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ビジネスパーソンのための「無理なく実践!食育講座」
「野菜をたくさん食べる」べき本当の理由
2017/02/06
佐藤達夫 (食生活ジャーナリスト)
健康に(少しは)気をつけているビジネスパーソンから「野菜が健康にいいことはわかっているんだけど、なかなか食べられないんですよね〜」という言葉をよく聞く。本当に野菜は健康にいいのか、今回は驚くべき事実をお伝えする。
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野菜がヘルシーだというのは勘違い
最初にお伝えしたいのは野菜の「栄養的価値」だ。テレビ等では食品として野菜が登場すると、出演者(タレント、アナウンサー、料理研究家、ときには栄養士や医師までも)が「野菜たっぷりなのでヘルシーですよ」などと発言することがきわめて多い。しかし、これは勘違いである。少なくとも「野菜を食べれば健康になれる」という証拠はない。
それどころか、野菜ばっかりの食生活では「健康で長寿」は望めない。たとえば、アフリカや南アメリカや東南アジアには、ほぼ毎日、野菜と穀物だけを食べて暮らしている子供たち(子供だけに限らない)が大勢いる。その子たちは健康でもなければ長寿でもない。タンパク質(とりわけ動物性タンパク質)や適度な量の脂肪などが不可欠である。彼ら(彼女ら)にとってはタンパク質や脂肪こそがヘルシーな食材なのであり、野菜はヘルシーでも何でもない。
ビジネスパーソンは「野菜を食べてさえいれば健康になれる」などと勘違いしないことが、まず肝要。動物性脂肪やタンパク質やアルコールや糖類を過剰に食べている現代人は、野菜不足のためにバランスが偏っていることが多いので、バランス上「野菜をたくさん食べましょう」というだけの話である。
「野菜一日350グラム」にたしかな根拠はない
カタイ話になって恐縮だが、ビジネスパーソンの皆さんは、厚生労働省が「健康のためには一日350グラム以上の野菜を食べましょう」といっているのをご存じだろうか? 知っている人でも「350グラム」という数値がどこからきているかは、おそらく知らないだろう。それもそのはず、「野菜一日350グラム」にはたしかな根拠がないからだ。
たとえば、一日に「野菜350グラム以上食べるグループ」と「350グラム未満のグループ」を作り、長期間その食生活を続けてもらう。そして5年後あるいは10年後に「350グラム以上食べていたグループ」の人が健康で、「350グラム未満」の人が不健康になった、という実験があれば、「野菜を一日350グラム以上食べれば健康になれる」といえることになる。しかし、そういう実験は、日本には(世界にも)1つもない。なので「野菜350グラムを食べれば健康になれる」という根拠はない。
「野菜ジュースを飲むこと」は
「野菜を食べること」と同じではない!
ただし、「健康で長生きしている日本人」の食事内容を調べたら「一日に野菜を約300グラム以上食べていた」という調査はある。現在、日本人の野菜の摂取量は一日に平均290グラムくらいなので、「もう少し野菜を多く食べましょう。できれば350グラムくらい」という目標が設定されている。
また(これはアメリカの調査だが)野菜と果物を合わせて400グラム以上食べた女性(看護師)のほうが、それ未満の野菜摂取量の女性よりも健康だった、という研究もある。アメリカは、栄養上、野菜と果物を分けては考えないが、日本では野菜と果物をかなり明確に分けてある。そのうえ、日本では果物の摂取量がかなり少ないため「野菜で350グラム以上を摂取」しないと、この「アメリカの研究結果」を生かすことができない。その点からも「健康のために野菜を一日350グラム以上食べよう」という目標が設定されてある。
これらの研究からも推察できるように、健康のためには「野菜350グラムに含まれる栄養素」を体内にとり入れればいい、というわけではない。野菜(と果物)をたくさん(数値でいえば、日本人ならばだいたい350グラム以上)食べることが健康にいいらしい、ということがわかっているだけなのだ。
「野菜350グラム分の栄養素を摂取すれば健康になれる」という科学的事実はない。つまり、野菜350グラム入りのジュースを飲めば健康になれるという保証はない。野菜ジュース(青汁も)を飲むことは野菜を食べることとは同じではないからだ。
野菜ジュースが逆効果を招く“落とし穴”
「野菜をたくさん食べる」という行為(とりわけ食習慣)の中には(野菜の栄養素を摂取できるということ以外に)さまざまな要素が含まれる。野菜をたくさん食べる人は、たとえば(その分だけ)主食の食べすぎになっていないかもしれない。たとえば、脂肪やタンパク質の過剰摂取になっていないかもしれない。結果的に「栄養バランスがいい人」なのかもしれない。
さらにいえば、このご時世に「野菜をたくさん食べている」という人は、食事以外でも健康に気をつけている人なのかもしれない。運動もしっかりやっている人なのかもしれない。それらの総合的な習慣が、その人を健康にしているという可能性もある。野菜の栄養素だけの影響ではないかもしれないのだ。
この点を理解しないで「野菜ジュースさえ飲めば健康問題は解決する」と思ってはならない。ただし「野菜ジュースは健康的に何の役にも立たない」というわけではない。ふだん健康的な食生活を心がけている人が、たまたまその日は野菜不足になるからという理由で野菜ジュースを(補助的に)飲用する、ということであれば、きわめて有効な使い方(食べ方)になるであろう。
しかし、多くの人は逆になる。どういうことかというと「野菜ジュースを飲んだから(飲んでいるから)野菜を食べなくてもいい」となる。さらには「健康を考えた食生活などしなくてもすむように、とりあえず野菜ジュースを飲んでおく」という人さえいる。これではまさしく逆効果で、野菜ジュースを飲むことが不健康を招くことになりかねない。
忙しいビジネスパーソンこそが陥りやすい落とし穴なので、充分に気をつけたい。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8829
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