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Column | 2017年 01月 18日 14:50 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
英首相、経営者的手法で「EU離脱」演出
George Hay
[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国が直面している複雑で歴史的な転換局面において、メイ首相は企業経営者の手法を採用した。
新たに就任した優秀な経営者は時折、前任者の残したプロジェクトに対する多額の引当金計上から始めることがある。これで過去の問題を帳消しにして、将来の利益の見栄えを良くし、この経営者は決断力のある人物だというイメージを生み出してくれる。メイ氏が17日の演説で打ち出した欧州連合(EU)離脱の交渉方針は、それと似た効果をもたらす可能性がある。
英国のEU離脱交渉については、現状維持を出発点にして徐々に利益を放棄していく方法も考えられた。だがメイ氏はその正反対の提案をした。つまり、まずEUとのすべての関係を放棄し、それから新たな要素を積み上げる形で、これは現実を反映している。英国がEU単一市場にとどまりながら、EU司法裁判所の拘束を受けず、EU域外諸国と独自に貿易協定を結び、移民規制もできるという「いいとこどり」は不可能だからだ。
英政府は具体的なEU離脱計画を持ち合わせていないのではないかとの不安もあっただけに、メイ氏の今回の姿勢は確固たる指導者として再評価される材料になるはずだ。今や英国民とEUの交渉担当者は、英政府が「半分だけEUにとどまる」といった中途半端な形で決着をつけるつもりがないということが分かった。最悪のシナリオを確立したため、もしメイ氏が求める包括的な自由貿易協定をEUが容認すれば、事態はましになるという期待も出ている。
もっともこの問題はあたかも大きな浴槽のごとく、足元をすくわれて溺れてしまう危険性はある。EU各国が英国との合意を拒否した場合は、英国の国内総生産(GDP)は2030年までにトレンド成長率に対して著しく下振れしかねない。メイ氏が単一市場のアクセス確保を目指すと表明した自動車と金融サービス業界は心強く感じただろうが、希望がかなわない可能性は恐らくより明確になってきた。
現時点で投資家の反応は割れているように見える。ポンドは対ドルで即座に2.5%も上昇したものの、通貨オプション取引は依然としてポンド売りに傾いているもようだ。ただ、メイ氏は少なくとも、投資家が手掛かりにできる基本シナリオは設定した。次に起きる展開についてメイ氏がコントロール可能な範囲が限られる以上、基本シナリオの提示はメイ氏が市場のためにできる精一杯の行為と言える。
●背景となるニュース
*メイ氏は17日の演説で、英国がEUを離脱する際には単一市場からも撤退すると宣言した。
*メイ氏は、EUと対等なパートナーになることを模索していくが、他の国が採用している既存の自由貿易協定を導入する考えはないと述べた。
*メイ氏は「私は次の点をはっきりさせたい。つまり私の提案はEU単一市場にとどまることを決して意味しない。そうではなく、新しく包括的、野心的、大胆な自由貿易協定を通じて可能な限り最大限のアクセスを目指す。この協定には一定分野において現行の単一市場の取り決めを盛り込むかもしれない」と語り、そうした分野に自動車や金融サービスを含めたいと付け加えた。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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News | 2017年 01月 18日 16:21 JST
関連トピックス: トップニュース
アングル:
英金融界、最悪の離脱シナリオ受け海外移転加速へ
1月17日、メイ英首相がEU離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。ロンドンの新金融街カナリー・ワーフで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Winning)
