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ほおづえ・腕組みは筋力低下のサインだった!
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
人間工学に基づいた、体に優しい家具に要注意
2016年11月9日(水)
松尾直俊=フィットネスライター
ビジネスで多忙を極める日本の30〜40代は体力の低下が著しく、5人中4人が将来寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」の予備軍とされている。パワフルに働き、50代以上になっても健康的な生活を維持するには、正しい運動、食事、休養を行うことが大切だが、誤った健康術にまどわされ、成果が出ずにいやになってしまうケースも少なくない。そこで、著名トレーナーの中野ジェームズ修一氏が誤った健康常識を一刀両断。効率的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/110700081/110800003/2.jpg
腕組みは、実は体力低下を示す仕草の一つだった。(©keisuke kai-123RF)
まったく運動をしないでいると、人間の筋肉量は20代をピークに、年に約1%のペースで減っていく。これはサルコペニアと言って、男女を問わず、誰しもが避けられない現象だ。「まだ若いから」「自分は大丈夫」と過信して何も対策をしないでいると、将来的には筋肉が減り過ぎて、運動器に障害を来してしまって寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」に陥る可能性も出てくる。
その兆候はどんなところに現れるのか。そしてどんなことに気をつければ良いのか。一流アスリートから一般人まで、フィジカルトレーニングをサポートしているトップトレーナー、中野ジェームズ修一さんの視点で語ってもらった。
オフィスや外出先でよく見かける姿勢が筋力低下のサイン
「オフィスのデスク、少し気分を変えて仕事をしようと思って立ち寄ったカフェ。女性がほおづえをついていて、男性が腕組みをしている姿を見かけることがよくありませんか。逆に腕組みをしている女性の割合は少なく、ほおづえをつく男性も少ない。これはどんな理由があるか分かりますか」(中野さん)
卓球の福原愛選手や青山学院陸上部駅伝チームのフィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一さんは、こう話し出した。確かに中野さんが言う通り、ほおづえをつくのは女性が多く、腕組みをしているのは男性が多い。トレーナーの視線で観察していると、そこには明確な理由が見えてくるのだと言う。
「一番大きな理由は筋力に関係しています。ほおづえも腕組みも若い人たちはあまりやりません。OLやビジネスパーソン、それに年齢を重ねた人のほうが、そういった姿勢を取ることが多くなりますよね。これは明らかに筋力が低下しているからなのです」(中野さん)
加齢による筋力低下、サルコペニアという現象だ。人は誰しも、20代をピークに筋肉量が年に約1%の割合で減っていく。これは避けられない現象なのだ。
「まず、女性がほおづえをつく理由について説明しましょう。人間の頭部の重さは体重の約10%とも、約5kgとも言われています。それだけの重さのものが載っている位置を考えてください。背骨の一番上のところですよね。背骨は、骨盤部の腰椎(ようつい)が一番太く、胸椎(きょうつい)、頚椎(けいつい)と上に行くにしたがって細くなる、24個の椎骨(ついこつ)という骨が重なっています。積み木を重ねて行くのと同じで、上に行くにしたがって小さくなるほうが崩れにくいという、非常に理に適った形をしているのです」(中野さん)
背骨は上に行くほど細くなる
背骨は、骨盤部の腰椎(ようつい)が一番太く、胸椎(きょうつい)、頚椎(けいつい)と上に行くにしたがって細くなる。このため、首から肩にかけての筋肉は、一日中かなりの負担を強いられている。(撮影:高山透)
しかし、頚椎の一番細い部分に大きな頭部が載っていることが、問題を生じさせているのだと中野さんは言う。
「人類は脳を発達させるために頭部が大きくなりました。それを安定させるには、本来、頚椎はもう少し太い構造のほうがいいのです。しかし、進化の過程でどうしてもこのようなバランスになってしまったので、首から肩にかけての筋肉は、一日中、かなりの負担を強いられています。頭が前に落ちる、傾くのを防いでいるのは『頭板状筋』という筋肉です。当然、この筋肉も年齢を重ねると減ってきます。それで首や肩が疲れやすくなり、ほおづえをついて頭を支えるようになるのです」(中野さん)
顎の下に手を添えて頭部を支えると、頭板状筋にかかる力が抜ける。その姿勢が楽だから、つい、ほおづえをついてしまうのだ。また、「そういう姿勢を取る人の大半は背中の筋肉の力もなく、猫背気味になっている人が多い」(中野さん)と言う。
「街の中や打ち合わせの席で、そういう姿勢を取る人をトレーナーの視線で見ると、この人は頭板状筋から背中の筋肉が弱いな、と判断するんですよ(笑)。今はオフィスの椅子でも、体の重さを分散したり、ヘッドレストが付いているものがありますから、そういったもので疲れを少なくして、快適に生活しているんだろうな、と。また、寝るときも良い枕を使って、首に負担がかからないように注意しているのかもしれないなと想像します」(中野さん)
