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「100年人生」について語り合った緊急討論会の様子をお届けします
100年人生に「定職・持ち家・引退」は不要だ! カリスマ起業家3人が「既成概念」をぶっ壊す
http://toyokeizai.net/articles/-/152713
2017年01月13日 東洋経済新報社 出版局
2016年10月に発売を開始し、1カ月で11万部を突破した『ライフ・シフト』を題材にしたトークセッション「『LIFE SHIFT 人生革命』 既成概念をぶっ壊す!? これからの“100年時代”をどう生き、どう働くか 緊急討論会」が、ヤフー本社の「LODGE」で開催された。
トークセッションには、孫泰蔵氏(Mistletoe代表取締役社長兼CEO 連続起業家・実業家)、宮澤弦氏(ヤフー上級執行役員)、尾原和啓氏(シンクル事業長・執筆・IT批評家・Professional Connector)の三者が登壇。司会は、『週刊東洋経済』副編集長の杉本りうこが務めた。
■オフィスレスの時代がいずれ来る
杉本 りうこ(以下、杉本):『週刊東洋経済』副編集長の杉本りうこと申します。『ライフ・シフト』では、今後「教育」「仕事」「引退」という単線的な3ステージが崩れて、多層的な人生になると言っています。なぜ3ステージが崩れるのか、簡単な自己紹介とともにお答えいただけますでしょうか。
孫 泰蔵(以下、孫):Mistletoe代表の孫泰蔵です。今日はよろしくお願いいたします。経済学で経路依存性(パス・ディペンデンシー)という言葉があるのですが、人間は一度慣れ親しんだ環境を変えたがらない傾向にあります。インターネットが普及して、本来ならどこでも仕事ができるのに、なんとなく東京から離れられず、未だに満員電車に揺られてつらい思いをしながら通勤している。分業も進みすぎて、自分の仕事がお客様に届いているかどうかもよくわからない。資本主義が煮詰まって自己疎外になっているから、こうした考え方がクローズアップされてきたのではないでしょうか。
尾原和啓(以下、尾原):僕が今日ここに呼ばれたのは、なんとなく『ライフ・シフト』的な生き方をしているからだと思うんです。現在はバリ島のウブドを拠点に、フリーで13職、33のプロジェクトを動かしています。完全にリモート体制に入ったのは1年半くらい前で、以前はGoogle Japanのシニアマネジャーとして新規事業に携わっていました。上司は海外にいて、いつもビデオ会議なので、日本にいなくても良いのではないかと。
尾原:そこで月10万円で掃除サービスとプールつきの家に住めるバリ島に移住してみたら、まったく問題ありませんでした。ほとんどの仕事はリモートワークでできるはずなのに、なぜかみなさんやらないですよね。この状況は5年前にペーパレス化が叫ばれていた時代に似ています。今では紙を使わずプロジェクターとパソコンを使った会議がデフォルトになったように、いずれオフィスレスになっていくのは間違いないと思います。
宮澤 弦(以下、宮澤):今日はヤフーの新しい本社にお越しいただいてありがとうございます。僕はもともと起業家でしたが、ヤフーに買収されて、起業家と大企業の役員という2つの人生を歩む形になりました。両方の立場から、何かお役に立てるお話ができればと思います。ヤフーは若い会社なので働き方はかなり自由で、軽井沢から新幹線で通っている人もいれば、週末は副業で写真の講師をしている人もいます。月に5回までオフィス以外の好きな場所で仕事をしていい「どこでもオフィス」という制度もあります。社歴も20年しかありませんから、20世紀の慣習的な価値観を持つ企業とはだいぶ違いますよね。
■古すぎるOSをどう入れ替えるか
杉本:ヤフーでは申請すれば副業が認められるそうですね。しかし、世の中で副業をしている人は、就業人口のわずか3%にすぎないそうです。企業が副業を認めない理由は、1つ目が「人材が流出するから」、2つ目が「本業に支障が出るから」、そして3つ目は、「会社の秩序が崩れるから」だそうです。
宮澤:「会社の秩序」ですか。『ライフ・シフト』を読んで最初に感じたのは、副業をはじめ、これまでのロールモデルが通用しないという価値観を、大企業の社員全員に浸透させるのは相当な時間がかかるなということです。小さい会社なら1日で社員の頭の中のOSを入れ替えられますが、大企業は半年くらいかかると思います。変化の求められる時代には、大きい組織ほど、ハンディが大きいのではないかと。