[ロンドン 17日 ロイター] - 英国のメイ首相が17日の演説で欧州連合(EU)離脱に際して単一市場から脱退する方針を表明したことを受け、英金融サービス業界は一部事業の海外移転を加速させる見込みだ。
各金融機関は事業拠点を見直す前に英政府がEUとの関係をどうするのかはっきりしほしいと訴え続けてきたが、現段階ではもうほとんどの大手が引き続きEU域内で活動できるようにするため、一部事業を英国から移す態勢を整えている。
そうなると今後は、金融センターとしてのロンドンの将来性が大きな問題の1つになる。なぜなら金融は英国最大の輸出産業であり、最も多くの法人税収をもたらしれくれるからだ。
メイ氏の演説を受け、ある国際的な大手行の幹部は「最悪シナリオが現在は基本シナリオになったように見受けられる」と語り、各金融機関は緊急対応計画(コンティンジェンシー・プラン)の取りまとめをさらに急ぐだろうと付け加えた。
メイ氏は、世界経済フォーラムが開催されているダボスで19日にゴールドマン・サックス(GS.N)のロイド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)やJPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモンCEOといった大手行首脳と会談する予定。
ただ英国の単一市場撤退がほぼ確実となり、金融機関はロンドンを拠点にEU域内すべてで活動できる「パスポートの権利」も失われる事態となった以上、その場でメイ氏が英国から一部事業を動かさないでほしいと訴えても、銀行首脳らを説得するのは難しい。
コンサルティング企業オリバー・ワイマンは昨年10月、英国の金融機関がパスポートの権利を喪失すれば、雇用が7万5000人減少し、英政府は最大100億ポンドの税収減に見舞われると警告した。
米大手5行はロンドンで計4万人を雇用しており、これはその他の欧州全体の雇用数を上回っている。
金融業界は英政府に対して、EU離脱交渉で好条件での合意が難しいことが判明したり、交渉期間が定められた2年を超えて長期化するような事態に備え、新たな段階への準備を進めるための移行期間をきっちり確保してほしいとも要望している。
メイ氏は今回、移行期間が設定できると強く確信していると初めて示唆。「われわれは新しい取り決めが段階的に実行されると考えている。その過程で英国とEU機関、加盟国は態勢を整えることが相互の利益になるだろう」と語った。
しかしメイ氏は、そうした移行期間がどう機能するのか、あるいはいつまで続くのか詳細には触れていない。金融セクターの法律専門家は、内容がはっきりしないことから移行期間が設けられるのを当てにするのは賢明ではないと助言している。
法律事務所バーウィン・レイトン・ペズナーのパートナー、ポーリー・ジェームズ氏は「英政府が移行期間を実現してくれる状況を金融機関が頼みにしていたら、実際には適切なタイミングで交渉をまとめられなくなる展開を真剣に懸念している」と話した。
その上でジェームズ氏は「だからわれわれは金融機関の顧客に対して、英国のEU離脱後も単一市場へのアクセスを確実に保つために、コンティンジェンシー・プランを練るよう提言し続けている」と説明した。
(Anjuli Davies、Andrew MacAskill記者)
英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。
持久戦のEU離脱交渉
• 英国のメイ首相はEU単一市場からの撤退を表明したが、最終的な離脱案について、議会での承認を求める考えも示した。英国の首相になったつもりで、英国の譲歩案とEU側の出方を予想してみよう。どのような取引が得られるだろうか。
起こり得る問題
「ハードブレグジット」は一部のEU離脱支持者から賛同を得ているものの、この選択肢は経済的に不利になる可能性があり、政治家や経営者や国民から、あるいはブレグジットに賛成した人からさえ反発を受ける恐れがある。
•
• 移民
英国はEUからの移民をどれくらい減らしたいか
• 望まれない移民の受け入れ停止(EUからの移民の純流入数を年間2万人に)
• 現状維持(同年間18万人)
• EU予算への拠出
英国はEU予算にどの程度拠出する気があるか
• まったく拠出しない
• 現状維持(平均で年間85億ユーロ)
• 2倍に増加(平均で年間170億ユーロ)
• 関税
