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<エビデンスのない話C弛緩不全の種類>
http://www.asyura2.com/16/health18/msg/453.html
投稿者 SHO 日時 2017 年 3 月 31 日 12:59:07: cVuKYKDVsuOXM gnKCZ4Ju
 

(回答先: <エビデンスのない話B腰痛の原因> 投稿者 SHO 日時 2017 年 3 月 31 日 11:49:00)

■疲労性の弛緩不全
筋肉の機能不全をもたらす原因は、大別して筋原性と神経原性に分けることができるだろう。そこで、整形外科領域で扱う疾患のうち、特殊な遺伝性疾患を除くと、筋原性の機能不全の原因の一つとしては反復性の過剰刺激、即ち、使いすぎで生じる疲労性の弛緩不全を挙げることができるかも知れない。
例えば、サッカー少年には分離症が多いといわれるが、この競技においては大腿の挙上を頻繁に繰り返すので、疲労性の弛緩不全が腸腰筋に生じ易いと考えられる。さらに、旺盛な回復力によって腸腰筋筋力それ自体が強化された結果、その弛緩不全が骨格に対する持続的な牽引力となって作用することで、骨盤の前傾及び腰椎前彎が増強する。そのため、伸び上がり動作では同筋による牽引力が過大となり、それが反復することで、ついには疲労骨折を来たすほどに椎弓にかかる負担も大きくなると考えられるのだ。この場合の腸腰筋に起こる弛緩不全は過緊張性の弛緩不全ということができる。

■廃用性の弛緩不全
その一方、同一姿勢の長時間継続という生活習慣を誘因とする筋肉の機能不全もある。例えば、座位をとると股関節屈曲位となり、腸腰筋の起始停止間の長さが短縮すると同時に腸腰筋のたるみを生じ、骨盤の前傾と腰椎前彎を維持する力学的な成分は減弱するが、同様の状態が長時間かつ長期間継続されれば、腸腰筋は萎縮に向かうことになる。これが、姿勢から生じる廃用性の弛緩不全であり、過緊張性に対し、低緊張性の弛緩不全とでも呼べるだろう。
わかりやすく言えば、過緊張性の弛緩不全を呈した筋肉は弾性力を蓄えたゴムのイメージであり、低緊張性の弛緩不全を呈したそれは弾性力の減弱した紐のイメージである。廃用性萎縮を生じる過程では、腸腰筋のたるみから腰椎の生理的前彎は失われていくことになるのだが、病期の進行に伴い、必ずしもそればかりではなくなってくる。エンド・ステージにおいては筋萎縮や筋拘縮の進行により、腸腰筋それ自体の短縮を招き、低緊張性の弛緩不全においても、過緊張性の弛緩不全と同様に腰椎前彎は増強することが考えられるわけである。

■起立動作は腸腰筋に負担を与える
もともと、座位から立位に移行する動作では、股関節伸展に伴い、腸腰筋は急激な伸展を余儀なくされる。その際、腸腰筋には遠心性収縮が強いられることになり、そこにかかる負担は過大とならざるを得なくなる。このように、起立動作では、ただでさえ腸腰筋に過剰な刺激が加わるわけで、そこに弛緩不全を抱えていると、この伸展強制に対して筋肉が柔軟に対応できない場合があるのだ。急激な起立動作が伸展反射を誘発すれば、筋肉には反射性収縮を生じてしまうため、伸展強制によって腸腰筋それ自体を損傷したり、椎間板にかかる軸圧が高じて線維輪の断裂を来たすことが考えられるわけである。即ち、起立動作で生じる急性腰痛症とは、それらに類するケースがほとんどだと言ってよいだろう。また、そのようにして腸腰筋に何らかのダメージを抱えた場合、患者はSLRT(下肢伸展挙上試験)それ自体では痛みを訴えないが、下肢の下降時に痛みを訴えることになる。

■腸腰筋の弛緩不全に伴う姿勢の変化
いずれにせよ、腸腰筋を伸展させる姿勢が痛みを誘発するのであれば、疼痛を回避しようと股関節を支点として体が前傾姿勢をとり、固有背筋への負担が大きくなるのは必至である。この状態が継続すると、高齢者では円背が進むと考えられるが、比較的若い世代なら、前傾姿勢における股関節の屈曲角度はそのままに、固有背筋にかかる負担を軽減させようとして重心を後方におき、股関節、膝関節の両方で屈曲位を保つことで骨盤を後傾させ、上体を起こして腹筋筋力で立位を維持するようになると考えられる。即ち、結果が原因となる悪循環を呈しつつ、立位における骨盤の前傾及び腰椎生理的前彎は失われていくことになる。このため、重心が後方に移動することで、固有背筋の筋力低下や、それに伴う廃用性変化もまた、避けがたく起こってくるに違いない。のみならず、立位における股関節、膝関節屈曲位の継続は、それぞれ股関節伸展に関わる筋肉群や大腿四頭筋に対して過緊張性の弛緩不全を生ぜしめ、股関節や膝関節周囲に痛みを生じる原因ともなるだろう。時々目にする棘上靭帯の炎症もまた、おそらく、そうした一連の代償性変化によって、横突棘筋など、棘突起に停止する筋肉群に弛緩不全の生じたことを原因とするのではないだろうか。ひょっとすると、肋間神経痛の類も、同様の代償性変化で生じた肋間筋の弛緩不全で以って説明ができるかも知れない。

