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(回答先: <エビデンスのない話D解決法> 投稿者 SHO 日時 2017 年 3 月 31 日 13:05:30)
■斜角筋の弛緩不全
これまでの理屈は人体の他の部分であっても応用が効く。例えば、腰痛のキー・マッスルは腸腰筋であったが、同じ脊椎である以上、頚椎にも同様なキー・マッスルがあると考えられる。それは斜角筋だ。
斜角筋には、前、中、後の三つがあり、各々第三頚椎から第六頚椎、第三頚椎から第七頚椎、第五頚椎から第七頚椎の横突起を起始部として、前二者は第一肋骨に、あとは第二肋骨に停止する。その作用は吸気時の肋骨挙上であると同時に頚椎の前傾前彎に関わり、片側のみの収縮で同側に頚椎を側屈させる。
基本的に脊柱は頚椎、腰椎を問わず、四方八方から筋肉による綱引きで以って起立しており、後方からの牽引を担う固有背筋のカウンターバランスをとる成分が必ず前方にいくつか存在する。腰椎ではそれが主に腸腰筋であったが、頚椎では斜角筋がこれに相当するというわけである。
■ストレート・ネックの病態生理
肩こりを主症状として来院する患者は、レ線上、頚椎生理的前彎の消失(時に後彎)を呈する場合が多い。これは、目線を下げた頚椎前傾姿勢を継続した結果、腰椎において長時間座位を継続したのと同様な機序で、頚椎に生理的前彎の消失が生じているのではないだろうか。頭部の重量を支える局面での頚椎屈曲位においては、斜角筋の起始停止間の長さは短縮し、斜角筋自体はたるみを呈するため、頚椎前彎を維持する力学的な成分が損なわれてしまう。また、その姿勢を継続すれば、固有背筋や僧帽筋に負担をかける一方、斜角筋には低緊張性の弛緩不全を生じることになるだろう。このため、頚椎伸展位をとって目線を上げようとする際には、斜角筋が伸展強制を受けることで種々の痛みを生じるようになると考えられるのだ。結果、斜角筋に対する伸展強制の影響や後方成分への負担を緩和させるべく、代償性に胸椎後彎は減少し、頚椎の前彎は、結果が原因となる悪循環を呈しつつ、失われていくというわけである。
また、こうした代償性の変化は胸椎のみにとどまらない。斜角筋の付着しない上位頚椎での伸展によって前方視野を確保しようとすることで、頚椎は全体としてS字状のカーブを呈する場合もあるだろう。同様に、前額面でこうした慢性弛緩不全が片側に偏れば、斜頚や側彎を来たすことも示唆される。
■フローズン・ネックと胸郭出口症候群
つまり、頚椎生理的前彎の消失といった形態異常は、肩こりの原因や誘因などではなく、斜角筋の弛緩不全に伴う結果だと考えられるのだ。いわゆるフローズン・ネックとは、この状態が悪化して、斜角筋、固有背筋の双方が重度の弛緩不全に陥り、頚椎にかかる軸圧が高じて不動化してしまった状態ではないだろうか。場合によっては椎間板線維輪に断裂を来たしているかもしれない。もとより、斜角筋の収縮力は頚椎に対して軸圧として作用するので、その弛緩不全は頚椎の椎間板変性や骨棘形成に多大な影響を与えることにもなる。三つの斜角筋による力学的な軸圧が重なり合うレベルで椎間板の変性が著明となるのは当然の帰結といえるだろう。
ゆえに、斜角筋の弛緩不全は頚椎症性神経根症や脊柱管狭窄症の遠因であると同時に増悪因子でもあるわけだ。のみならず、斜角筋が肋骨挙上にも関わることを考慮すれば、その弛緩不全は胸郭出口症候群の原因であるとも考えられる。即ち、前、中両斜角筋の弛緩不全で挙上された第一肋骨により、斜角筋三角が狭小化するため、腕神経叢の圧迫を来たす場合があるに違いない。少なくとも、圧迫型の同症はこれで説明できるはずである。そもそも、生来の胸郭出口症候群など存在しないわけで、形態的な素因は原因とは成り得ない。発症前と発症後の違いとは、斜角筋の弛緩不全があるか否かに尽きるはずである。そう考えると、頚椎に関連した慢性疾患のほとんどで、斜角筋の弛緩誘導は奏功することが期待できる。逆に、斜角筋の弛緩誘導が無効であるなら、他の疾患を考慮する必要があるだろう。
■斜角筋の弛緩誘導
では、この斜角筋の弛緩誘導をどう行えばよいだろうか。腰椎の場合と同様、固有背筋の緊張は頚椎に対しても軸圧として作用するので、斜角筋をストレッチするには、固有背筋由来の軸圧を緩和させた状態で行うべきである。病態の初期であれば、枕の形状や配置を工夫して、就眠時に頚椎前彎を保持させるだけでも効果は期待できるかも知れない。しかし、フローズン・ネックに至った症例では、それすら困難な場合がある。牽引療法はスタティック・ストレッチとして一定の効果は期待できるものの、既に骨性の変化を来たしているような症例では、不用意な牽引は神経症状を悪化させる恐れもある。となると、斜角筋のストレッチとして安全かつ有効なのは仰臥位でのMDSや斜角筋のマッサージということになるだろう。
興味深いことに、斜角筋に重度の弛緩不全を抱えた患者では、頚椎側屈の反復を促しても、仰臥位では回旋運動になってしまい、その運動には介助を要する場合が多い。おそらく、筋肉の協調運動に支障を来たしているのだろう。しかしながら、その弛緩不全の緩和とともに、それも可能となるので、やはり、筋肉の弛緩不全には神経伝達機能の低下が色濃く背景にあるといえそうだ。
■頸椎アイソメトリック・エクササイズは慎重にすべき
これまで、頚椎の疾患といえば、頚椎アイソメトリック・エクササイズ、即ち筋力強化ばかりが推奨されてきたわけだが、筋肉の弛緩不全が原因の疾患に対してそれを行う場合、いくらかの注意を要するのではないだろうか。
- <エビデンスのない話G上肢の疾患> SHO 2017/3/31 13:26:29
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