EUは英国からの輸入品に対し、当初どの程度無関税にする気があるか
• いかなる輸入品も無関税にしない
• 現状維持(完全に無関税)
• 金融サービス
EUは英国の金融サービス企業に対し、どの程度アクセスを可能にするか
• アクセス不可
• 現状維持(完全にアクセス可能)
• 政治的影響力
EU加盟国の間で優位に立つのは誰か
• フランス率いる欧州純粋主義者
• ドイツ率いる欧州現実主義者
•
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News | 2017年 01月 18日 16:46 JST 関連トピックス: トップニュース
アングル:
英首相の離脱方針、EUは「いいとこ取り」警戒再燃
1月17日、メイ英首相はようやくEU離脱計画の青写真を示したが、EU加盟国の関係者の間では、離脱にあたって英政府に「いいとこ取り」を許すべきではないとの主張が再燃している。写真は、離脱を支持するヘルメットをかぶった女性。ロンドンで昨年12月撮影(2017年 ロイター/Toby Melville)
[ブリュッセル 17日 ロイター] - 欧州連合(EU)加盟国の指導者は英国のメイ首相がようやくEU離脱計画の青写真を示したことを歓迎しつつも、首相はEU離脱に伴う英国の負担を直視すべきだと考えている。
EU加盟国はこの数カ月、欧州大陸からの移民流入を制限すれば単一市場からも脱退せざるを得ないという事実を、英当局者が公式に受け入れないことに苛立ちを示していた。
しかしメイ首相は今回の会見で単一市場から離脱する「ハードブレグジット」を目標に掲げ、EU加盟国と包括的な自由貿易協定について交渉する方針を表明。EU加盟国の憂慮に終止符が打たれた格好だ。
トゥスクEU大統領はツィッターに「残念な推移であり、超現実的な状況だが、ブレグジットについてより現実的な発表であるのは間違いない」と投稿した。
EU加盟国の指導者は、メイ首相がEU離脱に向けた話し合いを正式に開始するまで交渉の準備を着々と進めるだろう。しかし交渉に備える当局者からは、離脱が英経済に与える多くの負の側面についてメイ首相が触れなかったとの声が上がっている。
メイ首相は、単一市場参加に伴う義務を放棄しながら財やサービスについて最大限のアクセスを維持したいなら、英国は「ギブアンドテイク」の関係を作り、妥協しなければならないと認めた。
しかしチェコのプロウザEU問題担当相はツィッターに「こちらから奪うばかりだ。差し出すものはどこにあるのか」と投稿した。
ドイツのガブリエル経済相などEU加盟国の関係者の間では、EU離脱にあたって英政府に「いいとこ取り」を許すべきではないとの主張が再燃している。
カナダなどの一部の国はEU単一市場への広範なアクセスを求めて交渉してきたが、アクセスの度合いは英国が今享受しているよりも低い。交渉期間は7年以上を要するのが普通だ。
メイ首相は、英国との自由貿易はどの国にとっても利益になり、「ゼロサムゲーム」ではないと訴えた。多くの国は、少なくとも短期的にはこの点に同意しているため、離脱による打撃を最小限に抑えようとしている。
首相は「英国を罰して政治的な主張を通そうとする」なら、欧州大陸の労働者の経済的な利益が損なわれるだろうとも述べた。しかしEUの指導者は、英政府に甘い顔をすると他の国でも有権者がEU離脱の是非を問う国民投票を目指すのではないかと危惧している。
元ベルギー首相のフェルホフスタット氏は「EUや単一市場から離脱した方が残留するよりも良いという状況を絶対に受け入れてはいけない」と主張した。
英国の高官らは、EUが英国に懲罰的な関税などを課すなら、競争力を維持できるよう法人税を引き下げる可能性を示唆している。ハモンド英財務相は「英国の競争力を維持し、生活水準を守るためには何でもする」と述べた。
フェルホフスタット氏はこの発言について、妥結への道のりを険しくするものだと指摘。英国を租税回避地(タックスヘイブン)のような場所すると脅しても無駄だと述べた。
(Alastair Macdonald記者)
英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。
持久戦のEU離脱交渉
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