尾原:日本が発展したのは、年功序列で一斉行進をしたからですが、その勝ちパターンが成功体験としてあまりにも強く残っている。上司の世代はなかなかその成功体験を捨てられないのですが、OSはどんどん古くなっていくので、変えなければ競争力を失っていきます。
杉本:OSの入れ替えに成功した国はあるのでしょうか。
孫:フィンランドは数年前まで、日本と同じようにノキアのような大企業に就職するのが成功、という価値観でした。ところがそのノキアが崩壊してしまい、国民は相当なショックを受けたそうです。大企業に就職すれば安泰だという神話が崩れたので、SLUSHの活動が生まれるなど、スタートアップが注目され、若者を中心に意識が変わってきています。人口が500万人しかいない小さな国なので、法律もスピーディに変えることができる。変化が必要な時代には、小さい国、小さい組織であることは、アドバンテージだと思いますね。
杉本:変化しようとすると、失敗がつきものだと思いますが、再起不能な失敗を避けるにはどうすればよいか教えていただけますか。
孫:「失敗を避けるには?」とよく聞かれるんですが、そもそも再起不能な失敗って何でしょう。死ぬこと以外ないですよね。お膳立てされたことをやって世間的に成功しても、何も楽しくありません。だいたい、成功しているときは大切な人には出会えないんです。ピンチのときに手を差し伸べてくれる人こそ重要な人であり、人生の最大の幸運となる出会いになる。だから僕はピンチが楽しみなくらいです。
宮澤:プライベートでは結婚を1回失敗していますが(笑)、「ライフ・シフト」的には、失敗をたくさん積み重ねることで最適なパートナーに出会える、と。仕事もうまくいっているときは反省をしませんが、失敗したときこそ反省をして、学ぶことが多い。ポジティブな気持ちで失敗を迎えるといいと思います。
尾原:僕にとっての失敗は、新しいことをやらなくなったときですね。50歳を過ぎると、いつも新しいことにチャレンジするかっこいい人と、保守的で急に老けてしまう人に極端に分かれますよね。以前、それぞれのタイプの人をベンチマークしてインタビューしてみたことがあるんです。その結果、過去の経験を捨て続けている人だけが、新しいことにチャレンジできるのだとわかりました。過去の成功体験にこだわっていると、目の前のチャンスが見えなくなってしまう。だから、捨て続けるしかないんです。
孫:今までの仕事はすでに消えつつあるのに、今の仕事を変えたくないとなると、摩擦的失業者の対象になってしまいます。変わらないことほどリスクの大きいものはありません。今すぐにでも尾原さんみたいに生きることはできるわけで、それを阻害しているのは自分のマインドセットだけなんです。
■これからは人生のコストが下がる時代に
孫:なんとなく老後が不安という皆さんにぜひおすすめしたいのは、人生にかかるコストを計算してみることです。なぜ漠然とした不安にかられるかというと、わからないからなんですよ。実際に計算して具体的な数字を出すと、焦りはするかもしれませんが(笑)、不安はなくなります。
孫:これからのイノベーションで、人生のコストは劇的に下がります。現在、最も大きなコストは住宅でしょう。20世紀の価値観でいうと、ラグジュアリーというのは、大きな家で、庭やホームシアターがあることでした。ところが、「ライフ・シフト」が起こると、世界中を回っていろいろな人に会い、さまざまなものを見るほうがより豊かだという価値観に変わってくるかもしれない。無形資産の価値が上がり、ラグジュアリーなものの概念が変わります。住宅ローンに縛られる働き方ではなく、ギグ・エコノミーやシェアリング・エコノミーを取り入れながら、無形資産の形成に時間とエネルギーを費やすようになるでしょう。
杉本:ギグ・エコノミーを巡っては、自由な働き方なのか労働者の搾取なのかという議論が欧米で起こっています。
尾原:ギグ・エコノミーは搾取されているか、という話は、社会保障制度や保険制度が追いつかなかった2〜3年間のことですよね。たとえば、ウーバー・タクシーは既存の自動車保険の対象外だから、事故を起こすと運転手に責任が問われていましたが、ベンチャー企業はそこにチャンスを見つけて、すでにウーバー用の保険を作っている。
