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成功者や富める者に実は共通している「経験」…そうではない「あなた」との決定的違い
http://biz-journal.jp/2017/01/post_17683.html
2017.01.11 文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表 Business Journal
日本経済新聞の人気連載『私の履歴書』に、11月は作曲家・編曲家の服部克久氏が執筆されていた。ご存じの通り、服部氏は音楽のプロとして大活躍されている方であるが、同連載を拝読して、「プロになるとはそういうことだよな」と改めて納得した次第である。
■プロになるために必要な“不連続な努力”
同連載によれば、服部氏は高校卒業後、単身フランスのパリ国立高等音楽院に留学したそうだ。時は1955年。今から約60年前だ。1カ月もかけて船でフランスに渡ったということだから、当時としてはいかに特別なことだったか伺い知れる。
服部氏は、やはり大活躍された音楽家・服部良一氏のご子息だから、環境的にも経済的にも恵まれていたのは事実だろう。だからこそ、その時代にそのような経験ができたといえばそうかもしれない。
しかし、それを差し引いて考えても、60年前のその時代に、高校を卒業したばかりの10代の若者がたった1人でパリに音楽を学びに行くというのはすごいことだ。海外に行くことがはるかに容易になった現在でも、そのようなことをする若者はそうそういない。
同連載には、「パリ国立高等音楽院の授業はきつかった。なぜあれほど頑張れたのか、不思議なくらい勉強した。当時、僕は繰り返し同じ夢を見ていた。何も勉強しないまま日本に帰ってきてしまうという夢だった。」(11月19日付朝刊)とある。服部氏がパリでの数年間、いかに強烈に勉強したかがよくわかる。
そして、「やはりそうか」と思うのである。プロと呼ばれる人は、そうでない人から見るとただ「すごい」と見えるかもしれないが、そのような人は何もせずにそうなったわけではない。プロになるまでの苦労話をする人はそういないから、よくわからないかもしれないが、プロと呼ばれる人の多くに共通しているのは、若い頃のある時期、集中的に濃密な勉強をした経験があるということだ。その努力は壮絶といってもいい。
ある特定の時期におけるそのような壮絶な努力を、私は“不連続な努力”といっている。継続的に勉強し続けることも重要であるが、ある時期に壮絶な不連続な努力をしたことが、その人を「プロ」にし、その後の礎になっていることが多い。
服部氏でいえば、パリ国立高等音楽院に留学していた時期が不連続な努力の期間だったといえる。
私の親しい友人にも、一等地に自分の事務所を構えて活躍している弁護士や、戦略系コンサルティングファームから独立して活躍しているコンサルタントなどの「プロ」がいる。現在の彼らを見れば、ただただ「すごいですね」ということになるが、最初からそうだったわけではない。
弁護士の友人は、司法試験に合格するために死ぬほど勉強したと言っている。コンサルタントの友人は、アメリカのビジネススクール時代「後にも先にもこんなに勉強したことはなかった」と言っている。プロのはしくれである私も、働きながら寝る間を惜しんで公認会計士の勉強をしていた頃、家族は「この人、公認会計士になる前に死ぬかもしれない」と本気で思ったそうだ。
■『学問のすすめ』の言わんとしていること
それで思い出すのが、福沢諭吉の『学問のすすめ』である。
『学問のすすめ』といえば、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」のフレーズで有名だが、実はこれは福沢が言ったことではない。だいたい、このフレーズではちっとも「学問のすすめ」になっていない。
福沢は、「と一般には言われている。しかし」と言っているのだ。福沢が本当に言いたかったことは、「しかし」の後に続くことなのである。彼は、「しかし、現実は貧しい者も富める者もいて、その差も天と地ほどの差があるじゃないか。それはなぜなんだ」と言っているのだ。そして、その答えが「学ぶと学ばざるとの差」と言っているのである。まさに「学問のすすめ」である。
そして、「成功している人を見ると、とても自分はそんな人にはなれないと思うかもしれないが、それもすべては努力したかどうかの違いなのだ。誰しも生まれながらにして成功が約束されていたわけではないのだ」という趣旨のことを言っている。福沢も不連続な努力の必要性を説いているのである。
ただし、努力すればいいというものでもない。どっちに向かって努力するのかという“努力の方向性”がまず重要だ。それを間違えたら、いくら努力をしても成果は出ない。
また、努力していること自体に評価を求めてもいけない。プロが評価されるのは成果だけである。プロに努力賞はないのである。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)
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