しかし、そうした“健康志向”が実は筋力低下の原因となっていたようだ。
体に楽をさせるものが、さらなる筋力低下を招く
“人間工学に基づいて、楽に使えます”。“体に優しい”。こういったうたい文句の家具や道具が増えている。体の負担を減らし、障害を防ぐためには良いのだが、実は一方で、筋力低下を助長していると言ってもいい。皮肉なものだ。筋肉量、筋力の低下を防ぐには、刺激を入れるしかない。その唯一の手段が、首の動きが増えるような運動なのだ。
「首の筋トレというのはなかなか難しいのですが、運動で体を動かすことは、頭部を安定させるために自然と首の筋肉を使うことになります。つまり直接的ではなくても、運動で間接的に首の筋肉を鍛えることができるのです。わざわざトレーニングするのではなく、日常生活の中でも積極的に体を動かす、家事をするといったことでもいいのです。楽をしているから、使っていないから筋力が落ちてしまうのです」(中野さん)
もし、子供がいる人であれば、ゴムのボールで一緒にキャッチボールをしたり、公園でバドミントンをしたりといったことでも、首から肩にかけての筋肉が動き、鍛えることができるのだと言う。
「それに特別な筋トレをしなくても、通常の生活動作を大きく積極的に行うだけでも、首周りの筋力低下を予防するきっかけになります」(中野さん)
家事では、物を上の棚にきちんと持ち上げて棚に片付ける、窓ガラスの拭き掃除を大きな動作でするなどによって、頭板状筋に刺激を入れることができる。
「男性の腕組みも同じです。腕の重さというのは筋量によって若干違いますが、だいたい1本3〜4kgあります。それを支えているのが、肩の三角筋や僧帽筋、肩甲骨周辺の筋肉です。それらの筋力が弱くなると、腕を下げているのが疲れて辛くなるのです。しかし、腕を組んでみてください。交差させて体につけることで、重量が分散されて肩にかかる負担が減り、楽になるのです。だから腕組みをしてしまうのです」(中野さん)
三角筋や僧帽筋、それに肩甲骨周りの筋肉も、腕を大きく上にあげたり動かしたりすることで鍛えることができる。また、重たい通勤鞄を左右どちらかに偏ることなく持つことも有効だ。
「両腕が自由になるから、楽だからと最近はリュックを利用する人も多いですが、確かに通勤に階段を使用したり、歩く距離が伸びるなどの利点は沢山あります。しかし、その反面、腕の筋力低下を招くもとになります」(中野さん)
4.5kgの荷物を1日中移動させられる筋力を保つ
では、どれくらいの負荷をかけていれば、筋力低下を防ぐことができるのだろうか。
「その時、私がよくお答えするのが、1981年のフラミンガム研究の中で紹介されているある報告です。それによると、自身で4.5kgの重量を持ち上げて移動させることができる筋力があれば、通常の家事ができて要介護になることがないということが示唆されています。5kgのお米の袋を持ち歩くことを想像してみてください。結構な重量になると思いますが、それくらいの筋力はキープできるように心がけておくことが必要です」(中野さん)
腕や肩周りだけではない。大きな筋肉が集中する殿部から下肢、つまり下半身の筋肉も健全に保っておきたい。下半身の筋肉は、全身の筋肉量の約70%を占めると言われており、限られたトレーニングで効率的に筋肉量を増やせるのだ。
「そのためには、よく言われることですが、エスカレーターやエレベーターではなく、階段を使うようにしましょう。それだけでも毎日続ければ筋肉量が増えます。車や電車、バスに頼って歩かない生活をしているのであれば、いつも降りる駅や停留所の一つ手前で降りて歩く。歩くときは、歩幅を広くして少し速度を速めるといったことを意識して行うだけで、筋肉にとっては良い刺激になります」(中野さん)
筋肉は必要な力に応じて、発達したり衰えたりする。より大きな力が必要だと感知しなければ、発達しないのだ。筋力を上げるというと、すぐに器具を使ったトレーニングを想像するが、日常生活の中でも高めるチャンスはいくらでもある。
それに、現在の年齢の筋量を維持する、あるいは高める運動は、血行も良くしてくれる。また筋量が増えると基礎代謝も上がるので、体脂肪がつきにくい体にもなれる。生活習慣病を防ぐことにもなるのだ。特別なトレーニングをする時間がないのなら、日常生活の中で積極的に体を使う工夫を取り入れていこうではないか。そう、筋肉は適切な刺激を与えていれば、たとえ70、80歳になって増やすことができるのだから。
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。
このコラムについて
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
ビジネスで多忙を極める日本の30〜40代は体力の低下が著しく、5人中4人が将来寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」の予備軍とされている。パワフルに働き、50代以上になっても健康的な生活を維持するには、正しい運動、食事、休養を行うことが大切だが、誤った健康術にまどわされ、成果が出ずにいやになってしまうケースも少なくない。一流アスリートから一般人まで、フィジカルトレーニングをサポートしている著名トレーナーの中野ジェームス氏が誤った健康常識を一刀両断。効率的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。
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