先日、アメリカでウーバー・ブラック(スーパーカーなど高級車のウーバー)に乗っている移民の運転手に話を聞いたら、面白いことがわかりました。ウーバー・エコノミー(一般的な車種のウーバー)を4年間コツコツとやってきたら、実績を認められて車のローンが組めるようになって、いい車を買ってウーバー・ブラックになれた。その結果、年収が1.5倍になったそうです。つまり、ギグ・エコノミーもコツコツやれば日の目を見られる時代になってきたということです。過渡期は、むしろベンチャーにはチャンスになっていると、僕は楽観的に見ています。
宮澤:話は飛びますが、ブレーキを急に踏み込む人は事故率が高いらしいですよ。そこでブレーキとアクセルの踏み方をデータ分析して、保険金額を決めている会社がアメリカにある。データ化されると、性格の粗い人は高コストな時代になります。無形資産もたまらないし、AIにも嫌われてしまう。ですから、100年生きる時代は、いかに穏やかに生きていくかが重要かなと(笑)。
■「経験」とは、捨てることに躊躇がなくなること
杉本:年齢とクリエーティビティやパラレルな生き方に、関係はありますか。やはり若いときに始めたほうがいいのでしょうか。
宮澤:年齢に関係なく、圧倒的に柔軟性だと思います。指数関数的に毎日常識が変わっていくことに対して、オープンでいられるかどうかが重要だと思います。ただし、幼少期の環境などは、やはり影響するのではないでしょうか。僕の家族は音楽家で、親父には定年がありませんでした。むしろ、音楽は年齢を増すごとに深みが増していくので、引退という3ステージの考え方はもともとありませんでしたね。
尾原:過去を捨てられる人なら、年齢のハンディはないと思います。私の親父は医者でしたが、よく「若い医者は検査がうまいが、治療が下手。年寄りの医者は検査は下手だが、治療がうまい」と言っていました。円熟したクリエーティビティは、課題解決につながります。その業界で「治療」がうまい人、つまり課題解決ができる人が、生き残っていくのではないかと。
孫:将棋の羽生善治三冠が経験について言及していて、「経験を積むことによって不必要な情報は捨てられる。無駄なことを省くことができるというのが本当の意味での経験を生かすということ」と語っていました。多くの人は、経験を積み重ねると、学習して多彩な技を繰り出せるようになると考えているが、正確には経験を積み重ねることで、むしろ無駄なものの捨て方がうまくなると思うんですね。労多くして得るものが少なかったときは、別の手に切り替えることにしっかりと集中できる、それが経験だと。経験を積むことで躊躇なく新しいチャレンジができるというわけです。経験がないからと、最初からあきらめて動かない人もいますが、経験という言葉の意味合いを変えたほうがいい。
■「ライフ・シフト」は全員すべきか
杉本:100年時代には全員が「ライフ・シフト」せざるを得なくなるのでしょうか、それとも生き方の新しい選択肢ができたのでしょうか?
孫:みんながシフトすべきかどうか。そういう考え方が出てきたときは、背景を考えたほうがいいと思うんですよ。そこには周囲に取り残されるとまずい、割を食う、という発想があるのではないでしょうか。まずいからシフトしようという発想だと、いずれまたまずいと思ってシフトしなければなりません。よく「どう変えたらいいでしょうか」と聞かれるのですが、そういうマインドセットでは一生幸せになれませんよね。自分の足で立ち、自分で選択すれば、世間からは「割を食っている」と言われても、慌ててシフトする必要もないわけです。
尾原:今までは親が決め、大学が決め、会社や業界が決める、というように、誰かが自分の価値を決めてくれた時代でした。でも、「ライフ・シフト」が起こると、何でも自分で決めなくてはならない。それは簡単なことではないと思うんです。大変な時代ですね。
孫:昔は結婚相手も親が決めてくれていましたからね。人間、弱いですから何かに頼りたいものです。でも、いい大学に入って、いい会社に入ったところで、果たして楽しい人生なのかどうか。人と比べて自分だけは損をしたくない、というエコノミックアニマル的な考え方は、なんだかさみしいと思うんです。周囲と比べてどうかではなく、自分で選んだことだからいいと言える、本当の意味での自立がこれからは必要だと思います。
杉本:本日は貴重なお話、ありがとうございました。
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