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「院内で処理するつもりだった」と言うが…
死亡50人を不審に思わない大口病院 院長の評判と終末期医療の現状
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161012-00513384-shincho-soci
「週刊新潮」2016年10月13日神無月増大号 掲載
日々人の死に接するのは医師の定めである。ましてや終末期医療の現場ともなれば、「慣れ」もあるだろう。それでも、3カ月で50人もの患者が亡くなっているのを不審と思わなかったのだろうか。点滴殺人事件が起きた「大口病院」の院長は、異常を感知しなかったというのだが……。
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被害者の八巻信雄さん(88)が亡くなる前、大口病院ではエプロンが切り裂かれたり、カルテの紛失が起きたりしていたことはご存じのとおり。また、8月にも飲み物に漂白剤が混入されたという告発メールが横浜市の医療安全課に届けられていた。ところが、高橋洋一院長は職員に事情を聞いただけで済ませていたという。
社会部記者が言う。
「その理由を院長にぶつけると、“内部の出来事だったため、県警に相談せず院内で処理するつもりだった”と言う。危機感の無さは驚くばかりですが、犯行のあった4階では1日に3人もの患者が亡くなったこともあって“4階は呪われている”と看護師たちが怖がっていたほど。院長自身、7月以降の3カ月間で50人もの患者が亡くなっていることも認めているのです」
警察に届け出るなどの対策を取るべきでは、と聞かれた高橋院長が会見で漏らした言葉がこれである。
「いつ亡くなってもおかしくない重篤な患者がたくさん入院して来るから(人が亡くなっても仕方がない)と考えていました。異変は感じなかった」
死が日常の職場とはいえ預かる「命」の重さはこんな程度なのだろうか。それでも、高橋院長の評判は決して悪いものではない。
■すでに火葬済み
院長を知る関係者が言う。
「高橋先生は介護やリハビリの専門家です。慈恵医大を出て神奈川の聖マリアンナ医科大では助教授を務め、06年に鎌倉のリハビリ病院の院長に招かれている。大口病院に移ってきたのは数年前ですが、高橋先生クラスなら年収で2200万〜2500万円ぐらいは払っているはず」
院長を知る近所の住人も、
「高橋さんは、ご近所の“かかりつけ医師”みたいな感じでね。具合が悪いと言うと“それだったら○○科で診てもらったほうがいいよ”と丁寧に相談に乗ってくれる気さくな人です」
だが、今回の事件からは終末期医療が置かれている現状が透けて見えると明かすのは、医療関係者だ。
「事件当時、大口病院には52人の入院患者がいましたが、多くが寝た切りや要介護の老人。患者の家族にとっても、75歳以上なら『後期高齢者医療制度』が使えるため、1カ月10万円ほどの費用で面倒を見てもらえる。一方、病院にすれば高額な医療機器を買うなどのコストがかからないから“儲け”のために寝た切り老人ばかりを引き受けるところも少なくないのです」
介護・医療ジャーナリストの長岡美代氏も言うのだ。
「2010年に埼玉県春日部の特養ホームでも職員が入居者に暴行を加え、3人が死亡、1人が重傷を負う事件が起きています。しかし、事が明るみに出る前に火葬された人がいて真相解明が難しくなった。“高齢者だから亡くなっても仕方ない”というホーム側の認識の甘さもありました」
大口病院でも火葬されてしまっているケースが大半である。事件の全容解明にたどり着くのは容易ではない。
「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書」より
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