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患者が治らない状態をキープして儲ける病院、成果に無関係に治療費を支払わせ続ける病院
http://biz-journal.jp/2017/11/post_21301.html
2017.11.10 文=新見正則/医学博士、医師 Business Journal
今日は医療費のお話です。“極論君”が言います。
「医療費は最初に契約を結んで、それが達成されないとき、または満足できないときは、全額返金とするシステムが望ましい。最初にお金をもらって、そして返金というシステムが理想だ」
“常識君”のコメントです。
「江戸時代などは、医者にかかると治療代はあるようでないものでした。まず江戸時代には医師免許はありません。規則上は誰でも医師になれたのです。そして今の日本のような全国を網羅する保険システムがあるわけもなく、医療費は適当でした。しかし、ある程度の相場というものはあったようです。支払いも多くが後払いであったように、武家や大店の商人を相手にするような場合は、医療費も後払いであったようです。医師に診てもらえるのはある程度の階層以上の人で、多くは医者とは無縁の生活を送り、病気になれば民間療法でしのいでいました。
そんな医療とは無縁の人が致し方なく医師にかかれば、そして比較的高額であれば、後払いでは医療費を取り損ねます。ですから、庶民相手の医師ではその場で医療費を請求したという記載が多数あります。しかし、極論君が言うように、最初にお金を頂いて、その後満足できないときは返金というシステムは見たことがありません。なぜ極論君はそんなシステムがいいと思うのですか?」
極論君のコメントです。
「今の医療は満足できる・できないとは無関係に、お金を支払っています。レストランでまずい食事を食べても、オーダーした以上は客の責任だから全額払えというシステムです。それでは医療サイドの向上もあまり望めませんし、また患者の満足感も不十分と思っています。今の医療では、患者の訴えをすぐに治せる医者よりも、なんとなく症状を軽くして、でも治らない状態を維持して患者さんをキープしている先生のほうが儲かります。また、手術でも1回で成功させるよりも、合併症が起こって何度も手術を行う病院のほうが儲かるシステムです。それは結果よりも行った医療行為に対して支払いが行われているからです。そんなおかしなシステムは改善すべきと思いませんか?」
■全額返金制度
常識君の意見です。
「確かに極論君の言うとおりです。しかし、医療は最善を尽くしても残念な結果に終わることも少なからずあるでしょうから、満足感だけを指標に支払いを決めるというのは、いかがなものかと思います」
非常識君のコメントです。
「1958年(昭和33年)に国民健康保険法が改正されて、現状と同じような医療システムが確立されました。誰でも、いつでも、どこでも病院にかかれるシステムです。本当に素晴らしいシステムだと思っています。現状では保険によって通院できる病院を制限されることもなく、また最大の負担割合も3割で、かつ暦月の支払いに上限が設けられています。どれだけ医療を受けようが、支払いには上限があるのです。
そうであれば、ちょっとでも良さそうなことはなんでも行うようになりますね。総量規制がされていないと、どんどんと医療費は膨張します。今でも年間40兆円を超えていて、そして多くの医療関係者が現状のシステムの将来的な維持は難しいと思っています。ですから、個人や病院が利用できる総額を決めてしまえば、不必要な医療は行われなくなります。また少々のご利益があっても採算という観点から排除される医療もあるかもしれません。しかし、どこかで歯止めをかける必要があるのです」
極論君の意見です。
「では、まず試しに自由診療で『●●円で●●を治します。そして治らなかったとき、ご不満なときは全額返金します』といった医療を行えば良いのです。保険診療ではないので自由が利きます。そして本当に自信があれば、患者さんも集まるでしょう。でも自由診療の領域でもそんなシステムはほぼ目にしません。本当に行っている治療に自信があれば、そんなことはできそうですが、全額返金システムはあまり目にしませんね」
非常識君の意見です。
「結果にコミットする医療ということですね。結果が出なければ全額返金というのは、よほど自分の治療に自信がなければできないシステムです。裏を返せば、多くの医療機関はあまり満足感を得られていないのに、でも医療を行っているという実績をベースにお金を頂いているということになります」
極論君の意見です。
「僕は結果にコミットする病院、クリニック、歯科医、鍼灸院などがあれば、つまり全額返金システムを設けているところがあれば、ぜひ行きたいと思っています。そんなことは無理なのでしょうかね。誰かやってもらいたいものです」
(文=新見正則/医学博士、医師)
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