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医療界で活用が始まった人工知能は何ができるのか? 医療方針の最終判断を下すのはあくまでも医師 
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投稿者 軽毛 日時 2017 年 3 月 06 日 12:27:23: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

医療界で活用が始まった人工知能は何ができるのか?
医療方針の最終判断を下すのはあくまでも医師
2017.3.6(月) 多田 智裕
人工知能は医師の仕事を代替するようになるのか?(写真はイメージ)
 2月20日、厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」に「AIによる診療支援と医師の判断との関係性の整理(案)」が提出されました。
 AI活用推進懇談会では、医療において人工知能をどのように活用し、質と安全性を確保するかについて検討しています。この懇談会で提言されたことは以下の3つです。
(1)人工知能による診断や治療方針の最終的な意思決定は医師が行う
(2)人工知能を活用した意思決定においての最終的な責任は医師が負う
(3)より良い診療支援の確率のために人工知能の開発に医師の関与が必要
 つまり、人工知能が診断や治療方針を行うのではなく、あくまで医師のアシストとして使用する方向性が示されたと解釈できるでしょう。
問診に人工知能を活用
 とはいえ、医療において人工知能がそのように活用されるのか、そして、画像認識能力では人間を超えたとされるディープラーニング(深層学習)を用いるとどのようなことが可能になるのかという検証は、まだまだ始まったばかりです。
 医療現場での人工知能の活用例の一部を見てみましょう。
 メドレーという会社がオンライン上で提供している「症状チェッカー」というソフトがあります。
 症状チェッカーは、症状から病気を推定する診断アシストシステムです。例えば便秘など、自分が一番困っている症状を選び、いつからその症状が出たか、吐き気を伴うかなどの質問に答えていくことにより、考えられる病気の可能性を絞っていくことができます。受診すべき診療科や、受診すべきタイミング、そして予測される検査・治療法や、自分でできるセルフケア方法まで示される点が、従来の病気辞典との大きな違いとなっています(症状チェッカーの詳しい説明はこちらをご覧下さい)。
 症状チェッカーは幅広く全ての疾患を対象としていますが、診療科目を絞れば、もっと精度の高い診断を自動で提示することが可能になります。
 以前も紹介しましたが、「肛門科.jp」(専門医による無料簡易問診診断)は肛門科でよくある症状ベスト10について問診に答えるシステムです。24時間いつでもどこでも、一番確率が高い疾患を1つに絞って提示し、その一般的な治療法を参照することが可能です。
 これらは、人工知能を活用することで、時間・場所による制約なしに、低コストで均質な医療を提供できる可能性を示した実例と言えるでしょう。
ディープラーニングは医療界の黒船となりうるか?
 以上の例は、いずれも医師が選択肢を作成し、ソフトのアルゴリズムを決めて診断を出力するようにプログラミングしています。
 これに対し、新しい機械学習方法である「ディープラーニング(深層学習) 」では、入力されたデータをもとに、コンピューターが自ら特徴量を導き出すことができます。例えば犬と猫と馬の画像を大量に人工知能に学習させると、全く別の犬の画像を見せても犬と人工知能が判定するようになるのです。
 これの何がすごいかというと、「猫は丸顔で鼻が小さい」「犬は面長で眉が下がっている」などの特徴を教え込まなくても、それらの特徴を機械が自力で判断して獲得するという点です。この能力を高めていけば、画像認識能力においては人間の能力を上回るようになるでしょう。
ピロリ菌感染の有無を画像から診断
 この技術を医療に応用すると何ができるようになるのでしょうか。私たちが現在研究を進めている実例を紹介しましょう。
 前回紹介したように、日本人の胃がんの98〜99%にピロリ菌が関係しています(「要確認、あなたは『ピロリ菌』に感染していないか?」)。そして、ピロリ菌にかかっている方の胃内視鏡には特徴的な所見が見られます。以下の2つの写真を見比べてください。
ピロリ菌に感染している胃の写真
ピロリ菌に感染していない胃の写真
 見た目が全く違うというのは、一般の方でもお分かりになると思います。これらを言葉で説明すると、「ピロリ菌に感染していると、広範囲に赤くなって、胃の粘膜がむくんでひだも太くなっている」、一方「ピロリ菌に感染していない場合は、毛細血管がきれいに見えて白くべっとりとした粘液も見られない」という言い方になります。従来の人工知能だとこれらの特徴を一つひとつ教え込む必要がありました。
 しかし、ディープラーニング(深層学習)方式であれば、教育用の大量の画像を学習させることで、それらの特徴を人工知能が自動習得し、ピロリ菌胃炎を診断することができるようになるはずなのです。そうなれば、内視鏡専門医不足の地域でも専門医に匹敵するレベルの診断ができるようになることでしょう。
人工知能にできること、できないこと
 ここまで、医療に人工知能を応用しようという現場の動きを紹介してきましたが、改めて確認しておくべきことが1つあります。それは、あくまで人工知能は「与えられた情報をもとに確率を出力するだけ」だということです。
 例えば、ピロリ菌胃炎に関しては、入力された内視鏡画像にピロリ菌胃炎の確率が90%という確度が出力されるだけなのです。ピロリ菌がいるかいないかという最終判断は、内視鏡医師が、その情報とその他の検査データや既往歴を総合して下します。そういう意味では、人工知能は人の業務を代替するものではなく、人の知能を増強させるものと捉えるのが適切と言えるでしょう。
 しかし、それだけであったとしても、現場では大いに役に立ちます。内視鏡に関しては検診などで大量の画像が撮影されますので、そちらの画像診断の補助(ダブルチェック)に活用すれば、診断の見落としを防止することが可能になります。
 また、現状のダブルチェックは人間が行っているため、見逃しの確率を減らすのには限界があります。人間と人工知能がそれぞれの基準でチェックすれば、見逃し率の大幅な低下が期待できます。
 人工知能が医師の仕事を奪うとまで言うと、煽りすぎかとは思います。しかし、より高い精度で医師が仕事を行えるようになる未来がすぐそこまで来ているのは間違いないと私は思います。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49314

 

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