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「サイクス・ピコ」100年後の中東
インターナショナル・アフェアーズ・エディター デビッド・ガードナー
第1次世界大戦中に英国とフランスがひそかに結んだ「サイクス・ピコ協定」から100年がたった。オスマン帝国の領土を英仏の勢力圏に分割する密約は、両国の都合で取り決められた。
シリアは5年にわたる内戦で分断され、イラクは2003年の米国主導の侵攻で分裂した。民族・宗派が割拠する同協定以前の状態に逆戻りしたことになる。
過激派組織「イスラム国」(IS)は14年、シリア東部とイラク西部にまたがるカリフ制国家の樹立を宣言し、「サイクス・ピコを破壊した」と主張した。
今、我々が目にしているのは暴力による「ミレット(宗教共同体)」の再興だ。これはオスマン帝国時代の行政単位で、支配下に置いた人々に一定の自治と民族・宗教的な結束を与えたものだ。
欧州がアラブの領土を人工的に切り分けたことは、間違いなくオスマン帝国の遺産を傷つけた。しかし、英国がエジプトとイラクで、フランスがシリアで行ったような介入は、恐らくサイクス・ピコ協定以上にアラブ人の将来をゆがめた。これに輪をかけたのが強権的指導者の出現と、1953年のイランのクーデターや2003年のイラク侵攻など様々な介入だった。米国をはじめとする西側諸国は、共産主義やイスラム主義が広がるのを恐れ、強権的指導者を支持した。
シリア和平のための外交は暗礁に乗り上げ、イラクは崩壊の危機にある。両国から国境を越えて広がる暴力や破壊力は衰える兆しがない。地域が元の状態に戻るすべは、恐らく何らかの形の緩やかな連邦制以外にないだろう。米国などと組んで地上戦を戦っているシリアのクルド人は、すでに自治を行っているイラク系クルド人がしたように、自分たちが支配するトルコ国境南側の広大な領土を将来のシリア連邦の自治地域だと宣言した。
光明は中央集権支配を志向する人々でさえ、連邦制を話題にし始めたことだ。だが、悲しいかな、共同体間の信頼や互恵のつながりも交渉を行う枠組みも全くないなか、有効な施策がすぐに生まれてくるとは思えない。中東は引き裂かれ、軍閥の支配が続く。
(電子版、17日)
[日経新聞5月22日朝刊P.13]
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