■脊柱の形態変化は筋肉の弛緩不全がもたらす
ここで特筆すべきは、同じように腸腰筋の弛緩不全を呈していながらも、弛緩不全にいたる過程や年齢、あるいはステージの相違など、個別の素因によって、形態的には腰椎の前彎が増強する場合と、逆にそれが失われる場合、並びに前傾姿勢や後傾姿勢など、相反する状態が起こり得るということである。また、そのように考えると、脊柱側彎症の原因の一つとして、片側に偏った腸腰筋の弛緩不全を想定できるかも知れない。例えば、脚を組んで座る生活習慣などがあった場合、腸腰筋の弛緩不全においては左右に偏りを呈することが考えられる。そして、その力学的な不均衡から、腰椎に形態的な変化を生じ、さらに、そこから代償性の変化が上位脊椎に及んでいくことで、脊柱は側彎を来たすと考えられるわけである。
総じて、スポーツ活動や肉体労働による過緊張性の弛緩不全は疲労性の変化である一方、低緊張性の弛緩不全は同一姿勢の継続という廃用性の変化といえ、高齢者の抱える重度の弛緩不全は、筋萎縮や筋拘縮が主体となる後者の終末像と考えられる。もっとも、実際には、年齢のみならず、体重の軽重、スポーツ歴や職業歴といった個別の素因が関わるので、各々多彩な臨床像を呈することになるだろう。

■種々の要因が弛緩不全をもたらす
この他にも、寒冷刺激や、精神的なストレスが原因で生じる筋肉の弛緩不全が存在する。寒冷刺激にさらされると、体温維持を目的として、反応性に分泌されたアドレナリンの働きで筋肉は収縮し、熱を発生させるが、この際の収縮が持続してしまい、諸症状を誘発するわけである。精神的なストレスもまた、同様な内分泌の働きにより、弛緩不全を惹起してしまう。無意識のうちに肉体が防御姿勢をとろうとして種々の筋肉を収縮させるというわけだ。また、脱水や電解質バランスの失調、代謝の低下も弛緩不全の原因と成り得るだろう。さすれば末梢循環不全も弛緩不全の原因たり得るわけで、喫煙習慣が全身ありとあらゆる部位に弛緩不全を促す誘因となることは自明の理だといえる。そして、おそらくは急激な筋収縮を強いられた外傷を契機とする弛緩不全も多々あるに違いない。

■早期の弛緩誘導が病気を防ぐ
こうして、筋肉を弛緩させる適切な処置(以下、これを弛緩誘導と呼ぶ)を受けることなく筋肉の弛緩不全が長期にわたると、可逆性の機能不全状態から、不可逆性の変化を呈するようになると考えられる。そして、そのようなエンド・ステージに移行してしまえば、治療手段は限られてしまう。そもそも、筋肉の弛緩不全は、単に休息しただけでは回復しない場合があることには注意が必要だ。筋収縮の結果として循環不全を来たしたような場合、弛緩に用いるエネルギーの供給不足から、自然な筋弛緩を得るのが困難となってしまうのだ。結果が原因となるような、ある種の悪循環が生じ、自然治癒力が妨げられてしまうわけである。

■弛緩不全の部位特定と弛緩誘導こそ医師の仕事
ゆえに、慢性疾患として現れる整形外科疾患の場合、その診断においては、症状を引き起こしている筋肉と、その弛緩不全の原因とを特定し、次に筋肉がどういう状態にある機能不全であるかを診断することが重要だ。患者が直接痛みを訴える部位とは異なる場所に原因が潜んでいるわけである。そしてもし、それが筋固縮に由来するなら、他科に治療を譲らねばならない。
もとより、町医者が外来で診る症例の多くは可逆性であり、適切な弛緩誘導を施せば、エンド・ステージへの移行を未然に防ぐことができるはずなのだ。ところが、現状、整形外科医は筋肉の機能不全を弛緩不全としてとらえるのでなく、収縮力の減退ととらえている感が否めない。変形性膝関節症の患者にスクワット等の大腿四頭筋訓練を指導したり、腰痛患者に腹筋運動(腹筋運動は腸腰筋訓練となっている場合が多い)を促したりしているのがその証拠である。しかし、筋肉の機能不全は収縮以前の弛緩不全の故であり、筋力強化を促すエクササイズの多くが症状を悪化させるのは、町医者ならば誰もが実感していることではないだろうか。実際、健康増進目的で自らが始めた歩行習慣やエアロビクスが原因の腰痛や膝痛は少なくないのである。

■反省と展望
これまで、整形外科医の多くは起こってしまった結果ばかりに目を奪われ、原因であるところの筋肉の状態を見過ごしてきたといえるだろう。そして、それは他ならぬ筆者自身の反省でもある。
ここでは、弛緩不全を呈する原因を、素朴な実感から大雑把に述べてみたが、本来は、それらを追究することこそ実り多いはずであり、その成果は整形領域のさらなる発展に寄与するに違いない。
 

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