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トラブルで客3時間待ちの某航空会社、ビジネスクラス客優先の差別対応は「正しい」のか?
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17723.html
2017.01.15 文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授 Business Journal
筆者が出張先のアメリカから帰国する前日、搭乗予定であった航空会社に深刻なシステムトラブルが発生し、大変な目に遭いました。トラブルは翌日になっても完全には回復せず、多くの便で遅延や欠航が発生し、空港のカウンターでは搭乗便を変更するために長蛇の列ができていました。そうした列の中に筆者もいたのですが、窓口の担当者はたったの2名で、列に並んでいる客たちも「このような調子では、一体いつになったら自分の順番が回ってくるのか」とかなり苛立っていました。実際、3時間程度は待ったと記憶しています。
ところが、よく周りを見渡すと、列こそできていたものの比較的順調に流れているエリアがありました。カウンターには10名ほどのスタッフがおり、こちらとはまったくの別世界でした。
すでに察しのついた方もいるとは思いますが、この航空会社をよく利用する客およびビジネスクラス以上の客を相手にするエリアだったのです。当然のことながら、これらの客は人数的に限られており、そうした客数に対して5倍の人員で対応しているわけですから、一般客の列と混雑具合は大きく異なってきます。
筆者は、これほど混乱した事態においても、いわゆる上客に対しては利便性を損なわないサービスを提供し、通常の客に対しては「いくら待たせてもやむなし」とする徹底した姿勢に怒りを超え、完全にあきれ果ててしまいました。
■上客優遇の是非
こうしたことに対して、皆さんはどのように考えられるでしょうか。筆者同様、強い憤りを感じる方もいらっしゃるでしょう。もしくは、「航空会社をよく利用し、会社の利益に貢献しているのだから、上客がそうした特別の対応を受けるのは当然で、逆にあまり利用せず、利益にも貢献しない客が長時間にわたり待たされるのも当然である」と考える方もいらっしゃるでしょう。なかには、「自分は常に上客の立場なので、こうしたサービスを受けるのは当然であり、一般客の気持ちなど知ったことではない」という方もいるかもしれません。
人それぞれに意見があるとは思いますが、こうした優良顧客を区別することは果たして企業の利益に貢献するのでしょうか。
一般に、企業間競争が激化し始めたといわれる1980年代に、それまでの新規顧客の獲得や取引時点にのみ注力するマーケティングに対して、一人ひとりの顧客と関係性を構築・維持し、忠誠心の高い顧客に育てていく重要性を説く「関係性マーケティング」という考えが広がりました。実際に、新規顧客の獲得よりも既存顧客を維持するほうが大きな利益をもたらすといった研究成果も数多く報告されました。
こうした考えのもと、今回話題に挙げている、航空会社におけるマイレージプログラムや搭乗頻度の高い顧客の優遇、また小売店におけるポイントカードなどが急速に普及してきたわけです。
しかし、こうしたサービスは、大きくとらえれば結局は値引きの延長にすぎず、「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉通り、関係性マーケティングの本来の趣旨とは異なっていると筆者は捉えています。もちろん、業界のなかで1社のみが行うのであれば、競争優位性の創出となるかもしれませんが、ライバル企業も追随してくると、あっという間に同質化したサービスとなってしまいます。逆に、他社が行っている以上、自社がやめるわけにはいかないという消極的な理由により、やむなく継続している企業も少なくはないでしょう。
むしろ近年では、優遇されない顧客の不満に注目した研究が目立ってきています。こうした不満の影響は決して小さくはなく、優遇プログラムにより逆に利益を損なっているケースも多いと指摘されています。
もちろん、優遇されて喜ばない顧客はいないでしょう。一方、逆の立場に立てば、優遇されている客を見るのは決して気分のよいものではないでしょう。
こうした相反する問題をいかに解決していくかが、関係性マーケティングにかかわる取り組みを行っている企業における新たな課題といえるでしょう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)
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