧州は地域の安全保障を担わなければならない。中東を安定化させなければ、我々の代償は難民問題も含めてあまりにも大きいものになる」
――ロシアとの協力により欧州の理念や価値観が犠牲になるとの批判もあります。
「平和がすべての大前提だ。民主主義や自由、人権といった価値観は平和が無ければ意味がない。対立はロシアの民主化にとっても最悪の展開だ。プーチン政権がナショナリズムをあおり、独裁に利用するからだ。ロシア国民が米国やNATOを脅威と受け取らず、大国として扱われていると感じるようになれば、民主化を促しやすくなる」
Massimo D’Alema 1998〜00年首相、06〜08年プロディ政権で外相。イタリア左派を代表する政治家。与党民主党議員。67歳。
◇ ◇
■原則守り団結対峙を リトアニア外相 リナス・リンケビチュス氏
――リトアニアは対ロ強硬派の急先鋒(せんぽう)と見られています。
「ロシアがウクライナに軍事介入を続け、その事実を否認しているという現実がある。これは我々のロシアに対する政策や期待、リスク評価がうまくいっていないことを示している。外交の重要性は否定しないが、対話が(現実を隠す)偽装に利用されている。まずロシアに紛争の当事国であることを認めさせるべきだ。ロシアが変わらなければ対話は機能しない。国際法の原則や価値観に基づき、団結して対峙することによってしか侵略は止められない」
「一貫性の欠如こそが問題だ。2008年にロシアがジョージア(グルジア)に侵攻し、領土の一部(アブハジアと南オセチア)を占領した時、欧米は当初の撤退要求を曲げ、数カ月後には『対話』の名の下に現状を受け入れてしまった。私は当時、クリミア半島でも同じことが起こりえると警告していた。教訓を得たのは我々ではなく、ロシアだった。たいした犠牲を払わずにある国の一部を占領できることを学んだのだ。我々の対応がロシアのクリミア併合を招いた面も否めない」
――NATOは4月、ロシアのクリミア併合後に停止した対話の枠組みを2年ぶりに再開しました。
「対話を主張する一部加盟国の要請を受けて実現したが、深刻な意見の相違があり、実務協力には戻れないとの認識が双方から示された。ロシアに建設的な話し合いの用意があるのかどうかは疑わしい。協議の直前にバルト海の公海上でロシア軍機が米海軍の駆逐艦と異常接近するなどの事件が続けて起きた。ロシアが孤立していないとの宣伝に対話が利用されるだけならば意味がない」
――欧州では、対テロや難民問題でのロシアとの協力を優先し、対ロ制裁を解除すべきだとの声も出ています。
「ロシアのウクライナ東部への介入に対して発動した経済制裁について、EUは夏場に継続するかどうかを判断する。最近、現地を視察したが、停戦違反は常態化している。親ロ派武装勢力よる迫撃砲の攻撃が我々の300メートル手前で起きた。停戦合意の履行を制裁見直しの条件とすることで、EU加盟国は合意したはずだ。停戦合意にはウクライナ側も東部で選挙を実施し、自治権を与えることが盛り込まれているが、安全が確保されなければ進展は難しいだろう」
「テロの脅威や難民問題を理由にロシアの行動に目をつぶることがあってはならない。ロシアはシリアへの軍事介入により力を見せつけたが、我々のパートナーとしてではなかった。地域での影響力維持、ウクライナ問題で欧米の譲歩を引き出す思惑も透け、目的は国際社会とは異なる。難民問題も(欧州の揺さぶりに)利用している」
――オバマ米政権はウクライナ問題への深入りを避けてきた印象もあります。
「世界戦争に発展しかねないロシアとの対決を回避しなければならないことは理解できるが、米国のより積極的な関与を我々は必要としている。米国のリーダーシップが弱まれば、その空白を平和や秩序の維持に関心のない別の大国が埋めてしまう。そんな状況が各地で起きている」
――クリミア併合の国際秩序への影響をどう見ますか。
「連鎖的な反応が起きる可能性は否定できない。ロシアの手法を他国が使っても驚きはない。大国が拒否権を持つ国連安全保障理事会の限界も改めて露呈した。リトアニアが議長国だった14年に、ウクライナを巡り多くの問題提起をしたが、いずれも拒否された。世界平和を構築すべき安保理の常任理事国が紛争当事国であれば、何も動かない現実を突きつけられた」
――2国間関係を含め、各国はロシアとどう付き合うべきなのでしょうか。
「私が国防相を務めた当初、ロシアにとってリトアニアは存在していなかった。隣国として招待した軍事演習や会議は一切無視された。これが02年に一変した。ブッシュ前米大統領が訪問し、リトアニアの敵は米国の敵だと明言したことで、ロシアはわが国と建設的な関係を持つようになった。一貫した明確なメッセージがカギになる。挑発を恐れて行動を抑制したり、主張を後退させたりした印象を与えることが逆に(相手を攻撃的にする)挑発になる。対ロ政策で繰り返されてきた誤りはそこにある」
Linas Linkevicius 1990年代と2000年代に2度国防相を務め、NATO大使。12年から現職。55歳。
◇ ◇
〈聞き手から〉窮地の欧州、日本に警鐘
ロシアはシリアにも軍事介入し、欧米が退陣を要求する同国のアサド政権を支援する。シリア内戦は過激派組織「イスラム国」によるテロや難民問題の起点となっており、ロシアは欧米を交渉のテーブルに引きずり出した。ロシアへの対応は伊勢志摩サミットでも議論となる。
対ロ政策で欧州は分裂しかねない。原則を説くリンケビチュス氏に対し、現実主義に傾くダレマ氏の意見はテロや難民問題など多方面から課題を突きつけられ、追い詰められる欧州の姿も映し出す。
ドイツなどは対ロ制裁解除の環境を整えるために仲介外交を加速しているが、ウクライナ問題でロシアはむしろ強硬になっていると交渉にあたる欧州の外交官は明かす。
「主張を後退させたとの印象を与えれば逆にロシアを挑発することになる」。リンケビチュス氏の発言は、北方領土問題の解決を目指して対ロ接近姿勢を強める安倍晋三首相への忠告のようにも聞こえた。
(モスクワ=古川英治)
[日経新聞5月22日朝刊P.9]
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