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がん死と他病死の関係(週刊朝日ムック『いい病院2017』より)
余命を縮める手術があった! 胃がん手術現場の声〈dot.〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170301-00000112-sasahi-hlth
dot. 3/4(土) 7:00配信
高齢者(75歳以上)へのがん手術には科学的根拠がなく、現場の医師の判断に委ねられている──。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2017」では、「高齢者のがん手術」と題して、各病院の判断基準や実情を取材している。今回は特別に、がんの中で大腸がんに次いで2番目に年間罹患者数が多い胃がんについて紹介する。
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「胃がんの手術は、技術が高いレベルに達しており、安全性も高く、高齢者であってもおこなうことが多いと思います。かなり高齢だと何もしない選択肢もありますが、手術をしないほうがいいというエビデンスはありません。高齢者に手術すべきかの判断基準に正解はなく、それぞれの医師の判断に委ねられています」
そう話すのは、全国でもっとも多く胃がんの手術を実施するがん研有明病院の胃外科部長、比企直樹医師だ。
同院で15年に実施した537例の胃がん手術のうち、75歳以上は約20%を占める。年々、胃がん手術の高齢化が進んでいるという。
「当院は高齢者に手術をすべきかどうか、持病の有無やADL(日常生活動作)を見て決めます。一日のうち半分以上寝ているような方は手術しませんが、元気ならば90歳でも手術は可能です」(比企医師)
一方で、高齢者に対して徹底的にがんを取りきる根治手術が必要かどうかは疑問だという。特に胃全摘出手術は避けたほうがいいと話す。
「高齢者に胃全摘手術をすると一気に衰弱します。私たちの検証では、餃子ほどの大きさの胃を残すだけで、手術直後の健康な人の9割くらいは食べられます。しかし、全摘すると5〜6割程度しか食べられなくなるので体力や筋力が落ちてしまいます」
体重が15%以上、筋肉が5%以上減少すると術後の化学療法は続けられないというデータがある。化学療法を受けるだけの体力があった人も、胃全摘では20%弱体重が落ち、骨格筋も落ちる。そして、「サルコペニア」(筋力や身体機能が低下する状態)に陥ってADLも落ち、化学療法もできずに生存率も低下すると比企医師は指摘する。
また、比企医師らは、85歳以上で手術ができた77人の手術後を追跡した論文を出している。それによると、早期がん(ステージI)の5年生存率は約60%と低いことがわかった。
「早期胃がんは、若い人では90%程度の5年生存率があります。それに比べると85歳以上では30ポイントくらい低いことになります。ほとんどが胃がんではなく、他の病気が原因で亡くなります」
胃がんは治ったものの、やがて心臓や脳などの他の病気が発症し他病死することがある。85歳以上の5年生存率が30ポイントも落ちる原因の分析はきわめて難しいとしつつ、比企医師はこう続ける。
「高齢者には、がんが再発しないことだけに注目して、胃全摘や胃を3分の2切除する標準治療をおこなうのではなく、胃の切除範囲を縮小する手術も考慮する時代となってくると思います」
現状、再発リスクを減らすため、高齢者にも胃全摘を実施する病院は多い。客観的なエビデンスはないとしながらも、大きな手術が間接的な引き金になって、他の病気で亡くなることもありえると比企医師は話す。縮小手術でからだの負担を少なくし、体力、筋力を温存し、QOL(生活の質)も良くすることは重要だという。
比企医師は自らが考案した「LECS(腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除)」という術式を最近、胃がんに適応し始めた。胃カメラの先端に治療器具が付いた内視鏡で胃の内側からと、おなかに複数開けた孔に差し込む腹腔鏡で胃の外側からと、同時におこなう手術だ。より狭い切除範囲でがんを取ることができる。
「LECSだと早期胃がんの場合、再発率は約20%に高まります。しかし、高齢者の現実を考えると、手術範囲を小さくしてQOLを良くする点で、将来的にLECSが貢献できるのではないかと考えています」(同)
■術前にリスク見極め合併症を減らす
高齢者に手術をしたほうがいいかをさまざまな指標を使って決め、術前術後の管理にも役立てている病院がある。新潟県立がんセンター新潟病院はその一つだ。同院は胃がん手術数が全国8位となる年間205例(14年)を実施する。
同院消化器外科では、1991年から2011年までの20年間の胃がん手術5330例から、85歳以上の胃がん手術78例を調べた論文を16年に発表した。それによると術後合併症が起こる割合は、75歳以下が15.3%であるのに対し、85歳以上は24.4%だ。85歳以上はもともと持病も多いが、明らかに高い。
また、胃がん手術後5年以内の死因を比べると、胃がん以外での死が75歳以下では5.8%であるのに対し85歳以上では19.2%と高かった。胃がんの手術をした85歳以上は、75歳以下より術後合併症のリスクが高く、他の病気で死亡する可能性が高いということだ。
消化器外科部長の藪崎裕医師はこう話す。
「85歳以上で胃がん以外での死亡割合が増えるのは、術前からの持病や老衰が影響するためです。また胃切除による後遺症で体重減少や低栄養、食べた物の逆流による誤嚥性肺炎が起こる場合もあります。特に胃全摘では、夜間就寝時の逆流も多くなり、高齢者は嚥下機能が低下しているため誤嚥による肺炎が起こりやすい。繰り返すと、致死的になることもあるのです」
藪崎医師も、高齢者への胃全摘は極力控えたほうがよいと述べ、手術全般にあたっても術後合併症への配慮が重要だと話す。
「当科では、手術する前に術後合併症を起こすリスクが高い人を見つけ、術前にADL訓練などをおこない、術後合併症を減らす取り組みをしています」(藪崎医師)
16年から、「CGA(総合的機能評価)」という、事前に患者の合併症リスクを測るチェック票を導入した。▼日常生活能力▼認知機能▼意欲の三つを点数化して、チェックする方式だ。
「現在のところ客観的数値として合併症を減らせているかどうかは解析中です。印象としては術後から退院までの経過はとても円滑になったと思います」(同)
学会でも高齢者に対する治療の報告は増えてきた。個々の病院ではさまざまな評価方法を使って独自の「物差し」を作っているようだ。今後はそれが汎用性のある「物差し」として確立されることが望ましいと藪崎医師は話す。
それに対して、日本消化器外科学会理事長で東京大学病院消化器外科教授の瀬戸泰之医師はこう話す。
「現在、学会やガイドラインでの統一見解はなく、学会や論文での発表も一施設での報告というのが現状です。高齢者の手術成績などをNCDのデータを使って評価しようという動きはあります。将来は、高齢者への手術適応や適切な術式を全国規模で検証することが可能になるでしょう」
(ライター・伊波達也)
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