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大腸がんの手術をおこなう高橋医師ら(都立駒込病院)
高齢者の大腸がん手術 肛門温存しても便失禁のリスク〈dot.〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170301-00000111-sasahi-hlth
dot. 3/3(金) 7:00配信
高齢者(75歳以上)へのがん手術には科学的根拠がなく、現場の医師の判断に委ねられている──。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2017」では、「高齢者のがん手術」と題して、各病院の判断基準や実情を取材している。今回は特別に、がんの中でもっとも年間罹患者数が多い大腸がんについて紹介する。
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全国7位の年間333例(14年)の大腸がん手術を実施する都立駒込病院の大腸外科部長、高橋慶一医師を取材した。同院には、高齢者が多く通院していて、患者の2割弱は80歳以上だ。
「大腸がんに限れば、高齢者の年齢のみをみて手術しないというのは古い話です。現在は、年齢が高くても全身状態がいいのなら、標準的な手術をおこないます。ADL(日常生活動作)や持病(併存症)の有無を評価して、全身状態がいいことを前提にすれば、術後の大腸がんだけの生存率は高齢者と高齢者以外とで差がないと思います」(高橋医師)
同院の01年から13年までの大腸がん手術3182例を、75歳以上と75歳未満で比較してもらった。結果、他病死を除いた大腸がんだけの術後5年生存率では、75歳以上が90.1%、75歳未満が91.4%とほぼ差がなかった。一方、他病死を含めた術後5年生存率では、75歳以上が75.4%、75歳未満が87.5%となった。高齢者のほうが12ポイントも落ちていた。
手術に関係なくもともとの持病によるものの影響が大きいとみられる。ただし、手術関連死が主たる原因とは考えにくいが、手術が引き金となって起きる免疫力の低下や術後合併症などの影響の可能性は考えられるという。
高橋医師はこう話す。
「年齢が高くなればなるほど他病死の割合が増えると思います。高齢者の場合は、術後合併症の管理が重要で、3割の患者さんには何らかの術後合併症が出ます。多いのは、せん妄と肺炎です。そのため術前評価をきちんとして、不測の事態に備えることが大切です」
高齢者手術の現状を知るには、地方の主力病院が参考になると考え、山形県立中央病院で話を聞いた。同院は大腸がん手術を、東北地方では2位となる年間229例(14年)実施している。外科部長の佐藤敏彦医師はこう説明する。
「地方では、もはや75歳でも高齢者とは考えていません。当院では大腸がん手術の手術症例(15年)の約3割が75歳以上です。おそらく全国的にも各県の中核病院では同じような比率になるのではないでしょうか」
高齢者にも原則、根治手術をおこなう。ただし、大きな手術は極力避けたほうがいいという。若い人であれば、再発のおそれのある周辺臓器を徹底的に取りきるケースでも、高齢者の場合、各臓器の機能低下を考慮して、そこまでしないことが多いという。
「80歳以上ではリンパ節郭清をおこなう範囲も通常よりは狭くします。徹底的に取ると、たとえば右結腸の場合では、膵臓の周りのリンパ節を取るため、膵液漏れや膵炎を起こすなど、膵臓への影響が出る危険性があります。直腸では側方リンパ節郭清をおこなうことで、骨盤内の排尿神経などの機能障害が出てしまうことがあります」(佐藤医師)
一方で過剰な温存手術も良くないという。とくに避けたほうがいいのは、「括約筋間直腸切除術(ISR)」。通常はこの手術で肛門機能を温存すれば、人工肛門(ストーマ)を装着しなくて済む。QOL(生活の質)を高める手術と言われる。しかし、高齢者には無理に実施するとかえってQOLの低下をもたらすと佐藤医師は指摘する。
「80歳を超えたらISRは無理にしないほうがいいでしょう。もともと加齢による筋力低下で肛門機能が衰えており、肛門機能を温存しても、便失禁をしてしまうことが多いからです。人工肛門を装着したほうがいい場合もあります。もちろん患者さんの希望を聞きますが、当科では、ISRの適応は80歳くらいまでにしています」(同)
大腸がんの高齢者の手術におけるエビデンス(科学的根拠)の確立は、進んでいるのだろうか。大腸癌研究会では『大腸癌治療ガイドライン』を作成し、全国の医療機関では原則これに従い手術がおこなわれている。ただガイドラインに従った標準手術を適応できる患者は全体の約7割という。
大腸癌研究会の会長で光仁会第一病院(東京都葛飾区)院長の杉原健一医師は、次のように話す。
「ガイドラインを適応できる7割は比較的若い人、健康で併存症のない人です。健康な高齢者はこの中に入ります。問題なのは残りの3割です。併存症を持った高齢者、弱った高齢者はガイドラインの治療にあてはまりません。その人には、個々の医師がこれまでの経験をもとに、手術すべきかどうか、ほかの治療法がよいかを判断しているのです」
長年、全国屈指の大病院に勤め、学会の要職を歴任してきた杉原医師だが、現在は、高齢者が多く集まる東京都内の小規模病院での臨床に従事しており、高齢者の手術に対する問題意識が高まってきたという。
学会では高齢者に関する演題が増えたが、「高齢でも腹腔鏡手術は安全にできる」といった自施設の症例を検証しただけで結論づける報告が多いのも事実だ。
また、高齢者と非高齢者の5年生存率の比較は、「他病死が含まれるので意味がない」という考え方も根強い。しかし、がん手術をしたがゆえに、それが引き金となって他病の悪化や機能悪化が起こり、死を早めたとしたらやり切れない。
「エビデンスを出していくことは確かに重要なことです。全国の病院が外科手術のデータを登録するNCD(National Clinical Database)というデータベースがあり、各病院が登録したデータを持っています。それを大腸癌研究会でうまく使えば、プロジェクト研究に生かせるかもしれません」(杉原医師)
(ライター・伊波達也)
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